『探偵!ナイトスクープ』 30年続く人気番組の裏側
スタジオを探偵局に見立て、視聴者から寄せられた依頼について、レギュラーキャストである探偵たちが徹底的に調査&協力し、解決を目指す。大阪・ABCテレビ制作の『探偵!ナイトスクープ』は、1988年から放送を開始し、今年で丸30年を迎えた。23時台の放送にもかかわらず、90年代は視聴率30%台を何度もとり、2000年代は20%前後をキープ。今でも15%程度を維持している人気番組だ。
依頼内容は、人探しや苦手克服、思い出作りや謎の解明など、心温まる感動ものからバカバカしい挑戦まで様々。毎週約500通届く依頼を、チーフ構成作家の百田尚樹をはじめ、総勢30~40人のスタッフが会議で検討して採用を決めているという。
1996~2000年までディレクターを務め、現在はプロデューサーの奈良井正巳氏は、番組の特徴として「依頼者と全力で向き合う」ことを挙げる。「他に頼むところがなくて応募してくれているので、探偵にはタレントではなく人間として、ロケの間中、真剣に依頼者と向き合ってもらっています。芸人らしい発言とかは求めていません。きちんとコミュニケーションできていれば、笑いを狙わなくても面白いVTRになるんです」。
テロップが生まれた理由
"ディレクター至上主義"で、ネタ、探偵、演出方法など、ディレクターのやりたいものを尊重している。「VTRを見るスタジオ収録には、300人のお客さんを入れているんです。だから、自分の担当したVTRのリアクションがすぐ分かる。爆笑になったらうれしいし、すべってシーンとなったら悔しいし悲しい(笑)」。
実は、テロップを最初に使ったのがこの番組。事前打ち合わせがない、一般の人とのロケになるため、放送当初は声がうまく録れないことが頻発し、苦肉の策で編み出したのだそうだ。
リアルさも大きなポイントだ。反響の大きかったネタの1つに、15年3月に放送した、5歳児が祖父母のいる伊勢まで自転車で行った回がある。「テレビの法則でいえば、家についてゴール、なんです。でもおばあちゃんがたまらなくなって、道路まで出て行っちゃった。それがまた感動的で。『家で待っといてくれ』と言えないくらい、みんなガチなんですよ。番組のファンでいてくれている本広克行監督も、そこが良かったと言ってくれました」。
一般人の個性に着目し、面白さを引き出した草分け的存在でもある。『ナイトスクープ』に出た後に、他の番組で取り上げられる人も多い。現状で関東でのネット放送はないが、国民的バラエティとして今後も愛されるだろう。
(視聴率はビデオリサーチ関西地区調べ)
(ライター 内藤悦子)
[日経エンタテインメント! 2018年7月号の記事を再構成]
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