5時間の作業がわずか2分に 現場発の働き方アイデアリクルートホールディングス(下)

白河 一方で、クライアント企業側には古い体質のところも多いと思います。昔ながらの営業スタイルは変わって行くのでしょうか。

二葉 営業の接点に関しては、人が介在して価値を発揮できる部分と、テクノロジーで代用できる部分を仕分ける工夫がまさに現場で進行中です。中小企業の生産性向上支援のサービスにも力を入れています。例えば、レジ機能に加えて顧客管理などもできるPOS(販売時点情報管理)レジアプリの「Airレジ(エアレジ)」は飲食店などで導入されています。ITツールを無償提供し、活用されることで蓄積したデータをいただいてこちらで分析して、コンサルティングサービスとして提供することで売り上げに貢献するといったもので好評です。

意識を変えるには体験が大事

白河 イケイケドンドンの営業スタイルから、随分マインドは変わってきた感じでしょうか。

二葉 「このままではいけない」と、ミドル層がだんだん気付き始めています。ただ、これまでやってきたことを真っ向から否定するのではなく、納得して理解してもらうことがやはり大事です。一番早いのは、本人が体験したり、間近で事例に触れたりすることです。

これも峰岸の体験なんですが、かつて『赤すぐ』という育児メディアを担当していた時に、ワーキングマザーの社員が短時間でものすごい成果を上げているのを目の当たりにしているんです。

最近は、男性役員の中に小さいお子さんがいる方も増えていて、膝の上に乗せてオンライン会議に出席していたこともありました。「老眼対応のために、自宅には大きなモニターを設置した」という役員もいます。彼ら自身も当事者としてリモートワークを楽しんでいます。

16年9月に「ZIP WORK」という専門人材に時短の業務委託で働いてもらう事業を開始しました。その意義を当時の役員がなかなか理解をしてくれなかったのですが、実際のワーカーを彼の近くに配置してみたら、「ああ、彼女みたいな働き方だね。よく分かった」と納得してくれたんです。やはり実際の多様な働き方に触れる体験の効果は大きいと思いました。

白河 管理職が実際の家庭で4日間の子育て体験インターンをする「育ボスブートキャンプ」も、そういった取り組みですよね。体験者に話を聞きましたが、「自分は独身だけど、体験後には労働時間が短くなった」と言っていました。冒頭におっしゃっていた女性の活躍については現時点の成果はいかがですか。

二葉 もともと政府が数値目標を定める前の2010年ごろから女性管理職の任用数値目標を設けていまして、「2018年春時点で課長職以上30%」というのを目指していました。いま28%ですので、目標まであと少しです。役員の女性比率は11.9%。5年前から7ポイント上がっています。時短勤務からフルタイムに戻すタイミングも以前より早まっています。

白河 二葉さんは外部のNPOと共同で「はたらく育児」を応援するためのプロジェクト「iction!(イクション)」を立ち上げた仕掛け人でもありますね。これから5年先、10年先にリクルートがどんな会社になっていたらいいと思いますか。

二葉 個人的には、社内向けの働きやすい環境整備はもちろんのこと、外で活躍する方々とうまく連携してリクルートの成長に関わっていただける人材調達がもっと進むといいなと思っています。「ZIP WORK」の導入社数は600社を超えましたが、内部でももっと多彩な経験を持つ人材との協働を進めていって、環境変化に強い組織にしていけるとすてきですね。

リクルートは営業の会社と思われていましたが、これからの時代はエンジニアの力がもっと必要になっていきます。「働きやすい環境」の最適化を常にアップデートして、個の力を最大化できる会社であり続けるよう、トライ・アンド・エラーを繰り返していきたいと思います。

取材のあとで

あとがき:常に時代の最先端をつくってきたリクルートですが、自社での働き方はまだまだ「昭和のままでは?」との疑問を持っていました。女性活躍の進んだ企業というイメージもありますが、3年ほど前に幹部の方を対象に講演したとき、「自分たちの会社は女性活躍が進んでいると思っていたが、実は1周遅れていたのかもしれない」との感想をいただきました。リクルートが働き方改革に着手した後、ある役職者の「会社に24年間いて今が一番働きやすい」という言葉を聞き、「本当にマインドが変わったのか?」と疑問に思い取材しました。今後さらに期待しています。

白河桃子
少子化ジャーナリスト・作家。相模女子大客員教授。内閣官房「働き方改革実現会議」有識者議員。東京生まれ、慶応義塾大学卒。著書に「『婚活』時代」(共著)、「妊活バイブル」(共著)、「『産む』と『働く』の教科書」(共著)など。「仕事、結婚、出産、学生のためのライフプラン講座」を大学等で行っている。最新刊は「御社の働き方改革、ここが間違ってます!残業削減で伸びるすごい会社」(PHP新書)。

(ライター 宮本恵理子)

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