やりたいことを我慢しない 仕事上手4つの思考グセ
「言われたことだけする機械」にならずに、楽しみながら仕事をしている人は輝いて見えます。そうなるためにはどうしたらいいのか。働き方改革のコンサルティングを行っている池田千恵さんは、仕事を謳歌している人には、共通した4つの「思考グセ」があると言います。どのような思考グセなのか、じっくり掘り下げます。
高度な知識や資格を得るより、新しいアイデアが重要に
2018年6月4日の日本経済新聞に、アメリカの国際法律事務所ベーカー&マッケンジーのトップ、ポール・ローリンソン氏のインタビューが掲載されており、興味深く読みました。今まで専門性が高く、機械に代替されることはないと思われていた法律事務所の世界でも、時間がかかっていた契約書の単純なチェック作業などが人工知能(AI)の活用で減るため仕事内容が大きく変わり、今後は経営者のパートナーとしての事業機会創出などの提案力が求められるようになるとのことでした。
私が新卒で就職活動をしていたのは20年も前のことですが、当時は弁護士をはじめとする高度な知識や資格を必要とする仕事は花形職業で、絶対安泰だと思う人が大半でした。今、このように希少性があった仕事からどんどん機械化されていく今の状況に驚きを隠せません。
知識や資格を得るためにたくさん勉強して暗記して、正確な判断ができるように頑張るのが正しいと信じていた今までは一体何だったんだろう、と、真面目に努力してきた人は思ってしまうかもしれませんが、世の中の流れを後戻りさせることはできません。単純作業から解放される未来が近づく今、「仕事が遊び、遊びが仕事」と捉え、創造性を発揮してゼロからイチを作り出すことが求められるようになると、今までとは違う頭を使うことが必要となってきます。
考え方はクセ付けできる! マネしてみよう
楽しみながら仕事をする人と食事をしたり、インタビューしたりすることで分かった、私たちが参考にしたい「思考グセ」は4つあります。
「老後の楽しみに」「いつかはこうしたい」という言葉を聞くことはありません。やりたい、と思ったらそのための行動を今から始めます。
2.捨てることをためらわない
大きな目的のためなら、他の枝葉はバッサリと捨てます。
3.「一粒で二度おいしい」をいつも意識する
一つの目的のために時間を使うことはせず、ついでに何かできないか? という視点で考えています。
4.嫌いな人、事でさえもネタに使う
この人嫌だな、や、嫌なことがあったな、というときも、ただ不満を言うだけでなく、それを言語化して今後の糧にしていきます。
これらの「思考グセ」を先天的に持っている人もいますが、多くの人は今までの人生から後天的に身に付けたものです。ということは私たちでもマネできるということです。順番に詳しく見ていきましょう。
1.やりたいことを後回しにしない
私たちは、ともすると「しなければいけない」ことを一日中めいっぱい詰め込んで、本当に心から、誰かに止められようが何をしようがついつい手を着けてしまうような「したい」を置き去りにしてしまいます。心からの「したい」という選択を日々諦めてしまっているせいで、なんとなく中途半端で、モヤモヤしたまま1日が終わってしまうのです。したいことを「本当はしたかったんだけどね」と晩年につぶやくような人生は送りたくない、という考えの人が、仕事を遊びのように楽しみながら人生を謳歌している人には多いです。
「とはいえ現実はやりたいことばかりできないよ」「それは会社員じゃないからできることだ」と考える人もいるかもしれませんが、決してそうとは言い切れません。例えば本当は海外を旅するように暮らしてみたいと思っているのなら、理想を実現している人を見つけ、本やブログを読んだりして調べ、その人がどのようにして道を開いたかを分析してみることなら始められますよね。まだ旅するように暮らすのは無理でも、朝イチの仕事前、喫茶店などで将来どこで暮らしたいかをイメージして海外のビジュアル本を開くことならできるし、旅するように暮らすために年間で必要なお金を調べてシミュレーションすることだってできます。
このように、「時間があったらしよう」「本当はこうしたい」というような心のホンネに正直になる訓練として私がオススメするのは、朝イチの30分を「本当はしたい」をかなえる時間に充てることです。どうしてもやりたいけど、今までやっていなかったことや、本当はしたいけどできないと思い込んでいたことを朝イチで試し、自分を満足させてから仕事に入ってみましょう。理想の生活を一部取り入れてから出社する習慣を付けるだけで、1日の始まりが変わり、仕事の取り組みも変わります。
2.捨てることをためらわない
「忙しくて何も進まない」「時間ができると、するべきことを横に置いてダラダラしてしまう」「人の誘いを断れずに自分の時間が減っていく」――。
楽しみながら仕事をする人には、めったに上記の悩みはありません。なんとなく過ぎてしまう毎日の出来事に対して、主体性を持って判断しているからです。どれだけ選択肢が増えたとしても選べるのはたった一つ。「あの時こうしておけば」「あっちを選んでおけば」と後悔しないためにも、「自分で決めたんだ!」という判断を大切にする「決めグセ」が付いています。
「決めグセ」といっても、大きな決断を毎日せよ! というわけではありません。例えば次のような小さなことでよいのです。
□ ダラダラするときは「ダラダラする!」と決める
□ 遊ぶときは「遊ぶ!」と決める
□ 気が乗らない付き合いは「断る!」と決める
□ 気が乗らない仕事だけど、自分しかやる人がいないなら「さっさと終わらせる!」と決める
いったん決めたらグダグダ言わずやるだけ。間違ったら修正案をまた決めて、やるだけ。それだけでもだいぶスッキリします。「決めグセ」を付ける第一歩として、まずは何事も瞬間反射的に物事をてきぱきと決めていくことを自分に課してみましょう。
例えば、朝のカフェ手帳タイムでは窓際の緑がよく見える席に座ると決めるとか、メニューを見たら15秒で頼むものを決める、といった、小さなことからでかまいません。
3.「一粒で二度おいしい」をいつも意識す
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楽しみながら仕事をする人は、一つの行動から得るものを一つに限定するのではなく、他にも波及できる方法はないかということを常に考えています。例えば、自分が登壇するイベントがあったらそれをメディアに取材してもらって、コンテンツとして拡散させた上で長く記録としても残す方法を考えたり、地方出張があったら現地でクライアントと情報交換する機会をセットしたりといったように、「他のこととくっつけられないかな?」というアイデアをいろいろと考えるのが得意です。
会社員時代、仕事ができる先輩は仕事相手とのコミュニケーションでも「ついでに」精神を発揮していました。廊下でたまたま出会ったプロジェクトメンバーには挨拶だけでなく、プロジェクトの進捗具合を聞いてみたり、自分が手掛けた案件のクライアント側からの感想を聞いてみたりするのが上手で、会話の様子から「○○さん、仕事し過ぎて疲れているみたいだけどプロジェクト停滞しているのかな? 原稿が出るのが遅くなるかもしれない」という予測まで立てていたのを見て、私もただ挨拶するだけじゃなくて「ついでに」精神を発揮しようと思ったものでした。
例えば会社の同僚との食事でも、会話のついでに仕事のヒントを聞き出したりすることもできるし、気になっていたのに行ったことがない、おいしいと噂のレストランを会食場所に設定するというのも「一粒で二度おいしい」方法ですよね。
4.嫌いな人、事でさえもネタに使う
日々、仕事をしているとちょっとした「イラッ」は誰にでもあります。私の場合は自分に何をしてほしいのかの要点が分からずに何度も往復しなければいけないビジネスメールや、メールのやり取りで十分なのにあえて「顔合わせ」「打ち合わせ」と称して会う時間をセッティングされたり、最初の依頼内容を聞いて納得したから引き受けたのに後から小出しで追加の依頼が出てきたりすると、自分の時間を返してほしい、とイライラしてしまいます。でも、イライラしたおかげでこの連載「じぶん働き方改革」のネタ帳が増えた、と思うことができると、この経験は面白いなぁ、自分だったらこうするのに、と、経験を文章にして仕事につなげることができます。
イライラした人や事には、改善のヒントが隠れているものです。「こうしたらいいのに!」「自分だったらこうするのに!」という思いをきちんと言語化して共有できるようにしていくと、自分だけのネタ帳がたまってきます。
◇ ◇ ◇
「自分の仕事なんて機械に取って代わられる。怖い」とだけ思っていても何も始まりません。創造性がないと思い込んでいた仕事でも、捉え方次第で仕事内容はいくらでも再定義できるものです。今日から早速4つの思考グセを意識していきましょう!
株式会社 朝6時 代表取締役。慶應義塾大学総合政策学部卒業。外食企業、外資系戦略コンサルティング会社を経て現職。企業や自治体の朝イチ仕事改善、生産性向上の仕組みを構築している他、「働き方改革プロジェクト」「女性活躍推進プロジェクト」など、ミドルマネジメント戦力化のためのコンサルティングや研修を行っている。「絶対! 伝わる図解」(朝日新聞出版)、「朝活手帳」(ディスカヴァー21)など著書多数。
[nikkei WOMAN Online 2018年6月20日付記事を再構成]
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
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