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富士山を自転車で体感 外国人大喜び、五輪コースにも

2018/9/10 日本経済新聞 朝刊

富士スバルラインを自転車で上り、5合目で休憩するサイクリスト

 富士山周辺を自転車で楽しむ人が増えている。湖畔をレンタサイクルで走るだけでなく、ロードバイクやマウンテンバイクで駆け抜ける。日本一の山を眺望だけでなく体感しようという人たちで外国人も多い。2020年東京五輪の自転車競技のコースにもなり、さらなる盛り上がりが予想される。果たして、富士には自転車がよく似合う、となるだろうのか。

富士山を横目にサイクリングロードを疾走(山梨県山中湖村)
マウンテンバイクで富士山を駆け下りる(山梨県富士吉田市)

 うっそうとした森をマウンテンバイクが軽快に駆け抜ける。標高約1700メートル、富士山の2合目まで車で上り、あとは15キロメートルの道のりを林道は時速30キロ近い速度で、未舗装路は転ばないよう下る。6月にオープンしたサイクリングツアーのボンベロ(山梨県富士河口湖町)はマウンテンバイクを貸し出し、ガイドがコースに付き添う。上り坂が不安な人には、電動アシスト付きも用意している。

 「富士山という最強のコンテンツを生かして企画した」。運営するJバウンド(甲府市)の清水栄一社長は話す。体験した兵庫県尼崎市の山口慶悟さんは「涼しいしスリルもあった」と満足そう。客の3分の1が外国人で、特にフランス人が多いという。

 富士山周辺で自転車が人気になったきっかけのひとつが6月に開かれる自転車レース「Mt.富士ヒルクライム」だ。全長24キロ、標高差約1300メートルの富士山スバルラインを駆け上る。今年は8千人が参加した。

 自転車愛好者の増加に対応し、新たなサービスも登場した。富士急行グループの5合目のレストハウス「富士急雲上閣」はテラスにロードバイク用のスタンドを設置した。食事中も自転車を見ていられ、盗難対策になる。工具の無料レンタルや自転車お守りなどグッズの販売も始めた。富士急行は「5合目をサイクリストの聖地にしたい」と意気込む。同グループは静岡県裾野市の2合目で使っていないゴルフ場の一部に、家族で楽しめるマウンテンバイクのコースを作り、秋までの開業を目指している。

 行政も力が入る。富士吉田市は3月から市内の飲食店やゲストハウスにサイクルスタンドの設置を進めている。すでに約40カ所を整備した。山梨県は16年、自転車を持ってきて楽しむインバウンド(訪日外国人)の増加を受け、富士五湖周辺を回る3本のモデルルートを公表した。

 課題は自転車道の整備の遅れだ。県のモデルルートも、今年度中に案内表示の設置と自転車の走行位置を示すラインを路面に引く程度だ。富士河口湖町観光連盟の山下茂代表理事は歩道が狭いままで自転車を増やそうとすることに疑問を持ち「きちんとした専用道路が必要」と話す。

 東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会は8月9日、自転車競技ロードレースのコースを発表した。山梨県道志村と山中湖村を通ることが正式に決まった。富士山を望む絶景のコースだ。5合目を訪れていたサイクリストは「五輪のロードレースが開かれれば、自転車で来る観光客が増える」と話す。

 山梨県の東京五輪アドバイザーで元プロロードレース選手の今中大介さんは「五輪をきっかけにロンドンが自転車の町に変わったように、山梨県がもっと自転車にフレンドリーな県になってほしい」と期待する。

富士山
 世界文化遺産登録から5年を迎えた。環境省によると、2017年の夏の開山シーズンの8合目の登山者数は28万人を超える。富士スバルライン5合目は年間400万人前後が訪れる。同省の15年調査によると、外国人の登山者の割合は10~28%にのぼる。外国人観光客の増加に対応して、同5合目に両替所が開設したほか、山小屋や山頂でWi―Fiが使えるようにしている。
 富士山保全協力金(入山料)として任意に1人1000円をお願いしているが、協力率は目標の70%に遠く及ばない。山梨県は協力率向上のため、キャッシュレスで支払える実証実験を行った。アリペイ、アップルペイなどのスマホ決済や、クレジットカード、交通系電子マネーに対応した。

(三浦秀行)

[日本経済新聞朝刊2018年8月18日付]

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