レコードをデジタル音源化 最新プレーヤーで簡単に
元ジャズミュージシャンの湯浅英夫さんが手持ちのレコードコレクションを再生しようと新たにプレーヤーを探してみた。最近はUSBポートやBluetooth(ブルートゥース)機能を搭載した製品が増えている。試してみたのが、TEACの「TN-400BT」だ。
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アナログレコードがはやっているためか、家電量販店のオーディオコーナーに行くと、安いものから高級機までたくさんのレコードプレーヤーが並んでいる。
アナログレコード(LP)なら自宅にもある。そのほとんどは、アナログレコードからCDに切り替わるころに二束三文で叩き売りされていた中古レコードを買い集めたものだ。CDの方が音がクリアで場所を取らず、聴くための手間もかからないことは分かっていたが、CDを1枚買うくらいならそのお金で中古LPを10枚買うことを選んでいた。
それだけいろいろな音楽を聴きたかったわけだが、そのツケとして数百枚のLPが今でも自宅の一角を占拠し続けている。長年見て見ぬフリをしてきたが、さすがに邪魔だしもったいないので、聴こうと思ってレコードプレーヤーを引っ張りだしてみたら、いつの間にか故障していたらしく、動かなかった。時の流れを感じてしまう瞬間だ。
そこで新しいプレーヤーを探してみると、最近はUSBポートやBluetooth機能を搭載した面白そうな製品が増えていることに気がついた。こうした多機能な製品で、なるべく音がよさそうなものをと探して目を付けたのが、TEACの「TN-400BT」だ。
USBやBluetoothがあると何がいいのか?
レコードプレーヤーにUSBポートが付いていると、パソコンと接続してアナログレコードの音をデジタル化して保存できる。デジタル化してしまえば、あとはMP3ファイルにしてスマートフォンに入れて聴くのも自由だ。以前ならレコードプレーヤーからUSBオーディオインターフェースに入力し(場合によってはフォノイコライザーも必要だ)、そこからパソコンに接続してデジタル化していたが、そうした機能を内蔵したものと言える。こうしたUSBポートつきの製品はたくさんあり、1万円前後のものもある。
そしてBluetooth機能が付いたレコードプレーヤーなら、アナログレコードの音をBluetooth接続のワイヤレススピーカーやヘッドホンなどで聴ける。かつてFMトランスミッター搭載でFMラジオで音を聴けるレコードプレーヤーがあったが、それに近い。防水仕様のBluetoothスピーカーを使えばレコードを風呂場で聴くこともできるわけだ。
アナログレコードは面倒くさいから面白い
箱から取り出したらまずはセッティングだ。マニュアルの指示に従ってプラッター(レコードを載せて回す円盤)を取り付けてゴムベルトをプーリーにひっかけたり、トーンアームにおもりやヘッドを取り付けて調整したり、針圧を調整したりする。面倒くさい。
セッティングが終わり、レコードを載せ、回転つまみをひねり、針をそっと載せてみると……「ジッ」というノイズに続いて音楽が聴こえてきた。何だかこれまでの苦労が報われたようでちょっと感動してしまう。
そしてA面が終わったら針を上げて戻し、B面にしてからまた針を載せる。するとまた「ジッ」というノイズに続いて音楽が聴こえてくる。すでにCDでも所有しているアルバムなので音楽自体は聴き慣れているのに、こうしてアナログレコードで手間をかけて聴くと、妙に新鮮でありがたい音に聴こえてくるから不思議だ。
TN-400BTを使って久しぶりにアナログレコードを聴きまくってみたが、セッティングに手間がかかるだけでなく、聴くときもいちいちレコードをひっくり返したり針を載せたり上げたりしなくてはならない。
しかしこの音楽を聴くための儀式のような一連の作業が、面倒くさくも面白い。大きく見栄えのするジャケットや、CDとは違う滑らかさと厚みのある音も魅力だが、こうした聴くために必要な作業の面白さも、最近のアナログレコード人気の要因のひとつではないかと思う。
レコードのデジタル化が手軽にできる
レコードプレーヤーとしての機能を確認できたところで、パソコンを接続してレコードの音をデジタル化してみることにした。接続は簡単で、パソコンとUSBケーブルで接続するだけだ。Windows 10搭載パソコンと接続してみると、何のトラブルもなく自動的に認識された。
あとは録音用の波形編集ソフトを起動して録音ボタンを押し、レコードをかけるだけ。録音できたら、必要に応じて波形編集ソフトで曲を切り分けたり、WAV形式やMP3形式に変換して保存すればよい。
やってみると、拍子ぬけするぐらいあっさりとアナログレコードのデジタル化ができてしまった。だいぶ昔、プレーヤーとフォノイコライザーとUSBオーディオインターフェースとパソコンを接続し、今からするとかなりスペックの低いパソコンで動作の重いソフトを使ってデジタル化していたことを思い返すと、隔世の感がある。
なお、接続用のUSBケーブルやデジタル化するための録音ソフトなどは付属しないので、それらは別途そろえる必要がある。波形編集ソフトはフリーソフトのものがある。USBケーブルは片側がType B、もう片側がType A(いわゆる一般的なUSBコネクターの形)のものを使う。
アナログレコード+Bluetoothはオススメ
次にBluetooth機能を試してみることにした。Bluetooth機器は音質を左右する対応コーデックが気になるところだが、TN-400BTはBluetoothスピーカーやヘッドホンなどで広く使われているSBCのほかに、高音質なaptXやAACにも対応する。
ペアリング用のボタンは側面にあり、ペアリングの状態を示すLEDランプは回転つまみに付いている。ディスプレーなどはないので、このLEDランプの光り方で判断するしかないが、特に不便はなかった。
最初に接続したBluetoothスピーカーは、オラソニックの「IA-BT7」だ。Bluetoothスピーカーとしては高級な製品で、aptXにも対応している。ペアリングは特にトラブルなく終わり、レコードをかけてみると、Bluetoothスピーカーとは思えないような重量感のある、ズッシリとした手ごたえのある音が響いてきた。ワイヤレス接続なので、一般的なステレオセットのようにケーブルの長さに縛られたり、床を這うケーブルが目障りになることがないのも良いところだ。
次にバッテリー駆動する防水仕様のBluetoothスピーカーと接続してみた。IA-BT7ほどの音ではないが、こちらはバッテリー駆動なのであちこちに持ち運べるのがメリット。風呂場、台所、トイレ、隣の部屋などあちこちで聴いてみたが、アナログレコードの音を持ち運べるというのが面白い。Bluetoothスピーカーを通じても、アナログレコードの音であることがちゃんと感じられるのは面白い発見だった。
この「レコードプレーヤー+Bluetoothスピーカー」という組み合わせはケーブル不要で使い勝手がよく、アナログレコードを手軽に楽しむには最適だ。おかげでここ最近は、CDや音楽配信サービスよりもアナログレコードを聴く時間の方が長くなってしまった。これからアナログレコードを聴いてみたい人や、押し入れに眠っているアナログレコードをまた聴いてみたいという人には、おすすめのシステムだと思う。
元ジャズミュージシャンのライター。PC、スマホ、ネットサービスなどIT関連を中心に執筆しつつ、たまにウッドベースやエレキベースを弾いている。音楽の守備範囲はジャズから古いソウル、ロック、AOR、MPBまで雑食。ジャズと楽器には少しうるさい。
[日経トレンディネット 2018年7月23日付の記事を再構成]
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