検索朝刊・夕刊LIVEMyニュース日経会社情報人事ウオッチ
NIKKEI Prime

朝夕刊や電子版ではお伝えしきれない情報をお届けします。今後も様々な切り口でサービスを開始予定です。

検索朝刊・夕刊LIVEMyニュース日経会社情報人事ウオッチ
NIKKEI Prime

朝夕刊や電子版ではお伝えしきれない情報をお届けします。今後も様々な切り口でサービスを開始予定です。

検索朝刊・夕刊LIVEMyニュース日経会社情報人事ウオッチ
NIKKEI Prime

朝夕刊や電子版ではお伝えしきれない情報をお届けします。今後も様々な切り口でサービスを開始予定です。

NIKKEI Primeについて

朝夕刊や電子版ではお伝えしきれない情報をお届けします。今後も様々な切り口でサービスを開始予定です。

/

分かりやすくするだけが芝居ではない(井上芳雄)

第27回

詳しくはこちら

NIKKEI STYLE

井上芳雄です。7月27日に『ナイツ・テイル-騎士物語-』が開幕しました。堂本光一君との共演で、世界初演のオリジナルミュージカルです。どんな話だろうとお客様も緊張されたかと思いますが、実はコメディーでもあります。物語が進むにつれて、「この男2人はとんでもない勘違い野郎だ。笑っていいんだ」という空気が場内に満ちていくのが感じられて、お客様と一緒に新しい作品を創っているという手応えを得ました。

光一君と僕はいとこ同士という役柄。同じ女性を愛したために、いろんな人を巻き込んで出来事が起こります。稽古を振り返ると、2カ月はあっという間。すごく楽しかった。世界初演のオリジナル作品を、海外のスタッフと一緒にゼロから創るのは、とても大変ではあるけど、クリエイティブの極みともいえる作業でした。

演出家のジョン・ケアードは、物事をきちっと詰めていくタイプではありません。大枠をつくって、その中で自由にやってくださいという感じなので、僕たちも最後まで今回の作品がどういう形になるか見えませんでした。そんななかで、すてきだと思ったのは、何事も限定せずに、お客様の想像の中で世界が広がっていく創り方をしていることです。光一君と僕が初めてタッグを組んで騎士を演じると聞くと、西洋の中世のカッコいい騎士が出てきて、戦ったり、恋をしたりという話が一番想像しやすいのかなと思います。でも、できあがったものは全く違います。

国や時代を特定していないし、音楽は三味線と笛と太鼓という和楽器とオーケストラの融合、衣装も和服や中世の洋服やエキゾチックな要素が入り交じっています。セットもシンプルで大きなものが1個あるだけ。何かを説明するような具象的なものはほとんど出こなくて、最小限の小道具と役者の体ですべてを表現していきます。例えば、森の中で馬に乗って狩りをする場面も、役者が体ひとつで演じています。

演劇の想像力をフルに使って見てもらいたいというところが、すごくジョンらしい。攻めていると思いました。分かりやすく説明するほうが、お客様に喜んでもらえるのかもしれません。ところが、ジョンは「考えてもらうことも大事だし、すぐに分からなくても、何か心に残るものがあればいいんだよ」と。さすがなあ、と思いながら稽古を重ねてきました。

いろんな要素がある作品です。殺陣の場面もたくさんあり、光一君と僕はやたらと戦います。基本はコメディーですが、コントのような笑いではありません。ラブロマンスの一方で、名誉とは何かというシリアスな問題も問いかけています。名誉を重んずるあまり、本当に大切なものが見えなくなるという男性にありがちな話で、それを女性の側から見るとどうなるか。シェイクスピアの原作を、ジョンが現代的な視点で脚本にしています。シェイクスピアの韻文を生かした日本語のセリフも、ひとつひとつが深くて魅力的です。

ダンスミュージカルとジョンは言っていますが、よくあるミュージカルの踊りともちょっと違います。振付師のデヴィッド・パーソンズは、こう踊ってくださいと決めつけるのではなく、まず「みんなの得意な動きは何だ?」と聞いて、それぞれに好きに踊らせてみて、「それ、いいね」とピックアップしながら形にしていくやり方でした。そのコンテンポラリーダンスの振り付けは、目新しく映るのではないでしょうか。

堂本光一君の姿勢に感銘

光一君は『SHOCK』で演出もやっているので、ジョンに対して意見やアイデアを言っていたのが、僕には新鮮でした。たいていは僕の隣で「こうかもね」とか小声で言いながら試していて、本当にそうだと確信したら、ジョンに提言するという感じでした。僕はできる限り、演出家に言われた通りにやってみようというタイプなので、積極的に意見を言う光一君の姿勢に感銘を受け、自分でも絶対こっちがいいなと思えば言ってみたりもしました。本当にみんなで新しいものを創っているという感じで、オリジナルキャストとしてゼロから新作を創るとはこういうことなんだと。刺激的で創造的な日々でした。

だから今回は、不思議な感覚なのですが、自分がどうこうじゃなくて、それよりもっと全体のことが気になります。舞台上で各人の動きがどう見えるかだったり、光一君と僕のバランスだったり。そこが、これまでやってきた芝居と一番違うところです。

僕はもともと、我が我が、というタイプではありませんが、今回はいつもに増してそういう気持ちが起こらない。光一君も我がというタイプではないので、僕のことを気遣ってくれているのがよくわかります。気は合うけど、見た目も得意なことも全然違う2人なので、そこが物語の中で、役としてどう成立するか。そこをすごく考えます。だから、相手がよく見えることが、結果として自分もよく見えることになるのかも、という感覚です。

とにかく、なにもないところから創り上げた新作です。苦労もありましたが、ようやく世に出せて、今はすごくうれしい。幸福感にあふれて演じています。そして毎日、舞台上で楽しみながらお客様に物語を伝えるということを一生懸命やって、その先にまたなにか、今回の作品をやった意味を見いだせたり、変化が起きるといいなと思っています。とどまることなく、チャレンジを続けていきます。

井上芳雄
 1979年7月6日生まれ。福岡県出身。東京藝術大学音楽学部声楽科卒業。大学在学中の2000年に、ミュージカル『エリザベート』の皇太子ルドルフ役でデビュー。以降、ミュージカル、ストレートプレイの舞台を中心に活躍。CD制作、コンサートなどの音楽活動にも取り組む一方、テレビ、映画など映像にも活動の幅を広げている。著書に『ミュージカル俳優という仕事』(日経BP社)。

「井上芳雄 エンタメ通信」は毎月第1、第3土曜に掲載。第28回は8月18日(土)の予定です。

春割ですべての記事が読み放題
有料会員が2カ月無料

有料会員限定
キーワード登録であなたの
重要なニュースを
ハイライト
登録したキーワードに該当する記事が紙面ビューアー上で赤い線に囲まれて表示されている画面例
日経電子版 紙面ビューアー
詳しくはこちら

ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。

セレクション

トレンドウオッチ

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
春割で無料体験するログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
春割で無料体験するログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
春割で無料体験するログイン
図表を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した図表はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
春割で無料体験するログイン

権限不足のため、フォローできません

ニュースレターを登録すると続きが読めます(無料)

ご登録いただいたメールアドレス宛てにニュースレターの配信と日経電子版のキャンペーン情報などをお送りします(登録後の配信解除も可能です)。これらメール配信の目的に限りメールアドレスを利用します。日経IDなどその他のサービスに自動で登録されることはありません。

ご登録ありがとうございました。

入力いただいたメールアドレスにメールを送付しました。メールのリンクをクリックすると記事全文をお読みいただけます。

登録できませんでした。

エラーが発生し、登録できませんでした。

登録できませんでした。

ニュースレターの登録に失敗しました。ご覧頂いている記事は、対象外になっています。

登録済みです。

入力いただきましたメールアドレスは既に登録済みとなっております。ニュースレターの配信をお待ち下さい。

_

_

_