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カリスマの直言

ソニー株復活 カギはDNAを生かした改革(藤田勉) 一橋大学大学院特任教授

2018/8/13

新しい市場やライフスタイルを創造するのがソニーのDNAだ。写真は平井一夫前社長(左、現会長)からバトンを受け継いだ吉田憲一郎社長
「相場の『高値波乱』が続く状況では銘柄選択の重要性が増す」

景気拡大と金融緩和が続いており、長期的に見て世界的な株価上昇は持続するだろう。ただし、日経平均株価は2017年に19.1%上昇したが、18年は7月末時点で0.9%の下落と調整気味である。

筆者は(1)米国の逆イールドカーブ(短期金利が長期金利を上回る状態で、歴史的には政策金利を大きく引き上げたときに生じる)(2)米国の双子の赤字(3)米中貿易摩擦(4)北朝鮮やイランの地政学要因――といったリスクが高まっていると考える。相場がすぐに急落することはないと思うが、高値圏で不安定な動きとなる「高値波乱」は続くと予想される。それだけに、銘柄選択の重要性が増している。

■相場全体が調整しても株価が上がる

相場全体が調整していても、株価が上がる銘柄はある。例えば、年初来の株価上昇率は7月末時点で、資生堂が50.8%、ソニーが14.7%、リクルートホールディングスが9.1%である。全体が調整している中で、これらの株価が大きく上がっている理由は、企業のDNA(遺伝子)を生かした経営改革の成功である。

創業者が熱い思いをもって起業し、その商品やサービスが世の中に広く受け入れられたときに、企業は本格的な成長を始める。そして、創業者の思いが成長過程において発展し、結果として、企業のDNAが形成される。人が得意分野で勝負すれば勝てるように、企業もDNAの範囲内で事業展開することが勝利の方程式である。

しかし、創業者が去り、時代が変わると、気がつかないまま企業がDNAの範囲外で事業を展開してしまうことがある。その結果、多角化に失敗して、業績が悪化する例が少なくない。そんなとき、企業は大リストラの実行によって業績を回復させようとする。日産自動車などが該当するが、回復後、持続的に成長する企業はあまりない。その数少ない例外が前述の3社である。そのカギはDNAだ。

特に、ソニーの復活は特筆すべきものである。ソニーの株式時価総額は12年末に7927億円まで減少した(東証1部での順位は72位)。それが7月末には7.4兆円に増加し、順位は7位まで急浮上した。時価総額が3兆円台にとどまる日立製作所、パナソニックと比べて、株価上昇率ははるかに高い。

■新たな市場、ライフスタイルを創造

ソニーは、1946年に井深大、盛田昭夫の両氏が前身となる東京通信工業を設立した。ソニーというと、オーディオビジュアル(AV)機器メーカーのイメージが強いが、最初に商品化に挑んだのは電気炊飯器、次は電気座布団であった(電気炊飯器は失敗、電気座布団は大ヒットしたとされる)。その後、テープレコーダー、トランジスタラジオがヒットし、同社は世界的なAV機器メーカーに成長していった。さらに、ベータマックス(家庭用VTR)、ウォークマン、CDプレーヤー、MDプレーヤー、プレイステーションなど、新たな市場、ライフスタイルを創造する製品を開発してきた。

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