ライフコラム

井上芳雄 エンタメ通信

分かりやすくするだけが芝居ではない(井上芳雄) 第27回

日経エンタテインメント!

2018/8/4

井上芳雄です。7月27日に『ナイツ・テイル-騎士物語-』が開幕しました。堂本光一君との共演で、世界初演のオリジナルミュージカルです。どんな話だろうとお客様も緊張されたかと思いますが、実はコメディーでもあります。物語が進むにつれて、「この男2人はとんでもない勘違い野郎だ。笑っていいんだ」という空気が場内に満ちていくのが感じられて、お客様と一緒に新しい作品を創っているという手応えを得ました。

『ナイツ・テイル-騎士物語-』は8月29日まで、東京・帝国劇場にて上演中(写真提供/東宝演劇部)

光一君と僕はいとこ同士という役柄。同じ女性を愛したために、いろんな人を巻き込んで出来事が起こります。稽古を振り返ると、2カ月はあっという間。すごく楽しかった。世界初演のオリジナル作品を、海外のスタッフと一緒にゼロから創るのは、とても大変ではあるけど、クリエイティブの極みともいえる作業でした。

演出家のジョン・ケアードは、物事をきちっと詰めていくタイプではありません。大枠をつくって、その中で自由にやってくださいという感じなので、僕たちも最後まで今回の作品がどういう形になるか見えませんでした。そんななかで、すてきだと思ったのは、何事も限定せずに、お客様の想像の中で世界が広がっていく創り方をしていることです。光一君と僕が初めてタッグを組んで騎士を演じると聞くと、西洋の中世のカッコいい騎士が出てきて、戦ったり、恋をしたりという話が一番想像しやすいのかなと思います。でも、できあがったものは全く違います。

国や時代を特定していないし、音楽は三味線と笛と太鼓という和楽器とオーケストラの融合、衣装も和服や中世の洋服やエキゾチックな要素が入り交じっています。セットもシンプルで大きなものが1個あるだけ。何かを説明するような具象的なものはほとんど出こなくて、最小限の小道具と役者の体ですべてを表現していきます。例えば、森の中で馬に乗って狩りをする場面も、役者が体ひとつで演じています。

演劇の想像力をフルに使って見てもらいたいというところが、すごくジョンらしい。攻めていると思いました。分かりやすく説明するほうが、お客様に喜んでもらえるのかもしれません。ところが、ジョンは「考えてもらうことも大事だし、すぐに分からなくても、何か心に残るものがあればいいんだよ」と。さすがなあ、と思いながら稽古を重ねてきました。

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