2018/8/8

改正法では売り主が不動産業者に買い主を探すよう依頼する媒介契約を締結するとき、不動産業者が売り主に対してインスペクションの説明をするとともに、事前にインスペクションを実施するかどうかの意思を確認します。しかし、ある大手の不動産業者によると、「売り主からの依頼は極めて少ない」とのことでした。

「仲介手数料が得られない」

売り主が自己負担でインスペクションを実施したうえで売却する形態があまり浸透しないのには、いくつかの理由があると筆者は考えています。

まず、「特に問題なく住んできた家なのだから調べる必要はない」という売り主の気持ちです。そして、それ以上に大きいのが不動産業者の意識です。

筆者が現場で実務に携わる中で感じるのは、不動産業者の中には積極的にインスペクションを推奨していない面が少なからずあることです。事前にインスペクションを実施して建物に問題が見つかり、買い主が取引を諦めてしまうことで「仲介手数料を獲得する機会がなくなってしまう」という不安が不動産業者にはあるのです。

また、一般の消費者同士の売買契約では、物件の引き渡しから3カ月以内に建物などの不具合や欠陥が見つかった場合、売り主は責任を負わなければならないと規定されています。逆に買い主が3カ月以内に建物の欠陥などに気付かなければ買い主にリスクを押し付けることができるので、どちらに転んでも不動産業者が責任を負う話ではなく、仲介手数料の獲得だけを考えるならば、わざわざインスペクションをする必要はないと考えているのかもしれません。

買い主にとっての大きな壁

筆者は本来、インスペクションは買い主が信頼する業者に依頼するのが筋だと考えています。買い主が自分でインスペクターを選んで委託すれば、「不動産を売らんがため、仲介手数料を獲得せんがため」の“お手盛り調査”にならないからです。

改正法では、不動産業者は買い主に対してもインスペクションをする業者のあっせんの可否を事前に示さなければならないと定めているので、買い主がインスペクションを希望する機会は与えられています。

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購入申し込みの直前に媒介契約を