老後設計の大きな誤解 年収多い人ほど生活資金が必要

日経マネー

出所:厚生労働省「平成28年簡易生命表」からフィデリティ退職・投資教育研究所が計算

表は、現在50歳と60歳の方が50%と20%の確率で生きている年齢を示しています。「20%くらいの生存確率で計画を立てて、それよりも早く人生を終えることになれば残った財産は子供世代に残す」という考え方を取る方が合理的だと思えます。

ちなみに、20%生存確率で計算すると、60代の男性で91歳、女性で96歳となります。夫婦で考えると95歳くらいまでを想定すべきだと言えるのです。

投資は定額でいいのか?

もう一つ資産形成のアドバイスでよく聞くのが、「毎月1万円ずつ30年間積み立て投資したらいくらになる」といった複利の効果をうたう積み立て投資の効用です。これ自体は全く問題はないのですが、「それなら1万円ずつ投資をしていこう」という定額の投資につながってしまうとちょっと心配です。

先に説明した通り「年収が多い人ほど退職後の生活資金が多く必要だ」とすれば、「年収の多い人ほど資産形成も手厚くする必要がある」はずです。一律に「1万円の資産形成」ではなく、年収の一定率を資産形成に回すのが大切な考え方です。年収が増えればそれに合わせて資産形成額も増やすというステップアップの考え方です。

イラスト:小迎裕美子

その考え方を示したのが「退職準備を考える際の3つの掛け算」の一番下です。年収に「資産形成比率」を掛けて資産形成額を考えるという方法です。

英国では、法律で18年までに全ての企業が企業年金を導入することが義務付けられました。そして雇用されると自動的にその企業年金に加入することになり、本人が脱退を希望しない限り拠出を続けることになります。その際に、法律はもう一つルールを課しています。それが給料の8%を最低拠出するというルールです。これは最低水準なので、それ以上を拠出することが推奨されています。米国では、フィデリティが推奨比率として年収の15%を提示しています。

日本でこうした水準を聞くことは少ないですが、30歳から投資を始め、30代に4万円、40代で5万円、50代で6万円を毎月積み立てて年率3%で運用すると、計算上60歳で2800万円弱の資産を作ることができます。年収を各400万円、500万円、600万円とすると資産形成比率は12%。このあたりが目安になりそうです。

野尻哲史
フィデリティ退職・投資教育研究所所長。一橋大学卒業後、内外の証券会社調査部を経て2006年にフィデリティ投信入社、07年から現職。アンケート結果を基にした資産形成に関する著書や講演多数。

[日経マネー2018年9月号の記事を再構成]

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