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勃興eスポーツ

たかがゲーム、されど… eスポーツはどこまで拡大?

2018/8/21 日本経済新聞 夕刊

多くの観衆が訪れた「eスポーツ」の国際大会(5月、英バーミンガム)=ロイター

からすけ スマートフォン(スマホ)などのゲームで磨いた技を、スポーツのように競うイベントが目に付くようになったね。広がるのかな。

イチ子お姉さん 「eスポーツ」と呼ばれるもので、国際大会の公開競技にもなり始め、日本人選手も出場する予定よ。オリンピックと関わる可能性もあるわ。

■ゲーマーの頂点、競技に

 からすけ 汗をかかないけどスポーツといえるのかな?

 イチ子 個人やチームが、ビデオゲームで対戦し勝敗を競うゲーム「エレクトロニック・スポーツ」を略したものが「eスポーツ」よ。eスポーツの選手はプロゲーマーとも呼ばれ、グラウンドや道場ではなく、パソコンなど電子機器の前に座り、仮想現実(VR)で競技を繰り広げているわ。競技種目も、サッカーや野球、パズルなど領域はさまざまね。

 ゲームとはいえ、体をぶつけ合うスポーツ競技と同様に選手の瞬発力や頭脳、体力が勝負の決め手となるのよ。試合の様子はネット中継され、スタジアムのスクリーンでも観戦できるようになっているわ。観客が選手の激しい戦いに熱狂、一喜一憂する姿は野球やサッカーと変わらない感じだね。

 からすけ eスポーツはいつごろから始まったの?

 イチ子 2000年ごろ、欧米を中心に広がったといわれているよ。日本では今年2月、eスポーツにかかわる3つの団体が合併し、日本eスポーツ連合(JeSU)が立ち上がったわ。選手育成と普及活動に本腰を入れているようね。

 からすけ ゲームの競技会だから、実際のスポーツ大会とは関係なさそうだね。

 イチ子 そんなことはないわ。8月18日にジャカルタで開幕したアジア競技大会では、通常の柔道や水泳、野球などに加え、eスポーツが公開競技になるのよ。この大会では人気サッカーゲーム「ウイニングイレブン」など6種目で熱戦が繰り広げられるの。

 日本からはウイニングイレブンに2人、カードゲーム「ハースストーン」に1人と、2種目に男子3選手が参加する予定なのよ。強豪がひしめく東アジア地域予選を突破してきただけに上位入賞も期待されているわ。

■五輪と関わる動きも

「eスポーツ」と五輪をテーマにした公開討論会に臨むIOCのバッハ会長(7月、スイス・ローザンヌ)=IOC提供・共同

 からすけ eスポーツの選手も将来は、オリンピックに出場できるようになるの?

 イチ子 そこはまだ、ちょっと見通しにくいわ。日本オリンピック委員会(JOC)には、テレビゲームをスポーツとして定義する考えに慎重な意見も根強いのよ。でも、eスポーツ選手が日本代表となってオリンピックに出るチャンスが全くないわけではないよ。

 きっかけとなりそうなのが、22年に中国・杭州で開かれる次のアジア競技大会。eスポーツは公開競技からメダル授与を伴う公式競技に格上げされる見通しなの。また、オリンピックにeスポーツも関われるかどうかを巡り、国際オリンピック委員会(IOC)と、世界のeスポーツ団体や選手が議論を始めたわ。

 からすけ 大きな大会となるとお金もかかりそうだね。

 イチ子 企業もここにきてeスポーツに関心を持ち始めているわ。一度に数万人以上の観客を集める集客力が企業にとってはとても魅力的なの。広告やネット放送、チケットやグッズ販売などプロスポーツと同じ仕組みで収益を上げることができるのよ。ゲーム会社やネット企業だけでなく、飲食メーカーや大手芸能事務所の吉本興業やホリプロもeスポーツのプロチームを立ち上げたわ。

 からすけ eスポーツの選手になるのは難しいのかな?

 イチ子 動画投稿サイト「ユーチューブ」に面白い動画や役立つ情報などをアップし、広告収入を稼ぐユーチューバーのように、eスポーツ選手もインターネットを使った新しい職業の一つといえるわね。

 2000年以降、世界各地で対戦型ゲームの大会が開かれるようになり、競技人口は世界で1億人と推定されているわ。収入源は大きく分けて2つあり、賞金とスポンサー収入よ。所属するチームから給与をもらっている選手もいるようね。

 からすけ 一日中ゲームを練習しなければeスポーツ選手にはなれないね。

 イチ子 どんなスポーツでも上手になるには日々の練習が大切よ。大会で入賞する選手たちは当然、相当な時間をかけ技や技術を磨いているわ。ただ、eスポーツに限らずゲームには、熱中するあまり食事や睡眠の時間を削ったり、勉強やその他の趣味に使う時間まで犠牲にしたりする恐れもあるよ。

 世界保健機関(WHO)がゲーム依存を新しい疾病「ゲーム障害」と認定するなど、ゲームをやり過ぎると正常な日常生活ができなくなると心配する専門家も多いわ。体を動かさないeスポーツをどこまでスポーツ選手として扱えるのかなどの議論もあり、市民権を得ていくには解決する課題は多そうよ。

◇  ◇  ◇

■野球のように浸透の可能性

東京都立桜修館中等教育学校・荒川美奈子先生の話 熱戦たけなわのプロ野球や高校野球は国民的スポーツともいえますが、野球が米国から日本に伝わった明治時代には「野球有害論」がありました。新渡戸稲造の「野球は悪く言えば、相手を計略に陥れよう……神経鋭くしてやる遊びである」と野球を非難する談話を発端に、乃木希典、大隈重信ら各界の著名人を交え、害毒論派・擁護派に分かれて激論となりました。現在のeスポーツを巡る状況と似ているようです。

 eスポーツは、身体的な能力に恵まれなくてもハンディキャップがあっても、サーバーにアクセスする能力さえあれば軽やかに世界とつながることができます。それが醍醐味でしょう。しかし、ずっと端末の画面に集中していることの弊害も根強く指摘されています。こうした課題に対応した上で試合を観戦できる場が増えれば、野球のように身近に浸透していく可能性もあると思います。

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 プロゲーマー コンピューターなど電子機器でゲームをすることで報酬を受ける人。イベント出演やゲーム雑誌への執筆などを収入源とする。最近は、スポンサーからの機器・機材や交通費などの支援もある。JeSUは国内プロゲーマー111人にプロライセンスを発行している。
 アジア競技大会 1951年、インドの提唱で始まったアジアの国々のための総合競技大会。アジア版オリンピックとも呼ばれ、夏季五輪の中間年に開催される。軟式テニス、インド国技のカバディなど独自の競技も行われる。アジアオリンピック評議会が主催する。

[日本経済新聞夕刊2018年8月4日付]

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