2018/8/22

――具体的な成果は上がっていますか。

「1年あまりで残業時間を22%削減しました。リモートワークは、利用可能な従業員の7割が利用するようになりました。たくさんの仕事を抱えている人にとって、いつでもどこでも仕事に集中できる、素晴らしいシステムだと私も思います。フレックスタイムは子供の送り迎えがある女性のスケジュール管理に貢献しています。子供や高齢の両親の面倒をみることは、今の社会では切実な問題ですから、会社はしっかり向き合わなければなりません」

――女性が多い職場で、管理職の育成はどう進めていますか。

「ニューヨーク本社が主導する研修プログラムから、数多くのカリキュラムを日本に合わせて導入しています。Eラーニングで勉強できるものも多数あります。いまは300人を対象としたインクルージョン&ダイバーシティの研修が終わったばかりです。また、アジアパシフィックの13の国・地域で、才能のある人を伸ばすためのリーダーシッププログラムも用意しています。それより下のマネジャークラスに向けたリーダーシップ・アクセラレーションプログラムもあります」

「面白いものとしては、今年実施したデザインシンキングがあります。市場の見方や接客などについて、各人がこれまでの考え方を変え、違う角度から検証していくものです。実際の戦略に大いに役立ちます。一連の研修受講者数は1年で2倍になりました」

ミレニアル世代にチャンスを与え、彼らから学ぶ

――ファッションでも化粧品でも、消費行動が従来と異なるミレニアル世代(若年世代)の攻略が課題となっています。

「弊社でいうミレニアル世代とは22~37歳の層を指しますが、ELGCの社員でいうと7割が当てはまります。彼らの意見を生かさない手はありません」

「日本では4月に、ミレニアル世代をターゲットにした『アイメンタープログラム』という研修を始めました。ミレニアル世代がリーダーのメンターになる、つまり若い世代が上の世代を教えるのです。例えばリーダーたちをクールなレストランや買い物場所に案内してもらいます。彼らの人生観やショッピングの仕方など、学ぶべき点がたくさんあります。そこから得たものをミレニアル世代への接客、商品企画、ブランディングなどに生かすのです」

「価値観の異なるミレニアル世代から何かを学ぶことはとても楽しい。彼らの意見をどんどん反映させていきたい」

――ミレニアル世代は働くことへの価値観も変化しているようです。意欲を引き上げるには何が効果的でしょうか。

「戦略を立ち上げるときには彼らに提言の機会を与えます。重要なことは、若い人にも決断権を与えることでしょうね。彼らのポジションでも会社を引っ張っていけるのだ、という実例を示すこと。弊社ではアイメンタープログラム受講者の中から4人を選抜して、8月に米国でグローバルな研修を受けてもらいます。また、19年に日本市場に新たに投入する新ブランドでは、売り場やコミュニケーションにミレニアル世代の社員の意見を反映させています」

――女性に長く働いてもらうために最も必要なことは何でしょう。

「サポートです。家庭を持っている女性、若い女性、高齢の両親の面倒を見ている女性と、抱える事情はさまざまです。だから個々のニーズに柔軟に対応できる体制の整備が重要なのです。私も昔からワークライフバランスを重視し、メリハリがきいた仕事をしてきました。米国、シンガポール、南アフリカ、英国など海外を飛び回ってきましたが、多くの人の支援でキャリアを積むことができました」

――昇進を望まない女性も多くいます。

「女性たちが自分の仕事に満足し、ハッピーならそれでいいのです。一方で、ELGCではさまざまなブランド、役職の中でリーダーになろうという人をサポートする準備があります。日本には、自分に自信がない女性が多いのかもしれません。私は女性たちに自信を持たせ、なりたい自分になれる道を開きたいと思っています」

(聞き手は編集委員 松本和佳)