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売れる商品「決め手は質感」 表面デザインの先駆者 フィールグッドクリエーション代表取締役 玉井美由紀さん(上)

2018/8/14

フィールグッドクリエーション代表取締役の玉井美由紀さんは日本に「CMFデザイン」を広めた先駆け的存在だ。

 製品の表面を構成するColor(色)、 Material(素材)、 Finish(加工)の頭文字を取ったCMFデザインが、産業デザインの分野で注目されている。玉井美由紀さんは日本におけるその第一人者だ。武蔵野美術大学を経て本田技術研究所に入社。独立後、「FEEL GOOD CREATION(フィールグッドクリエーション)」を立ち上げ、CMFを通じて日本のものづくりを活性化させる活動に取り組んでいる。

■ものの表面や質感が醸し出す感覚的価値がより重要に

 自動車、家電製品、雑貨、建築など、玉井さんが手掛けるフィールドは幅広い。これまでの仕事にはホンダのコンセプトカーや、渋谷駅前の複合商業施設、パズルの「OVOV(オブオブ)」、岡村製作所のオフィス椅子などがある。CMFデザインは産業デザインの一部ととらえられることも多いが、ものの形よりも、色や素材、質感などを中心にデザインすることによって、人間の感性に訴えかける仕事だ。

 具体的には企業から商品開発の依頼を受け、一緒にコンセプトや目指す方向性を探り、それを実現するためには、どんな色がいいか、表面の素材は何がいいか、なければ新しい素材を開発することまで提案していく。例えばホンダの軽自動車「N-ONE」をベースにしたコンセプトカーでは、「自然体でありのままを楽しむ」といった若者の価値観を想定。使い込まれた足場板を荷台にするなど、時間と共になじむ素材を内装に使用し、これまでありそうでなかった世界観を表現した。

 機能や技術はものづくりの重要な要素だが、機能が飽和状態になると、ものの表面や質感が醸し出す感覚的価値がより重要になっていく。「日本で境目になったのはiPhoneの登場ではなかったか」と、玉井さんは考えている。

 「それまでの携帯電話に比べて、スマートフォンの場合、ハードの面ではデザインできる要素が圧倒的に少なくなってしまったんです。そんななか、どうやって付加価値を表現していくかと考えたときに、付属的な要素に過ぎないと思われていた色や素材が重視される時代がやってきました」

 テクノロジーの先端を行くIT企業が、オフィスの内装に木を多用するのはその表れの一つだろうと、玉井さんは指摘する。玉井さんが手がけるCMFデザインは色や素材、加工を総合的にデザインすることで、ものの魅力を増していく。企業の商品開発ばかりではなく、複合商業施設のような建築プロジェクトにも生かされている手法だ。

 CMFデザイナーとして活躍する彼女は独立する以前、ホンダグループの研究開発拠点、本田技術研究所に勤務していた。入社したのは1993年。「創業期のものづくり精神が息づく、いい意味で荒っぽい会社だった」という。

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