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著者に聞く 仕事の風景

2018/8/8

著者に聞く 仕事の風景

昨今、良くも悪くも流行語になりつつある「生産性」はAIやロボットの導入論議とからめて語られがちだ。しかし、「今の日本での生産性論議はやや本筋からずれている」と、前川氏はみる。疑問に感じる点は、「無駄をそぎ落とす」いう効率重視の意識が前面に出すぎているところだという。

本来は質の高い仕事を実現する手段にすぎなかったはずの「無駄カット」が目的にすり替わっている。労働の質を高める工夫よりも、周辺業務をアウトソーシングする切り分け処理のほうが先行する傾向がある。前川氏はこの流れに、かつてマネジメント論としてもてはやされた「選択と集中」との共通点をかぎ取る。

アウトソーシングに「空洞化」の懸念

どんどんコア業務以外をアウトソーシングしていくと、重要な仕事だけが残るといわれたが、前川氏はその考えに疑いの目を向ける。「顧客管理や営業のような、商品・サービスと買い手をつなぐ最前線を手放してしまうのは、(顧客ニーズをつかみ、有用な商品・サービスを開発するうえで)賢くない判断」と指摘する。ビジネスの空洞化が起きかねない。

生産性と成果主義はコインの裏表のような関係にある。だが、生産性が具体的なイメージを伴わないのと同じく、成果主義も実体がぼんやりしている。投資業務のように年間何%のリターンと数字ではじき出せる職種はむしろまれだろう。生産性は、成果を割り算の分子に、時間を分母にして計算するが、成果の設定・評価がはっきりしないから生産性も推し量りにくい。

「米国流のドライな成果主義をそのまま日本に持ち込むのは、やや乱暴なところがある」とみる前川氏は、目先の生産性・成果主義論議に振り回されない態度を求める。そこで提案するのは、勤め先や上司が設定した目標をうのみにせず、独自のキャリア設計と両にらみしながら、自分の市場価値を高めていく「自律型人材」としての成長だ。

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合理性追求のワナ、つながり希薄に
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