週末レシピ 夏バテには「甘酒+塩」 炊飯器で簡単に
今年の異常ともいえる暑さに、夏バテした人も多いのではないだろうか。すでに夏バテをしてしまった人にも、夏バテを予防しようという人にもお薦めなのが、「飲む点滴」とも呼ばれる「甘酒」だ。冬の飲み物のイメージがあるかもしれないが、実はその高い栄養価と消化のしやすさから、夏バテ予防にも、そして夏バテしてしまった身体の回復にもぴったり。材料も作り方も非常にシンプルで、炊飯器の保温機能で簡単に作れるる。安価で自分好みのものが作れるので、ぜひ試してみてほしい。
<材料>
コメこうじ 200グラム / お湯 600ミリリットル
<作り方>
(1)コメこうじはよくほぐして、炊飯器にいれる
(2)60℃のお湯を、(1)に入れて全体が混ざるようにかき混ぜる
(3)炊飯器のふたは開けたまま、ぬらして固くしぼったタオルをかけて、保温(60℃)に設定して、5時間ほど放置。途中で2~3回かき混ぜる
(4)粗熱が取れたら、清潔な密閉保存容器などに移して冷蔵庫で保存
*保存期間は冷蔵庫で約10日間 *冷凍保存する場合には、保存用袋などに薄くのばして冷凍すると、使う時に適量を取り出ししやすい *比較的しっかりコメの粒が残るので、気になる人はミキサーにかけてなめらかにしておこう
ポイントとなるのは、温度だ。甘酒が夏バテに有効な理由の一つとして酵素の働きがあるのだが、70℃以上になると酵素の働きが失われてしまう。そのため、お湯を加える時には、お湯の温度が60℃になっているかどうかをきちんと確認してほしい。調理用の温度計がない場合は、沸騰したお湯(100℃)に同量の常温の水を加えると、だいたい60℃くらいになる。もしくは、お湯を沸かしている時に、フツフツと鍋底に泡が出始めた時が約60℃なので、どちらかを使ってもらうとよいだろう。
「飲む点滴」とも称される甘酒は、栄養豊富だ。まず、プロテアーゼ・アミラーゼ・リパーゼなどの複数の酵素が豊富に含まれている。さらに、エネルギー源となるブドウ糖、各種ビタミンやミネラル、必須アミノ酸も含む。その上、オリゴ糖や食物繊維なども多く含むため整腸作用も期待できる。抗酸化作用の高いコウジ酸も含まれているため、アンチエイジングを気にする人にも向いている。
コメを発酵させたものなので消化吸収が良く、すでに夏バテで食欲がない時などでも、胃に負担をかけずに、するりと身体の中に入っていきやすい。まさに、非の打ち所がない天然のサプリメントなのだ。冬だけにとどまらず、夏にも積極的に摂取してほしい。
甘酒は、そのまま冷やして飲むのもお薦めだが、アレンジ自在でいろいろな味が楽しめるのも良いところ。アレンジすることで、甘酒特有のこうじの香りが消えるので、甘酒だけだとちょっと飲みにくい人にも向く。どれも混ぜるだけなので、甘酒の味にちょっと飽きてしまった人も、ぜひ試してほしい。次に、いくつかお薦めのアレンジレシピを紹介しよう。
・甘酒牛乳
牛乳と甘酒を同量混ぜる。牛乳の甘味と甘酒の甘味の相乗効果で甘味が増すとともに、甘酒のほのかな酸味があとあじをすっきりとさせてくれる。
・甘酒サイダー
甘酒200ミリリットルに炭酸水2100ミリリットルを加える。糖分を加えなくても、甘酒の甘味で十分においしく飲める。
・リンゴ甘酒
果汁100%のリンゴジュースと甘酒を同量混ぜる。こうじ特有の香りが消え、リンゴの風味が際立つので、お子様でも飲みやすい。
・豆乳甘酒
豆乳と甘酒を同量混ぜる。豆乳特有の豆の香りが緩和され、豆乳が苦手な人でも飲みやすくなる
・甘酒ヨーグルト
プレーンヨーグルトと甘酒を同量混ぜる。ヨーグルトと甘酒の酸味が強く感じられるため、甘味が苦手な人におすすめ。
・甘酒スムージー
スムージーを作る際に、甘酒を同量程度混ぜてミキサーにかける。スムージーがまろやかになりコクがでる。
・甘酒ジンジャーエール
甘酒100グラムと炭酸水100グラムを同量まぜ、そこにすりおろしショウガを小さじ1杯加えてよく混ぜる。甘味が足りないと感じる時は、ハチミツを少量混ぜるとよい。
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・塩甘酒
甘酒に塩をひとつまみ入れてよく混ぜる。
甘酒は、砂糖の代わりとして料理にも使える。たとえば、ココナツミルクと同量ずつ混ぜて冷凍すると、砂糖なしのココナツミルクアイスができ上がるし、煮物を作る際に砂糖の代わりに甘酒を加えると、優しい甘さに仕上がる。ドレッシングを作る際に入れると、コクが出ておいしくなる。栄養価が高く、飲む以外にも料理にも使える甘酒は、冷蔵庫に常備しておいて損はないのである。
甘酒にはミネラルが含まれている。ミネラルが不足しがちになる夏場には甘酒が特にお薦め。体内のミネラル不足は熱中症の引き金にもなるので、夏場はできるだけミネラルを多めに摂取することを心がけたいもの。そこで、甘酒に塩をひとつまみ加えてみていただきたい。塩は、ミネラルの塊であり、体内で消化液の材料となるほか、ビタミンや酵素の消化吸収にも大きな役割を果たす。甘酒と合わせることで酵素の働きを補強してくれる。
そして、塩にはうま味や甘味を強く感じさせる作用があるため、甘酒をそれだけで飲むのとはまた違う味わいで楽しむことができる。甘酒の原材料はコメなので、塩と合わないわけがない。甘酒に合う塩を紹介しよう。
沖縄県の離島・石垣島で生産される海水塩。ラムサール条約に認定された美しい名蔵湾の海水を原料に、高温蒸気の熱でじっくりと結晶化。カルシウムが多く、まろやかなしょっぱさと甘味、ほのかな酸味がある。甘酒に加えると、酸味が抑えらえて、甘味がぐっと強く感じられる。キンキンに冷やしてぐいっと飲みたい。
山口県の向津具半島にある油谷島の海外から取水した海水を、流下式塩田(ネットで作ったタワーに海水をかけ流して太陽と風の力で濃縮する方法)で濃縮したのち、薪でたいた平釜で4日間かけてじっくり煮詰めて結晶化させ、杉たるで寝かせたもの。適度な苦味とうまみが特徴的で、甘酒に入れるとうまみがぐぐっと強くなります。キンキンに冷やすよりは、常温で飲むのがお薦め。
鹿児島県の離島・与論島から20~40キロメートル沖合の、水深500メートルから取水した海洋深層水からできた塩。しっかりとしたしょっぱさがあるが、カルシウムも多く含み、ほのかな甘みと、かんきつ類を思わせるような苦味を感じる。
甘酒に入れると、甘酒の甘味と酸味が緩和されて、後味がすっきりとする。甘酒の甘さが気になる人におすすめだ。
「甘酒が良いのは分かったけれど、作るのはちょっとなあ」という方には、市販されている甘酒を購入するという手がある。その際に気を付けてほしいのが、市販されている甘酒には2種類あるということだ。酒かすを薄めて砂糖などを加えて甘味をつけたものと、今回紹介したレシピのように、コメを発酵させて甘味を引き出したものだ。
本来は、甘酒は糖分を加えずにコメとコメこうじだけで作るものであるのであり、酒かすで作った甘酒にはアルコールが含まれるため、飲むシーンを選ぶ。夏バテ対策に甘酒を活用する際には、原材料表示を確認して、コメとコメこうじだけで作られたものを選ぶようにしたい。暑さはまだ続く。残りの夏を、甘酒パワーで元気に乗り切ろう。
(一般社団法人日本ソルトコーディネーター協会代表理事 青山志穂)
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