外国人コーチがメダル導く 練習は前例よりデータ重視

スピードスケートはオランダ人のヨハン・デビット氏をヘッドコーチに起用し、平昌五輪でのV字復活につなげた
スピードスケートはオランダ人のヨハン・デビット氏をヘッドコーチに起用し、平昌五輪でのV字復活につなげた

2020年東京五輪で活躍をめざす各競技で、外国人指導者の存在感が増している。長らく国際舞台で低迷する国内競技団体などが実績ある指導者の招請に成功、彼らの揺るぎない改革実行力にけん引されて成果も出始めている。外国人指導者増加の背景には、右肩上がりの強化費の後押しや五輪ホスト国としての注目度もあるようだ。

日本のバドミントン躍進の背景にも外国人監督がいる(写真は世界バドミントン・女子ダブルスで優勝した永原、松本組、8月5日)=共同

18年3月の世界選手権で25年ぶりの表彰台(銀メダル)に上った自転車競技のケイリン種目。その立役者はフランス人ヘッドコーチのブノワ・ベトゥ氏だ。リオデジャネイロ五輪で中国チームを金メダルに導くなど「メダル請負人」と呼ばれる同氏は16年の就任以降、日本代表チームの活動を大きく変えた。

従来は競輪レースで各地を転戦する合間に集まって合宿していたが、ベトゥ氏は選手たちを強化拠点となる静岡県伊豆市の近くに住まわせて長期合宿を可能にした。スポーツ科学に裏打ちされたウエートトレーニングも重視する。

当初は指導を巡り選手と溝も生じたが、結果が信頼関係を高めていった。日本自転車競技連盟の中野浩一強化委員長は「代表選手の顔ぶれは変わっておらず、好成績の理由はベトゥ氏の指導力に尽きる」と評価する。

従来のやり方にとらわれない姿勢は、平昌五輪でスピードスケートをV字復活させたオランダ人のヘッドコーチ、ヨハン・デビット氏とも重なる。

両者に共通するのは、周囲の抵抗にひるまず改革を実行する力だ。選手を抱える大学や実業団はそれぞれの目標もあり、常に代表チームに協力的とはいかない。日本の指導者たちは所属先や出身母体があり、しがらみがつきまとう。その点、プロとして大胆に踏み出せるのが外国出身者の強みだ。

国際人脈に乏しい競技団体が多い中、対戦相手探しでも外国人指導者に頼る部分は大きい。例えば、6月に世界ランキング1位のドイツとの親善試合が実現した男子ハンドボール。五輪から30年も遠ざかる日本が強豪国を呼べたのは、17年に就任したダグル・シグルドソン監督(アイスランド)の存在が大きい。

リオ五輪でドイツを銅メダルに導き、世界最優秀監督の受賞歴もあるビッグネームは、欧州クラブに日本選手を送り込む橋渡しもする。男子バスケットボールのヘッドコーチ、フリオ・ラマス氏も母国アルゼンチンをロンドン五輪で4強に導いた実績が知られ、親善試合の相手選びにも力を発揮する。

優秀な指導者は世界から引く手あまただ。シグルドソン氏は欧州のクラブから年俸1億円以上のオファーが届く中で契約にこぎつけた。日本ハンドボール協会の田口隆専務理事は「五輪ホスト国の監督という仕事を魅力的なチャレンジと受け止めてくれた」と話す。

もちろん、資金面の充実も背景にある。コーチの人件費として国から各競技団体に配分される助成金は、15年度の13億4千万円から17年度には17億7千万円に増加。また、多くの競技団体が東京五輪を追い風にスポンサーの拡大に成功。自転車は競輪とオートレースを運営するJKAがベトゥ氏と契約。ハンドはヤマト運輸とのスポンサー契約で獲得資金が生まれた。

日本代表を外国人指導者に託す先駆けは、男子サッカーだ。Jリーグには欧州や南米から本場の戦術や技術が持ち込まれ、今では日本代表のレギュラークラスはほぼ全員が欧州でプレーするまでになった。今回、日本代表監督に森保一氏を起用したのは、日本サッカー界の積み重ねてきた経験と成熟を表すものといえる。一方で、多くの競技団体で外国人指導者が活躍する裏には、日本の指導者がまだまだ育っていない現実がある。

東京五輪の成功はもちろん、先端理論や哲学をどう吸収して20年以降につなげるか。旧態依然にとらわれない大胆な発想の転換はスポーツ界にとどまらず、グローバル化の競争にさらされる日本の企業経営のあり方にも通じるものがある。

(山口大介、鱸正人)

[日本経済新聞朝刊2018年8月10日付]