被災者にローン減免制度 手元に残せる現金も増加弁護士 志賀剛一

自己破産の場合でも、支援金は被災者生活再建支援法により、義援金は特別法により、差し押さえが禁じられる財産となり、破産法上は自由財産として手元に残してよいことになっています。このため、支援金100万円と義援金50万円は自己破産の場合でも手元に残せますが、現金は99万円しか残せませんので、手元に残るお金に約400万円の差が出ます(なお、東京地裁の取り扱いだとこれにプラスして20万円未満の預金も残せますが、裁判所により扱いが異なりますのでここでは法定の自由財産のみ記載します)。

ブラックリストに載らない

また、自己破産だと当然、信用情報登録機関(いわゆるブラックリスト)に登録されるので、銀行で新たなローンを組むことはできなくなり、クレジットカードの使用もできなくなります。しかし、被災ローン減免制度はブラックリストに載らないので、銀行で新たなローンを組んで自宅を再築することも可能ですし、クレジットカードも止まることなくそのまま使えます。

また、上記の例では土地を売却した500万円をローンの返済に充てていますが、不動産鑑定士に土地の公正価額を評価をしてもらい、その額をローン債権者に一括弁済または分割弁済することを条件に自宅の土地を残す方法もあります。一括だとハードルが高いですが、分割であれば何とかなるという方もおられるのではないでしょうか。

さらに、自己破産の場合だと債務者が破産しても保証人は保証債務を免除されませんが、被災ローン減免制度を利用すれば原則として保証人には債務の履行が求められません。もちろん、すべての件で債権者の同意が得られるわけではありませんが、自己破産を考える前に試してみるべき制度だと思います。

返済猶予や繰り延べ後も利用できる

ところが、多くの方はこの制度の存在を知らず、ローンを借りている銀行に返済の猶予や繰り延べ(リスケ)の相談に行かれるようです。それで対処できるならよいですが、リスケでは債務総額は減りません。

生活再建のためには減免を受けたほうがよいですよね。過去には銀行側からは積極的にこの制度を教えない例も報告されています。万一、すでにリスケをしてしまった方でも利用できます。ただし、新たなローンを借りてしまうと利用できないので要注意です。

西日本豪雨による災害については各地の弁護士会が無料で法律相談を実施しています。被災ローン減免制度が利用できるかどうか、相談してみてください。

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最後に、西日本豪雨による災害に際し、被害に遭われた方に謹んでお見舞い申し上げます。一日も早い被災地の復旧復興をお祈り申し上げます。政府も最大限の支援を約束していますし、皆様には法律や行政による様々なバックアップがあります。「申し訳ない」とか「恥ずかしい」と思わず、堂々と最大限の権利行使をしてください。困ったときはお互いさまです。

志賀剛一
志賀・飯田・岡田法律事務所所長。1961年生まれ、名古屋市出身。89年、東京弁護士会に登録。2001年港区虎ノ門に現事務所を設立。民・商事事件を中心に企業から個人まで幅広い事件を取り扱う。難しい言葉を使わず、わかりやすく説明することを心掛けている。08~11年は司法研修所の民事弁護教官として後進の指導も担当。趣味は「馬券派ではないロマン派の競馬」とラーメン食べ歩き。
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