画質高まる有機ELテレビ デザインと価格で見極めを
「年の差30」最新AV機器探訪
最近、テレビが好調だ。調査会社のGfKジャパンによると、国内テレビ市場は2011年以降は縮小傾向にあったが、17年に前年比がプラスに転じた。薄型テレビの18年上半期の販売台数は前年比7%増だ。アナリストの合井隆人さんによれば「10年ごろのエコポイント制度や地デジ化による特需期に購入したテレビが、買い替え時期に入りつつあることが主な要因」だという。
プラス成長をけん引するのは4K、そして有機ELだ。特に有機ELテレビの販売台数は前年の約8倍を記録。薄型テレビに占める割合は数量ベースではまだ2%だが、金額ベースでは11%と1割を超え、確実に存在感を増しつつある。
18年12月からは4K8K放送、20年には東京オリンピックを控え、高画質を重視する動きが強まる今、買い替えるならどんなテレビがおすすめなのか。平成世代のライターが、昭和世代のオーディオ・ビジュアル評論家に聞いた。
魅力的になったLG
小沼理(26歳のライター) 今、テレビが好調だそうです。夏のボーナス商戦に合わせて各社の新モデルが登場しましたが、小原さんから見て、今期のテレビの動向はいかがですか?
小原由夫(54歳のオーディオ・ビジュアル評論家) 有機ELテレビが充実してきましたね。2018年モデルはLG、東芝、パナソニック、ソニーとすでに出そろっています。
小沼 GfKジャパンの調査では、薄型テレビ全体の販売台数は前年比が1%増なのに対し、有機ELテレビの販売台数は前年比8倍超。家電量販店のヨドバシカメラに聞いても「テレビの売り場面積はそのまま、有機ELテレビのコーナーは1.5倍になっています」と、存在感が大きくなっています。各社から登場した新モデルがこの動きをさらに加速させていきそうですね。新モデルの中で小原さんの注目は?
小原 まだ東芝だけはしっかりと視聴できていないのですが、今回はLGが面白いですね。フラッグシップモデルで壁に直接貼りつけられる「OLED W8P」を筆頭に、全5シリーズ10モデルを18年の4月から順次発売しています。種類が多く、ライフスタイルに合わせて選べるのが魅力的ですね。
小沼 17年にLGと国内3社の画質を比較したときは「LGは他と比べるとやや劣る」というお話でしたよね(記事「有機ELテレビ比較 同じパネルでも際立つ4社の個性」参照)。画質が向上しているんですか。
小原 今期からは大幅に改善されて、他に迫るものになってきています。絵の進化の度合いは一番でしょう。S/Nもかなり高くなっていますし。
小沼 「S/N」って何ですか?
小原 シグナル(信号)中のノイズ(雑音)のレシオ(比率)のことです。「S/Nが高い」ということは、シグナル中のノイズ成分が低いことを意味します。新モデルではS/Nが高まったことで、暗い画面でもノイズがほとんど気にならなくなりました。色数の再現力も圧倒的に向上していますし、グラデーションも一段と緻密になっています。
小沼 ではLGの中でのお薦めモデルは?
小原 私のお薦めは「65E8PJA」ですね。55インチもありますが、有機ELは65インチの方が総じて絵の完成度が高いんです。
小沼 インチ数によっても違いがあるんですか。面白いなあ。
小原 バックカバーと透明なスタンド部が一体化されており、浮いたようなデザインも秀逸です。
型を持つソニー、パナソニック
小沼 ソニーやパナソニックはどうですか?
小原 LGが多彩なラインアップを展開しているのに対し、ソニーとパナソニックはそれぞれデザインに型があります。ソニーは一枚板、パナソニックは画面が宙に浮いたようなデザインです。ソニーが6月に発売した「A8Fシリーズ」を見てみると、2017年モデルの「A1シリーズ」と違い、床置き型からスタンド型に変わりましたが、一枚板のようなデザインは踏襲されています。
小沼 A1シリーズ同様、洗練されたデザインですね。
小原 画面全体を振動させ、映像と音に一体感を出す構造も前作と同じ。ここにも力を入れているようですね。
小沼 パナソニックはどうでしょう。
小原 パナソニックは「FZ950」と「FZ1000」という2つのシリーズを6月に発売しました。画質性能はどちらも同じで、違いはスピーカーです。FZ950はスピーカーをパネル本体に搭載していますが、FZ1000はスピーカーをペデスタル(土台部分)に搭載。テクニクスの技術チームとともにドライバーユニットの開発やサウンドチューニングを行ない、ワイドレンジでバランスのよい音に仕上がっています。FZ950より大きなペデスタルは、デザイン的なアクセントにもなっていますね。
小沼 17年モデル同様、ペデスタルとディスプレーを細いステーでつないでいますね。ディスプレーが宙に浮いているみたいに見えるデザインは、前作から踏襲されています。
小原 ディスプレーが浮いたように見えるデザインは、LGの他のモデルでも目立ちました。一つのトレンドになっているといえるでしょう。
小沼 薄くて軽いという有機ELの特長を生かしたデザインですね。
小原 どのメーカーも有機ELテレビをフラッグシップモデルとして力を入れてきています。実際に確認したモデルはどれも、画質をはじめとした基本性能の点で納得がいくものでした。今、有機ELテレビを買うなら、デザインと価格で選んでも間違いないというところまで、現行モデルは来ていると思いますよ。
◇ ◇ ◇
画面サイズは55型と65型を中心に、一部77型もあるというラインアップ。価格も30万円前後からと、昨年に比べてずいぶん手を出しやすくなってきた。「以前は高級品という位置づけでしたが、現在は値段も手ごろな商品があり、普通のテレビとしてお求めいただいています」(ヨドバシカメラ広報)。テレビの買い替えを考えている人は、ぜひ一度チェックしてみるといいだろう。
1964年生まれのオーディオ・ビジュアル評論家。200インチのスクリーンを設置する30畳の視聴室に、今春、55インチの有機ELテレビも導入した。好きなテレビ番組は「プロフェッショナル 仕事の流儀」(NHK)。
小沼理
1992年生まれのライター・編集者。Apple Musicの便利さに味をしめて、2017年末にNetflixに加入した。最近よく見ているテレビ番組は「13の理由」(Netflix)。
連載 「年の差30」最新AV機器探訪
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