稲盛流で顧客も社員もワクワク KDDI社長の使命感KDDIの高橋誠社長(上)

――リーダーであった稲盛氏の言葉で印象に残っているものは。

「『競争こそがより良いサービスの提供につながる。決して1社だけで事業を独占してはいけない』とよく教えられました。1社で独占していたNTTに対抗し、日本の電話を安くするという理想を持っていたからこそです。そのビジョンに向かってひたむきに働く稲盛さんたち幹部の姿が道しるべでした」

遠距離恋愛の公衆電話が原体験

大企業でも新しいことに挑戦できると強調する

「もう一つ教え込まれたことは、利益ばかりを目的にしないということです。1985年の通信の自由化以降、流れに乗って事業を広げてきましたが、大切にしたのは日本の電話を安くするという信念です。利益も大事ですが、動機や信念があって、目指すべき姿になるために利益を出すという順番でなければいけません」

「社長室で週に2~3回、社員が10人くらい集まる飲み会があったんですよ。会長だった稲盛さんはそのうち週に1回くらいは顔を出して、みんなでわいわい話していました。リーダーが現場と同じ目線で声を聞くことは大切です。現場のモチベーションも高まります。2000年にKDD、IDOと合併してKDDIが発足しますが、こうしたDDIの風土はずっと受け継がれてきました。今年4月に社長に就任して、顧客も社員もワクワクすることが大事、ということを繰り返し話していますが、原点はここにあるかもしれません。僕も社長室で『ワクワク座談会』を開きたいと思っています」

――大学卒業後、大企業に入社するという考えはなかったのですか。

「当時はちょうど日本でもベンチャー企業が芽を出し始めたころで、就職活動は大企業派かベンチャー派の2つに分かれていました。僕は安定志向ではなく、個人を大事にしてほしい、会社の歯車になりたくない、という気持ちがありました。通信業界に特別興味があったわけではありませんでしたが、京セラのように個人を大事にしてくれる会社はすごく魅力的に映りました」

「学生時代に遠距離恋愛をしたことがあったんです。彼女と話そうと思うと、公衆電話ボックスで10円玉を積んで、ずっと入れ続けるみたいな時代でした。それがどうしても許せなかったんです。日本の電話を安くするというDDIの理念がそんな原体験に響いて、一生懸命そこに参加した感じでした」

――高橋社長自身が持っている使命感は何でしょう。

「携帯電話はほぼ全ての国民に普及し、通信だけに注力していては、成長は難しい。ネット通販や金融、電力など生活に関わるあらゆるサービスを提案していきます。KDDIではそれらのサービスを総称して『ライフデザイン』と呼んでいます。僕の社長任期のうちに『通信とライフデザインの融合』をしっかり完成させたい」

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