eスポーツはゲーム会社のもの? リアルからご意見番国際体操連盟会長の渡辺守成氏に聞く

「リアルスポーツの原点は、やはり身体を使うことにあります。だからeスポーツはリアルのスポーツとは違うと思います。ただ世の中は異常な勢いで変化しています。今はリアルスポーツでないとしても、短い間でリアルスポーツに変わる可能性があります。たとえば(トレーニング機器の)シックスパッド。運動しなくても(外部の電気刺激で)腹筋を鍛えられるというのは、本来のスポーツとは違うと思われるかもしれませんが、最近はシックスパッドを使ったフィットネスクラブができています」

8~9月にジャカルタで開かれるアジア競技大会には日本から3選手が出場する(8月9日、東京都千代田区)

――バーチャルリアリティー(VR)技術によって、身体の動きとゲーム空間を連動させることも可能になってきました。

「その通りです。テクノロジーの発達は常に注視していく必要があります」

――eスポーツはリアルと違うが、スポーツ界としては入り口として包含していったほうがいいということですか。

「そうそう。リアルじゃないけれど、スポーツということでは悪くないんじゃないかと思います」

――eスポーツに対しては世の中の偏見もあるかと思います。渡辺さんは日本アーバンスポーツ支援協議会の会長も務めていますが、アーバンスポーツと共通点はありますか。

「スケートボードだ、(自転車の)BMXだというと、『ピアスして入れ墨しているヤツらでしょ』という概念が日本にはあります。でも選手たちは本当のアスリートです。確かにピアスも入れ墨もしていますが、それ以上にちゃんとトレーニングしています。伝統的なスポーツのようなコーチはつけず、自らいろんなことに挑戦して、スキルを高めています。不良のすることだという概念は、変えていかなくてはなりません」

「eスポーツも日本の選手にはまだ会ったことがないけれど、海外の選手に会うと、まあ、しっかりしていますね。やっぱりスピリットはスポーツに近いものがある。何としても勝ちたい。そのためにトレーニングを毎日やる。そういうところは、アスリート的ですね。(リアルのスポーツとなるには)頭や精神だけでなく、身体の発育・発展とどうリンクさせていくかが課題だと思います」

「eスポーツオリンピック」が現実的

――eスポーツには、ほかにどんな課題がありますか。

「スポーツのソフトといっても、結局はゲームメーカーがつくったソフトでしょう。IOCにしても、国際競技団体(インターナショナル・フェデレーション=IF)にしても、ゲームメーカーの利益を押し上げるために(eスポーツを)取り入れることはできません。どう公益性を持たせていくかもeスポーツの課題です」

――公益性とは、どういう意味ですか。

「読んで字のごとく、どうしたら公の利益になるか。人々の健康増進だったり、世界平和への貢献だったり、いろいろありますよね。でも現状では、ゲームメーカーの利益というのが強いです」

――戦争とか殺し合いといった残虐なソフトを除外すればいいのではないですか。

「それは論外。あるべきじゃない」

――では、どうすれば公益性を確保できるのでしょうか。

「IOCがゲームソフトを開発するとか、最初はそこまでやらないと難しいのではないですか。それはIFでもよくて、たとえば国際体操連盟が体操のゲームソフトをつくって、『これはスポーツとして認めます』と言うことも考えられます」

――国際体操連盟からゲームメーカーに、こんなソフトをつくってほしいと依頼することもありますか。

「あり得るでしょうね。ゲーマーが新しい技を考えて、(それに刺激される形で)リアルの体操も飛躍的に(技の水準が)上がる。そんな世界ができたらいいなと思います」

――ゲーム業界としては、それぞれの競技のIFに組み込まれるのは面白くないのでは。

「サッカーやバスケットなど(リアルスポーツを扱ったゲームソフト)はいいけれど、さっき話に出たような残虐なソフトはどこにも入れなくなる。そういうジレンマはありますよね。一方で、eスポーツが(独立した)IFになって、『ここが認めるソフトだけを、IOCのもとでスポーツとみなします』と言う方法もあるでしょう」

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縦割り行政でスポーツの発展ない
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