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絶品ハンバーグ 肉をこねるほどおいしくなるのか?男のハンバーグ道(2)

うま味とジューシーさは二律背反? 肉をどうこねる=PIXTA

と結論づけて終わろうとしたところで、これとは違うやり方を推奨している本を見つけてしまった。小倉明彦・大阪大学元教授は『実況 料理生物学』(大阪大学出版会)で、「塩よりも先に水を入れろ」と教えている。

細胞液の塩分濃度は真水より高い。細胞が真水と接すると、細胞の内外は同じ濃度になろうとして真水は細胞内に流れ込む。いわゆる「浸透圧」というやつだ。その結果、細胞はパンパンに膨らみ、肉をこねたときに破裂する。細胞からDNAが出てきて絡み合い、のりの役割を果たしてくれるので、粘りやすい、というのだ。

もし水より先に塩を入れてしまうと、細胞の外の濃度のほうが高くなる。すると、浸透圧によって。逆に細胞から水が流れ出るので、こねても簡単には破裂しない。だから塩より先に水を加えろ、という理屈である。

まず塩を入れてこねるのを常識だと思っていた私には、「まず水を入れろ」という教えは衝撃的だった。

これはソーセージを作る実習で出てくるエピソードなのだが、教授は「ハンバーグもギョーザも同じことをするんだよ。水を入れてこねる」と発言している。「ハンバーグ求道者」としては試してみなければならない。

この本には分量の記述はなかったが、実際にやってみると、ひき肉は面白いように水を吸っていく。どれくらい吸うのか試したが、100グラムの肉に対し、なんと53グラムほどの水を吸った。

ひき肉をこねると、確かに粘ってくる。しばらくすると、薄い血の色をした液体がひき肉からにじみ出てきた。かまわずこね続け、塩を加えてさらにこねる。肉だねからは水分がにじみ出し、大変軟らかく、形が崩れそうだ。ただし、ぷるぷるとした独自の粘りがあるせいで、なんとか成形できる。

この肉だねを焼いてみたが、焼いているあいだもどんどん水分が出てくる。形も少し崩れ出した。肉がボロボロと崩れるというのではなく、重力で全体がゆがんでくる感じだ。焼く前は150グラムで、仕上がりは96グラムだから、焼く過程で約36パーセントの水分が失われたことになる。

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