街着としての出番を増やす 水着レイヤードのコツ
宮田理江のファッション戦略論
いよいよ夏休みシーズンに突入したこの時期、水着を新調したくなった人も多いのでは。最近では、水着の上に服を重ねるコーディネートも増えてきました。こうしたレイヤードのコツをつかめば、水着を街着にも使え、出番が増えそうです。そこでファッション・ジャーナリストの宮田理江さんが、水着を使ったレイヤードの方法を解説します。
近頃は水着の上に服を重ねて、街着風にコーディネートする人が増えている。イタリア発のレッグウエアと水着のブランド「Calzedonia(カルツェドニア)」は水着の街中コーデでも先駆け的存在。影響力のある世界的インフルエンサーのChiara Ferragni(キアラ・フェラーニ)さんが着こなす新作水着のルックを参考に、「水着=街着」のスタイリングを研究していこう。
トロピカル柄ワンピ水着に海色ミニドレス
せっかくのビーチだから、気分も盛り上げていきたいと思うなら、南国調のモチーフを選びたい。ピンクの下地にトロピカルリーフ(葉っぱ)プリントを施したデザインはリゾート気分に浸れる。アンダーバストにゴムを配し、薄手でソフトなカップをセットしてあるから、フィット感が高く、ボディーラインをきれいに整えてくれる。細かいフリルをあしらったショルダーストラップがフェミニン感を添える。バックラインがオープンで、背中側からの視線も受け止める。
水着を街で着る場合、最も手っ取り早いのは、薄手のワンピース風アイテムを重ねるコーディネートだ。海色のワンピはトロピカル柄の水着になじむ。肩ストラップや背中を適度に露出させるシルエットは、伸びやかな着姿に導いてくれる。フリルとタッセルをあしらったディテールが表情を加えている。ショルダーストラップのボウ結びは肩口に愛らしさを添える。長さを調節して、水着や素肌の見え具合をアレンジすれば、ムードを変えやすい。
アシンメトリー黒ワンピ水着に花柄マキシ丈スカート
落ち着いた水着姿に仕上げるなら、やはり黒系が無難なチョイス。引き締まった体形を印象づけてもらえる点でもありがたい存在だ。素っ気なく見えやすいところもあるが、アシンメトリー(左右非対称)のカッティングを取り入れると、ダイナミックな動きが生まれる。サイドにカットアウトを施したデザインは単調に見えにくいうえ、見た目上のスリミング効果も期待できる。ワンショルダーは斜めに流れ落ちるようなシルエットを強調。適度なハイレグもすっきりした脚線を際立たせる。
ワンショルダーのシルエットは、そのまま生かして街着化しやすい。腰から下を隠すスカートを重ねるだけで、水着が街着に早変わり。トレンドの花柄プリント柄を全面に配したロングスカートは、コンパクトな上半身とのコントラストを引き立てる。上半身が黒一色なら、スカートで華やぎを加えたい。ソフトなウエストゴム仕様は肌に跡を残さず、ゆったりしたフィット感でまとえる。ドレープを利かせてあり、肌離れがいいのも、真夏には助かる。同じ柄の水着と組み合わせたセットアップはディナーにも着ていけそうだ。
ワンショルダー型ビキニトップに真っ白ショートパンツ
見慣れたビキニにも、新デザインが相次いで登場している。例えば、ワンショルダーと融合したようなビキニトップは、普通のタイプより優美なムードを醸し出す。幅広のフリルがバストに自然なボリューム感を与えている。細めのストライプ柄がほっそりイメージを忍び込ませてくれる。インナーカップが取り外し可能だから、トップ単体での普段使いもしやすい。
夏らしい軽快な装いには、ショートパンツが欠かせない。ビキニボトムの上からはけば、スポーティーな着映えに整えられる。浜辺やプールサイドでちょっと移動する際にも、サッと重ねやすいショートパンツは重宝する。ストライプや黒のビキニトップと合わせるなら、クリーンな印象の白が便利。ウエストにリボンがあしらってあり、ほのかにエレガント。細かいギャザーが寄せてあるので、おしゃれに手を抜かない雰囲気も漂う。
バンダナ柄ビキニにボーダー柄カフタンワンピ
進化形ビキニの一例と言えるのが、バンダナ風味のタイプだ。トライアングルビキニトップにバンダナ柄をあしらったうえ、まるでバンダナを巻いたかのように、深いネックラインを演出。バスト中央でボウ結びにしてあり、バストサイズに応じてフィット感を調節できるのも使い勝手に優れている。バストが大きめの女性にも扱いやすいモデルだ。ファッショントレンドではアメリカンやフォークロア(民俗調)が盛り上がり始めていて、バンダナ柄はその意味からも街着に転用したくなる。
水から上がった後は、窮屈な服を着たくないから、カフタンのようなゆるめシルエットがうれしい。短め丈ワンピースのストンと落ちる形は体形を目立たせない。裾にフリルをあしらったタイプは、ヒップ周りのカバー力も期待できる。深めのラウンドネックライン、7分袖がのどかな景色を生む。深いバックラインからバンダナトップをのぞかせれば、テイストミックスの夏レイヤードに仕上がる。バンダナの柄とワンピのマリンボーダー柄が響き合って、弾むような「柄on柄」に映る。
「水着レイヤード」でサマールックに深みを
カルツェドニアは1987年、イタリアの古都ヴェローナで創業した、レッグウェアと水着のブランドだ。ランジェリーブランドの「Intimissimi(インティミッシミ)」と同じグループでもある。トップモデルのジゼル・ブンチェンを起用した広告でも知られる。今のアイコンになっているのは、1児の母でもある、イタリアのファッションブロガー、インフルエンサーのキアラ・フェラーニさん。2018年夏の新作ではベロア素材やトロピカルモチーフ、アシンメトリー(左右非対称)などのデザインが豊富に用意されている。
一昔前は「水着を街で着るなんて」という感覚があった。でも、服と場所の間柄を固定しない「シーンフリー」のおしゃれ文法が浸透して、水着の居場所も広がってきた。速乾性や伸び縮みの面で優れる水着は、ランジェリーの代わりに着て、リラクシングな気持ちを楽しめる。アイキャッチーな柄・色を、透け見せさせたり、チラ見せしたりといった「水着レイヤード」もサマールックに深みをもたらす。水中と水辺に限定しない、自由な発想の着回しは、水着の出番をもっと増やしてくれる。
(画像協力 カルツェドニア)
ファッションジャーナリスト、ファッションディレクター。多彩なメディアでランウェイリポートからトレンド情報、スタイリング指南などを発信。バイヤー、プレスなど業界経験を生かした、「買う側・着る側の気持ち」に目配りした解説が好評。自らのテレビ通版ブランドもプロデュース。セミナーやイベント出演も多い。 著書に「おしゃれの近道」「もっとおしゃれの近道」(ともに、学研パブリッシング)がある。
[nikkei WOMAN Online 2018年7月14日付記事を再構成]
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
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