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「冬の時代」に耐えて再生したジャパニーズウイスキー

「世界5大ウイスキーの一角・ジャパニーズ(22)」

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鳥井信治郎が1937年に発売した「角瓶」はその翌々年には供給が間に合わなくなるほど売れた。しかし戦争は拡大し、酒類も統制の時代に突入する。信治郎と、その後間もなく鬼籍に入った長男との合作、「角瓶」に続く大ヒット商品「オールド」の発売は戦後に持ち越される。

戦後は、1946年の3級ウイスキー「トリスウヰスキー」発売から始まる。1950年6月に勃発した朝鮮戦争とその特需による日本の経済回復はウイスキーの消費拡大を加速する。トリスバーが現れ、ハイボールブームが起きる。

「サントリーウイスキーオールド」が発売されたのも、1950年である。

「トリスを飲んでHawaiiに行こう!」の懸賞キャンペーンが1961年9月から始まり、トリスバーがはやった。2級の「トリス」「レッド」、1級の「ホワイト」、特級の「角瓶」「オールド」「リザーブ」「ローヤル」「エクセレンス」「インペリアル」、そして「ザ・ウイスキー」というブランドヒエラルキーの時代に入る。

この時代の主役は「オールド」であった。和風業態の飲食店でも広く飲まれるようになった。飲み手は自身の地位や所得の上昇に合わせて、「トリス」から「レッド」へ、そして「ホワイト」へというランクアップの階段を上っていく。

1970年代に入るとボトルキープが大流行した。

私がはじめてキープしたボトルは、「ホワイト」であった。1974年6月だったと思う。キープしたスナックの店名を今でもよく覚えている。ボトルに名前を書いた時のうれしさ、晴れがましさ、満足感はひとしおだった。天下を取ったように意気が上がった。ウイスキーは格好良かった。ほかの酒類と違う知性と格調が感じられた。紳士の国、英国の匂いがした。

ウイスキーにとって宴は永遠に続くかと思われた。しかし、市場拡大の終わりは唐突にやってきた。1983年、この年をピークにウイスキーの消費数量が落ち始めた。その理由については、様々な見解がある。まずはこのウイスキー不振の規模をみてみよう。

下落し始めたのは1984年。その後2008年に底を打つまで、年度によって多少の下げ幅の違いはあるものの、実に25年間下落傾向が続いた。2008年の出荷数量は1983年の約5分の1になっていた。各メーカーは涙ぐましいまでの努力をした。その1つが新製品開発である。

発売された新製品のうちサントリーの製品を振り返ってみよう。1983年の「Q」、84年「21」を皮切りに「エージング15」「クラシック」「オールドクラブハウス」「コブラ」「エルク」「クレスト12年」「プレステージ18年」「同25年」等々、いずれも味わいは素晴らしかったが、回復の気配は全く見えない。

1998年には酒税法改定。小錦の「アイスキー、ユースキー、ウィースキー」の宣伝と共に価格が引き下げられた。和イスキーブーム。「膳」「座」の発売。手応えはあったのに需要に結び付かない。酒場からウイスキーが次々に消えた。

逆にうれしかったのは、海外のコンペティションの結果だった。ジャパニーズウイスキーが次々と高い評価を受けたのだ。そのニュースが日本にもたらされるようになってきた。

シングルモルトの存在が着実に注目され始めた。ウイスキーの姿が目につかなくなり、かえって過去のイメージが払拭され、ウイスキーの新たな可能性をメーカー側が提案しやすくなった。2008年に女優の小雪さんを起用した角ハイボールキャンペーンを始めた。2014年9月から始まったNHKドラマ「マッサン」で、潮目は完全に変った。

1984年から2008年までの不振の原因は何であったのか?

3170円。1984年のオールドの価格である。1978年に2350円だったのが、わずか6年弱で酒税法改正等により1.4倍になった。急激な値上がりをやわらげるために付加価値を短期間で上げて割高感を緩和すること。それは、ウイスキーという酒類では不可能に近い。しかも当時日本で飲まれていたウイスキーの4本に1本がオールドであった。その数量のため特別感に陰りが見え、日常品化していた。増税でオールドは大打撃を受けた。

もう1つ、ウイスキーにとって厳しい状況が訪れていた。優遇税制で酒税を低く抑えられていた焼酎の伸長である。焼酎とウイスキーは同じ蒸留酒として競合する場面がそれまでもあったし、現在もある。特に乙類焼酎(または本格焼酎)が、品質改良を進め、クリーンでマイルドな製品を投入してきたのだ。

しかも、値段は4合瓶が1本1000円以下であった。ウイスキーから焼酎に代えると、最初はその飲みやすさを実感する。それに原料の違い、つまり、ムギ、イモ、コメ、黒糖、ゴマなどによる香味の違いが楽しめる。ミキサビリティーがよいため、ソーダで割ってチューハイにするのにも適している。焼酎の伸びは順調で、ウイスキーは苦杯をなめていた。しかし、我々メーカーは決してなすすべなく苦渋に身を任せていたわけではない。

サントリーは創業者の精神を忘れなかった。信治郎のように、一から製造工程を見直し、味わいとそのつくり込みについて原点から徹底的に明らかにし、再構築していった。低操業であったことがこのような見直しを助けてくれた。ちゅうちょなく開発の成果を現場に応用し、我々の原酒品質は進化していった。生産技術と所与の条件がうまくかみ合い日本の味わいを深めていった。まるで昔、信治郎が未知のウイスキーづくりやワインづくりで経験したように。

もちろん、チャレンジする我々のターゲットは生半可なものではなかった。例えば、酵母の物質代謝、乳酸菌の菌叢変化、蒸留での反応などの研究開発結果は世界トップレベルと評価された。我々は結果を学会で発表していったのだ。こうして、原酒の質をさらに向上させていった。

「角瓶」はより味わい深く、香り高くなっていた。2008年のハイボールは、深い味わいと華麗な香りと飲み易さでチューハイとは全く異なるおいしさを飲み手にもたらした。最上の樽(たる)で丁寧に熟成した原酒は、ハイボールスタイルでもその本領を余すところなく発揮してくれた。

我々が誇りとする原酒はモルトだけではない。グレーンもその品質を磨いてきた。

今回のお薦めは「サントリーウイスキー知多」である。蒸溜所がある愛知県知多市にちなんで名付けられた。

「サントリーウイスキー知多」はいくつかのタイプの違うグレーン原酒を混和してつくる。成分濃度や成分バランスが生み出すさまざまな味わいのよく熟成したグレーンを使う。タイプの異なるグレーンの品質開発の切り札となったのが、「比揮発度」という指標である。

まず、連続式蒸留機の構造と機能から説明しよう。蒸留機の内部には、上下に動くキャップがたくさん取り付けられた盤(トレイと呼ぶ)が何段にも設置されている。下から蒸気、上から液を流す。液はトレイ上でキャップから出てくる蒸気で加熱され気化して、上へ上へとトレイを昇っていく。その際、アルコールを抽出するので、上に行くほど蒸気中のアルコールは濃くなる。蒸溜機の上部から蒸気を抜き出し、冷やしてやれば濃いアルコールが取れる。

さて、ここで「比揮発度」だが、「比」と「揮発度」の2つに分解して説明しよう。「比」とは相対的という意味である。何と相対するのか?アルコール濃度である。「揮発度」とは、成分が蒸気になる、そのなりやすさである。アルコール濃度に対し、どの程度揮発しやすいか。揮発しにくければ、そのアルコール濃度のトレイにたまる成分濃度は高まる。そこでそのトレイから濃度が高まった成分を含んだ液を引き抜けば、上部から引き抜く蒸気中の成分濃度は下がる。

このアルコールとの駆け引きを通じて、狙いのタイプごとに成分バランスを一番おいしい状態にしてやるわけだ。タイプというのは分厚い味わいと香り、ライトで甘い感じ、その中間のバランスを持った香味というような違いを表現したものだ。

モルトで使われる蒸留釜より何倍も効率が良いこの連続式蒸留機の発明によって誕生したグレーンウイスキー。それがスコッチウイスキー最大の発明「ブレンデッドウイスキー」を生み出し、スコッチウイスキーをウイスキーの王者にした。これまで紹介してきたように、今では世界5大ウイスキーすべてが連続蒸留機でつくった原酒を用いている。

「サントリーウイスキー知多」の本領を手っ取り早く楽しむのには、まず「世界最高のハイボールのつくり方」でつくった「ハイボール」、次に「13回転半の水割り」、次に「ロック」で味わうことを薦める。さあ、どうぞ。さまざまな味わいがありながらすいすい飲めて、いい香りが鼻や口に漂ってくる。酔いも軽やかでしょう。

(サントリースピリッツ社専任シニアスペシャリスト=ウイスキー 三鍋昌春)

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