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津田大介のMONOサーチ

超小型ゲーミングPC 開発者が感じた日中反応の違い 津田大介が注目するPC「GPD WIN2」(下)

2018/8/21

「たとえばゲームパッドに設置しているジョイスティックと十字キーの位置を入れ替えてほしいという要望がありました。世界で人気があるゲームは、ほとんどジョイスティックを使うので、GPD WIN2では、操作しやすいようにゲームパッドの一番外側に配置しています。しかし、日本で人気が高いゲームは、十字キーを使うことが多いので、日本の方にとっては不便なのでしょう」

そのほかに出た要望についても、「中小企業のGPDには体力的に難しいものも多い」とWade氏は苦笑する。僕もSIMカードを挿せるようにしてほしいとリクエストを出したのだが、パソコンの販売台数はスマートフォンよりずっと小さいので、コスト的に難しいという答えが返ってきた。ただジョイスティックと十字キーの位置については、ユーザーが自由に入れ替えられるようにするなどの改善を検討したいということだった。

日本人ユーザーからは、左上のジョイスティックと十字キーの位置を入れ替えてほしいという要望が多かったという

■日本人と中国人で異なる嗜好や用途

話を聞いていて面白かったのが、日本人と中国人ではGPD WIN2のようなデジタル機器に求めるものが違うということ。Wade氏にもその違いが印象的だったようだ。

「日本人は、パソコンやゲーム機が『長時間駆動する』ことを重要視しているように感じます。一方、中国人は、スピード面、いわゆるゲームの快適さなどを求める傾向が強いと思います」

GPD WIN2は、フル充電の状態で6時間以上ゲームをプレーできる。「3時間持てば良いと思っていた」と話すWade氏だが、それを大幅に上回っている。だが、それでも日本では「もっと長く使いたい」というニーズが強いという。

また、GPD WIN2に興味を持つ理由も日本と中国では異なる。

「中国では任天堂などのゲーム機が販売されていなかった背景があり、長年中国人はキーボードやマウスを使ったパソコンのゲームに親しんできました。そのため、GPD WIN2も、純粋にパソコンゲームを楽しむポータブル機として利用しています。一方、日本人はあまりパソコンゲームをやりません。それでもここまで人気が出たのは、GPD WIN2自体に、興味を持っていただけたのだと思います」

中国人は、「GPD WIN2でパソコンゲームをプレーする」という明確な用途があって購入している。一方で日本人は、ゲームパッドがついたWindows機というGPD WIN2のコンセプト自体を面白いと思っているユーザーが多いということか。

■深センで生き残るために

これだけこだわったゲーミングPCを開発したWade氏だけに、昔からテレビゲームが大好きだったのだろうと、子どもの頃に好きだったゲームをたずねると、「私の家は貧しかったのでゲームを買うお金はありませんでした」という答えが返ってきた。本格的にゲームに触れたのは大人になってから手に入れたPSPのシューティングゲームだそうだ。

そんなWade氏がGPD WINを開発した理由は「深センで生き残れるニッチな市場を探し求めた結果」だという。深センは華為技術(ファーウェイ)や騰訊控股(テンセント)などの世界的な企業から意欲的なスタートアップまで多くの企業が集まる大都市。その分、競争は非常に激しいのだろう。そんな深センで、どう生き残っていくかを模索する中で生まれたのがGPD WINというわけだ。「ニッチな市場に切り込めるのが中小企業の強みですから」

「若者が集う深センでは、自分は年長者」と笑うWade氏は現在43歳。僕と同世代だ。天安門事件が起きたのは1989年。小さな漁村だった深センもこの30年で、中国有数の大都市に急成長した。中国が大きく変化していく時代を、Wade氏は多感な年代から経験してきたことになる。そんなWade氏が、若者が集まる深センで次に何を生み出すのか。同世代としても興味があるところだ。

Wade氏と津田氏。Wade氏の手前にあるのが、まもなく発売されるGPD Pocket2
津田大介
ジャーナリスト/メディア・アクティビスト。「ポリタス」編集長。1973年東京都生まれ。メディア、ジャーナリズム、IT・ネットサービス、コンテンツビジネス、著作権問題などを専門分野に執筆活動を行う。主な著書に「ウェブで政治を動かす!」(朝日新書)、「動員の革命」(中公新書ラクレ)、「情報の呼吸法」(朝日出版社)、「Twitter社会論」(洋泉社新書)、「未来型サバイバル音楽論」(中公新書ラクレ)ほか。2011年9月より週刊有料メールマガジン「メディアの現場」を配信中。

(編集協力 藤原龍矢=アバンギャルド、写真 渡辺慎一郎=スタジオキャスパー)

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