「ワイシャツについていえば、20歳代から綿100%のものを身に付ける習慣を付けたいですね。手入れも自分で行うくらいの気持ちを持っていただきたいです」
――着こなしでは、どのようなことを念頭に置けばいいのでしょうか。
「対人コミュニケーションにおいて、ノンバーバル(非言語)情報が言葉よりはるかに多くのことを伝えていることがあります。話す人の服装は最も重要な情報のひとつです」
■外国語の前に礼節を
「グローバルビジネスの現場では、1回の会議やプレゼンテーションで結論がほぼ出てしまうことも珍しくありません。服装を軽視して成功は望めないでしょう。外国語を習得する前に礼節を身につけてほしいものです。礼節の第一歩、それは他人に好印象を与えることです」
――日本のメンズファッションの黎明(れいめい)期から半世紀以上、業界に携わってきました。業界の現状をどのように見ていますか。
「インターネットの普及で、国内の若者もいち早く欧米の流行を知るようになりました。また、消費者がどんどんコストパフォーマンス(費用対効果)を意識するようになっています」
「アパレルは流行によるロスが大きく、構造的に高コスト体質です。ただコスト削減だけでしか対応できなくなった企業に夢はありません。原価率を下げれば商品の独自性は薄れ、バーゲンセールで売り切ろうとするとブランドと収益を損ないます」
――メーカーズシャツ鎌倉は原価率6割とし、セールは行っていません。業界の常識とは正反対のビジネスモデルに見えます。
「ファッションの先端情報を世界中から仕入れている今日の消費者に選んでもらうには、高品質の商品をできるだけ安く提供する必要があります。SPA(製造小売り)モデルがそれです」