『ツイン・ピークス』続編 25年後の世界を深読み
1990年代に世界的なブームを呼んだ米国のテレビドラマ『ツイン・ピークス』の25年後を描いた続編のDVDが発売された。日本では有料放送でのみ公開され、見逃していたファンも多いはず。旧作同様、デイヴィッド・リンチ氏自ら監督し、旧作と密接にリンクしながらもスケールアップした物語が展開する。
米国ワシントン州のカナダ国境沿いにある田舎町ツイン・ピークスを舞台に、女子高生ローラ・パーマーの殺人事件をめぐる謎を描いた『ツイン・ピークス』。
映画監督デイヴィッド・リンチ氏とマーク・フロスト氏が手がけた同作品は、米三大ネットワークの一つABCで90年から全30話を放送。92年には映画『ツイン・ピークス/ローラ・パーマー最期(さいご)の7日間』が公開された。
謎に満ちたまか不思議な映像世界は世界中に「ピーカー」と呼ばれる熱狂的ファンを生み、日本でも爆発的な人気を博した。だが、多くの謎を残したままドラマは終了。その後も様々な臆測が飛び交い、長らく続編が待ち望まれていた。
2017年、ローラが米連邦捜査局(FBI)特別捜査官クーパーに耳打ちした「25年後に会いましょう」という旧作のセリフの通り、25年後を描いた続編『ツイン・ピークス:リミテッド・イベント・シリーズ』(日本放送時タイトル『ツイン・ピークス The Return』)が米国で放映された。
放送局はケーブルテレビのShowtime。旧作でリンチ氏が放送局に妥協を強いられた話は有名だが、今回は企画・製作総指揮・脚本、そして全18章の監督をリンチ氏が手がけた。不満が残る形で終了せざるを得なかった旧作と異なり、全18話を納得のいく形で制作することに成功した。
旧作は、異世界のブラック・ロッジで惨劇が起こる一方、ホテルにいるクーパーの姿に邪悪なボブの姿が重なるという衝撃的な幕切れだった。新作ではクーパーは異空間におり、巨人と不可解な会話を交わして新たな異空間へと飛ばされるところから物語は始まる。
そしてブラック・ロッジにいるクーパーの前にはローラ・パーマーの姿が。現実世界では、長髪でレザージャケットを着たもう1人のクーパー「Mr.C」が存在し、冷酷な殺人を繰り返していた。そのころ、サウスダコタでは頭と胴体が別の人間という奇妙な死体が発見される――。
旧作と異なり、新作ではサウスダコタのほか、ニューヨーク、ラスベガスと舞台は広がる。一方、25年後のツイン・ピークスの町の描写は、どこか時間が止まってしまったかのような、不思議な味わいが増している。
本作は旧作と密接にリンクしながら別次元の物語が展開する。旧作同様、論理的にすべてを理解することは難しいが、深読みする楽しみは倍増している。有無を言わさず視聴者を引きつける魅力も健在だ。
(「日経エンタテインメント!」8月号の記事を再構成 文/今祥枝)
[日経MJ2018年8月17日付]
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