オリジナルビール登場 プロ野球、球場グルメも熱戦
プロ野球シーズン真っただ中。各球場ではいわゆる「球場グルメ」も楽しみの一つ。単なる観戦中の小腹を満たすためのものではなく、それを食べること自体が球場まで足を運ぶひとつの目的になるほど進化しているのだ。
中でも人気なのは、選手や監督プロデュースのオリジナルメニュー。選手の好きな料理や選手の出身地のご当地グルメなどを、選手たちのこだわりや思いを詰めて独自にアレンジしたものだ。観戦しながら食べやすいように容器などにも工夫したものも多い。コアな野球ファンならずとも1度は食べておきたい、今どきの球場グルメを紹介しよう。
まずは、読売ジャイアンツ(巨人)の本拠地・東京ドームで味わえる監督や選手がプロデュースしたお弁当&グルメをチェック。「毎年、監督や選手本人にヒアリングを実施し、それをベースにメニューを考案します。実際に監督・選手本人に試食をしてもらって決定します」と東京ドーム飲食&物販部の中村大輔さん。現在、弁当8種類、バーガーや丼ぶり、スイーツなどのグルメ11種類を販売している。
注目は6月に発売した最新作「Welcome Back to Tokyo Dome!! 上原浩治 魂のDinner Box!!」。こちらは、10年ぶりに日本球界に復帰し、東京ドームに帰ってきた上原浩治選手がプロデュース。「入団後のインタビューの中で上原選手が『プロデュースグルメを作ってもらいたい』と言ってくださり、すぐに販売に向けて始動しました」と中村さん。
軟らかなローストビーフサンドに、唐揚げ、フライドポテトに、上原選手の背番号「11」が入ったオリジナルプリント付きコロッケ(カレー味)。さらにサケとたらこのおにぎりが付く。ビールのいいおつまみにもなるし、食事としても満足できるボリュームだ。
開発においては、上原選手自らが好物であるおにぎりを10種以上の具材から厳選。ローストビーフサンドの味付けやポテトなども、客の目線に立ち、たくさんあるサンプルの中から悩んだ末に選び抜いたという。ちなみにディナーボックスという名称だが、デーゲームでも食べられる。
気軽な軽食もあるが、ボリューム重視派には、監督・選手プロデュース弁当がお薦めだ。全8種類の弁当は、どれも応援パワーがみなぎりそうなものばかり。中には子どもが喜びそうなマスコットキャラクターであるジャビットプロデュースの「じゃびっとべんとう」もある。
プロデュース弁当のなかでも特に人気なのは、高橋由伸監督プロデュースの「由伸監督の奮輝!豪華ステーキ弁当」。ジューシーな国産牛のステーキをはじめ、焼き鳥や鶏皮の棒々鳥などが入り、肉好きにはたまらない。そぼろご飯は高橋由伸監督行きつけの店の味を再現したそうで、上に乗った半熟卵が味わいのアクセントになっている。
こうした選手・監督プロデュースの弁当やグルメは、巨人ファンはもちろん、ビジターチームのファンにも好評だとか。
次は「横浜DeNAベイスターズ」の本拠地である横浜スタジアムだ。選手プロデュースメニューは9種類。年に4回入れ替わるので、年間で36種類(予定)のメニューが楽しめる。2018年7月16日からは第3弾メニューを展開中。観戦しながらでも食べやすい手軽な丼ぶりをはじめ、つまみ、スイーツ、ドリンクなどがそろう。
第3弾で特に人気があるのが、筒香嘉智選手プロデュース「Go丼2018~今年は塩豚丼~」。筒香選手の好物である塩豚丼に、シャキシャキしたレタスの千切りを加えることで、女性にも食べやすいようにアレンジ。ユズコショウの爽やかな風味が食欲を誘う。
メニューは毎年更新。「過去に人気のあったメニューでもアレンジを加えてご提供することを心がけています」と話すのは横浜DeNAベイスターズMD部飲食グループの浦田晃仁さん。現在展開中の第3弾のヒアリングでは、飯塚悟史選手と神里和毅選手から「出身地の地元料理をお客様にも味わっていただきたい」という意見が出たそうだ。
そこで飯塚選手がプロデュースしたのが、出身地、新潟のご当地グルメ、タレかつ丼。新潟のタレかつは、一般的な卵とじタイプのかつ丼とは異なり、トンカツをしょうゆベースのタレにくぐらせ、ご飯の上に載せたもの。カツは薄めの衣で食べやすく、甘さがあるしょうゆダレがクセになる。
一方、沖縄出身の神里和毅選手は、地元でよく食べていたというタコスをプロデュース。食べなれたタコスに、さっぱりとした甘みのあるリコッタチーズをトッピングし、オリジナル感のあるものに仕上げた。
こうしたオリジナルメニューと一緒に楽しみたいのが、球団オリジナル醸造ビール。爽やかなホップとかんきつ系のフルーティーな香りが特徴の「ベイスターズ・エール」とすっきりした苦みが心地いい「ベイスターズ・ラガー」の定番2種に加え、今年はシーズンを通して4種登場する期間・数量限定ビール「ベイスターズ・シーズン リミテッド ビール」もある。いずれもスタジアム直営売店と近隣のTHE BAYS1階「&9」などで楽しめる特別な味だ。
「多くのお客様に選手プロデュースの味をお楽しみいただいており、今後もおいしさはもちろん、食べやすさや味付けに関してもお客様のことを第一に考えたメニューを選手とともに開発していきます」と浦田さん。なお、9月上旬頃からは第3弾と入れ替わりで第4弾のメニューを販売予定とのこと。
続いてはパ・リーグの球場グルメを食べてみよう。ZOZOマリンスタジアムを本拠地に構えるのが、千葉ロッテマリーンズ。選手プロデュースメニューは、カレーやラーメンなど万人ウケする料理はもちろん、ドリンクやスイーツも充実。メニューは好評で継続するものを除いて毎年更新。20種類近くを提供している。
千葉ロッテマリーンズ広報・メディア室の梶原紀章さんによれば、「選手プロデュースメニューは選手のファン層を考えて考案しています」とのこと。たとえば、女性に人気のある藤岡裕大選手のメニューの場合、藤岡選手の出身地の名産、きびだんごを使ったパフェを開発。「発売日には、試合途中で食材がなくなり完売になるほど売れました」と梶原さん。岡山の老舗きびだんごと雪見だいふくの組み合わせが新鮮。ヘルメットをモチーフにした容器もかわいい。
ドリンクもSNS(交流サイト)映えしそうなユニークなものがズラリ。「選手の好きなものをできるだけ取り入れ、選手のイメージに合うようなドリンクに仕上げています」と梶原さん。石川歩選手プロデュースの「抹茶かき氷風日本酒カクテル」は石川選手の出身地・富山県の名酒「立山」を使ったカクテルドリンク。立山連峰を思わせる見た目もおしゃれ。たまにはビールではなく日本酒で野球観戦もいい。
地方の球場も見逃せない。楽天生命パーク宮城が本拠地である東北楽天ゴールデンイーグルスの選手プロデュースメニューは、約50種類という豊富なラインアップを誇る。
弁当や丼はもちろん、バーガー類やスイーツも充実しており、まるでカフェのよう。「見た目も味もファンの皆さまにお楽しみいただけるバラエテイー豊富なスタジアムグルメをご用意しております」と楽天野球団飲食担当の門田卓哉さん。メニューはすべてではないが2シーズンをメドに見直し、入れ替えているそうだ。
バーガー類で人気なのは辛島航選手プロデュースの「WATARU'S CHEESE BURGER 58」。余計なものを入れない、シンプルでクラシックなスタイルに仕上げることで、パテのおいしさを際立たせている。バンズに付けられた「辛島58」の焼き印が球場グルメらしいワンポイントだ。
女性にはスイーツの人気メニュー、岡島豪郎選手プロデュースの「タケロークレープ」もぜひチェックしてほしい。実は岡島選手は大の甘党。「思い通りの味になるまで食材の組み合わせを試行錯誤してできたクレープです。何度も作り直しては試食したため、完成後はおなかいっぱいでした」と門田さん。
50種類もメニューがあるので、弁当やバーガー、スイーツなど複数のメニューをプロデュースする選手もいる。どれを食べるか悩むのも楽しいし、リピートする楽しみもある。
このほかにも各地の球場では趣向を凝らした球場グルメを提供中だ。衛生面から飲食物を持ち込めない球場も少なくない。であれば、球場のオリジナルグルメで応援気分を盛り上げるしかない?
(GreenCreate)
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