住宅ローンのリスク、再認識を 金利上昇の圧力高まる不動産コンサルタント 田中歩

2018/8/22
写真はイメージ=PIXTA
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日銀の黒田総裁は7月31日、金融政策決定会合後の会見で「長期金利の変動幅はおおむねプラスマイナス0.1%の幅から上下その2倍程度に変動しうることを念頭に置いている」と発言しました。欧米が金融緩和の縮小に動く中、これまでかたくなに超低金利を続けてきた日銀が「0.2%までの金利上昇を受け入れたのではないか」との思惑も働き、日本の長期金利は8月2日に一時0.145%と昨年2月以来の高水準まで上昇しました。それでも日本はまだまだ超低金利で、ここ数年住宅ローンでは変動金利型の人気が極めて高い状況が続いていますが、リスクはないのでしょうか?

目先の金利にとらわれない

住宅金融支援機構が年に2回発表する「民間住宅ローン利用者の実態調査」によると、56.5%の人が金利変動の影響を受ける変動型を選択しているうえ、増加傾向にあるそうです。また、当初5年間、10年間などと一定期間は固定金利で、それ以降は金利変動の影響を受ける固定期間選択型を選ぶ人と合わせると8割以上にもなります。

住宅金融支援機構「2017年度 民間住宅ローン利用者の実態調査」より

変動型や固定期間選択型を選択した人の4~5割の人は、住宅ローンの商品特性や金利上昇リスクへの理解度があまり高くはない結果も出ています。「目先の金利が安く見えるから」という短絡的な理由で変動型や固定期間選択型を選んでいる人が実はかなりいるようです。

住宅金融支援機構「2017年度 民間住宅ローン利用者の実態調査」より

毎月の支払いへの影響をチェック

金利がいつ、どの程度上昇するかは専門家でも予想することは極めて困難です。ただ、金融緩和をこのまま永続させることができないのは誰の目にも明らかで、しばらくは低金利が続くものの、「いつか金利は上昇する」という見解が一般的ではないでしょうか。

このため、変動型や固定期間選択型を選ぶのであれば、金利が上がった場合、どの程度の返済額になるのか、自分の支払い能力はどうなのかを事前にチェックしておく必要があるのです。