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自筆遺言が書きやすく 財産目録はパソコン作成OKに

2018/8/11

写真はイメージ=PIXTA

 自分の死後にマイホーム、預貯金といった財産を、だれにどのくらい相続させるか書き残すのが「遺言」です。本人が自分で書く形式の「自筆証書」は、先の通常国会で作成と保管をしやすくする法案が成立しました。遺言の形式には自筆証書のほか、法律の専門家である公証人がかかわる「公正証書」「秘密証書」もあります。それぞれどんな特徴があるのでしょうか。

 自筆証書の遺言は作成の費用がかかりません。いつでも、どこにいてもすぐに書けるメリットもあります。ただし、いくつかの要件を満たした書き方をしないと法的には無効とされてしまいます。

■作成の日付「吉日」は無効

 例えば、自筆ではなくパソコンで作成して印字したり、作成の日付を「吉日」にしたりすると法的に無効で、相続人同士のトラブルにつながる可能性もあります。具体的な不動産の所在地や預貯金の口座などを含めて全文を自筆する決まりもあり、高齢者にとって負担になっています。

 そこで民法が改正され、2019年1月13日から具体的な不動産や預貯金などを記載する財産目録の部分はパソコン書きや代筆が認められます。自筆でない場合は目録の全ページに署名と押印をしなければなりませんが、遺言全体を自筆で作成するのに比べて労力はかかりません。

 さらに20年7月までに、本人が自筆証書を法務局に持参すると、日付や署名、押印といった要件をチェックしたうえで保管してもらえる法律が施行されます。紛失したり、だれかに書き換えられたりする心配をなくすためです。

■検認の手続きが不要に

 法務局での保管にはもう一つメリットがあります。相続発生後に家庭裁判所が相続人を集めて遺言の状態を確定する「検認」の手続きが不要になるのです。検認は家裁に申し立ててから1カ月ほどかかるため、これが不要になると、その分だけ早く遺産分割ができるわけです。

 もともと検認が不要で、「偽造ではないか」「だれかが強制的に書かせたのでは」などと疑う余地がない遺言形式が「公正証書」です。公証人が作成する公文書なので遺言としての法的な要件は整っています。作成日には公証人のほか証人2人が立ち会い、本人が遺言の内容を理解しているか確認します。

 認知症で遺言を作成する能力がなかったのでは、という疑いも生じにくいといえます。こすぎ法律事務所の弁護士、北村亮典さんは「法務局で保管する自筆証書と比べても『遺言能力』という点で公正証書がなお優位にある」とみています。原本は公証役場に保管されますから紛失のリスクもありません。

 日本公証人連合会(東京・千代田)によると、2017年は11万191件の公正証書遺言が作成されました。ただし作成の手数料は少なくとも数万円かかり、財産が大きいほど高くなります。

■秘密証書は公正証書より手数料安く

 遺言のもう一つの形式が「秘密証書」です。本人が作成した遺言を封印して公証人に提出し、遺言の内容ではなく、確かに本人が作成したという事実を証明してもらうものです。公証人は遺言の内容には関知しません。

 秘密証書の手数料は一律1万1000円。17年の作成件数は134件と少数ですが、税理士法人レガシィ(東京・千代田)の代表社員税理士、大山広見さんは「公正証書に比べて手続きが少なく高齢者のストレスになりにくいうえ、手数料も抑えられる」とメリットを指摘します。パソコン書きも認められています。

[日本経済新聞朝刊2018年8月4日付]

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