世界に広がるタトゥー文化 日本の温泉、対応に苦慮

さらに大分県内の温泉地では、全身を隠して入浴できる「湯あみ着」を貸すという実験的な取り組みも始まりました。タトゥー客以外にも「宗教上の理由で裸になれない人や、手術跡を見られたくない人のニーズがある」(別府市温泉課)と見込んでいます。

ニッセイ基礎研究所の土堤内昭雄主任研究員は外国人労働者が増え続ける中、タトゥーの受け入れは「スポーツジムなど日常の場でも課題になってくる」と話しています。

山本芳美・都留文科大教授「多様な顧客への配慮と工夫を」

外国人に定着しつつあるタトゥーと日本国内の文化にどう折り合いをつければいいでしょうか。国内外の動向に詳しい文化人類学者の山本芳美・都留文科大教授に聞きました。

――そもそもどうしてタトゥーが世界的に流行しているのでしょうか。

山本芳美・都留文科大教授

「海外でタトゥーが文化的に定着したのには2つの側面がある。1つはファッションとしての流行だ。かつては欧米にも犯罪など負のイメージがあったが、1980年代以降、タトゥーをした歌手や俳優、スポーツ選手などの影響で脚光を浴びるようになった。もう1つはニュージーランドの先住民族マオリに代表されるように、民族固有の文化としてタトゥーを復興させようという動きだ。米国などでは文化として広がりを持つのに合わせ、行政当局がタトゥーを解禁するなど歩調を合わせてきた」

――日本ではなぜ負のイメージが強いのでしょうか。

「江戸時代は町人や火消しの間で『彫り物』が流行となるなど、一定の文化的な広がりがあった。彫師の技術水準も高く、明治時代には英国やロシアの王族が日本で入れ墨をした記録もある。しかし明治政府は欧米列強から野蛮なイメージで見られることを嫌い、東京では1872年に入れ墨を条例で禁止した。入れ墨を軽犯罪とする法律も1948年の日本国憲法の公布まで続く。さらに戦後は負のイメージがヤクザ映画やテレビにより浸透した側面がある。しかし歴史をみても世界をみても、特定のイメージは固定されたものではなく移り変わる」

――外国人観光客は日本の施設の「入れ墨お断り」をどう見ていますか。

「2013年には顔にタトゥーを施したマオリの女性が北海道の入浴施設で入場を断られ、海外でも大々的に報じられた。後で関係者から話を聞いたが、女性を招いたアイヌの人たちも『自分たちの文化を否定された気持ちになった』と話していたそうだ」

――どのように折り合いをつけたらいいでしょう。

「まずは情報提供を充実させるべきだろう。入浴施設などがタトゥーを理由に利用を制限するなら、ウェブサイトなどを通じて多言語できめ細かく説明する必要がある。その意味で、施設の受け入れ状況を一覧できるようなインターネットのサービスが出てきたことは歓迎すべきことだ。次に現場での工夫も求められる。タトゥーをした人に湯あみ着をしてもらう対応について、一部の地方は検討を始めている。こうした対応は性的少数者(LGBT)など裸の身体をさらすことに抵抗のある人への配慮にもつながるだろう」

(高橋元気)

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