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フライパンは揺するな! ペペロンチーノ勝負レシピ

男のパスタ道(4)

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NIKKEI STYLE

日本経済新聞出版社の新書、日経プレミアシリーズ『男のパスタ道』からの最終回。ペペロンチーノのオイルソースを作るうえで重要だと言われるのが「乳化」だ。ソースにパスタのゆで汁を少し加え、フライパンを激しく揺すって混ぜて、濁った液体にする。すると油のベタつきがおさえられ、ツルツルしたパスタが楽しめるというのである。レシピ完成まであと少し。最後の検討課題「乳化」を考える。

乳化とは、油と水が溶けあっているように見える現象のことだ。ペペロンチーノのオイルソースの場合、揺すられることで油が小さな粒となり、そのまわりに「乳化剤」が付着することでゆで汁の中で安定性を保っている状態、と表現できる。

乳化剤とは、分子の中に水となじみやすい部分(親水基)と油になじみやすい部分(疎水基)を持つ物質のこと。外側に親水基があるので水の中に安定的に存在できるのだが、内側に疎水基があるので油の粒を取り込むことができる。このおかげで水と油に分かれることなく、濁った状態が続く。パスタのゆで汁には、水溶性のタンパク質のアルブミンやリン脂質のリゾレシチンなどがパスタから溶け出しているが、いずれも乳化剤として働く。

日本では「ゆで汁をフライパンに入れて、激しく揺する」という乳化の工程がおいしいペペロンチーノ作りの必須条件のように言われている。実際のところ、どうなのだろう?プロの料理人は皆、その作業をしているのだろうか?

イタリア人シェフのレシピでゆで汁を入れないものがあったので、試してみた。これはこれでおいしいとはいえ、やはりベタつきを感じる。しかし、日本で活躍する有名シェフのレシピを調べてみた結果、ゆで汁を加えて激しく揺する工程があるのものは意外と少なく、16人中3人だけだった。

多くのシェフがゆで汁を加えていたが、フライパンを揺すりはせず、パスタを入れてあおるだけだ。また、ニンニクや唐辛子が焦げないよう油の温度を下げるのが目的で、ゆで汁を入れているシェフも多かった。

しかし、彼らがソースを乳化させていないかというと、そうではないだろう。沸騰によってソース内の水分から気泡がわき、グツグツするなかで乳化はすすむ。またパスタと合わせてフライパンをあおる工程でも、ソースは乳化すると思われる。

実際に自分でも、パスタを混ぜるところまでやってみた。揺すって乳化させたソースと、揺する工程を省いたソースを比べてみたが、目視で区別がつかず、味の違いも見いだせなかった。すなわち、フライパンを激しく揺する必要はないのである。

私がレシピをチェックした有名シェフのなかで、1人だけが、ゆで汁ではなく水をソースに加える人がいた。

たしかに水を使うレシピには利点がある。水を使うならば、パスタをゆではじめる前の段階でソース作りを完了することができる。落ち着いてソース作りに集中できるメリットは大きいと思う。ソースの塩味をゆで汁ではなく、塩そのものでつけるので、適度な味に調節しやすいメリットもある。

ゆで汁ではなく水を使うレシピは、私にとって一つの希望であった。「勝負パスタ」のレシピでは、パスタのコシを最大限引き出すために、ゆで汁1リットルあたり30グラムもの塩を入れている。そんなゆで汁をソースに加えれば、塩辛くなりすぎてしまう。水でおいしいソースが作れるなら、この「しょっぱすぎる問題」が解決できる。

ただ、うまくいかない予感もあった。ゆで汁はアルブミンやリゾレシチンなどの乳化剤を含むが、ただの水には乳化剤がない。このシェフの場合は、パスタからしたたるゆで汁や、パスタ自体から溶け出す成分で、少しは乳化剤がソースに入ることになる。しかし、私のレシピでは、濃い塩分を落とすために、ご丁寧にもパスタをお湯で洗ってしまっている。乳化剤にほとんど期待できない。

ダメかと思いつつも、一縷(いちる)の望みを託して、ゆで汁を入れる方式、水を入れる方式で2種類のペペロンチーノを作り、乳化の様子と味を確かめてみた。

予感は的中した。やはりソースの濁り方が違う。水を使ったほうは透明に近い。実際に味わってみると、水を使ったほうは、なめらかさを感じないばかりか、うま味もコクも少なくどうしてももの足りなく感じる。

この実験をやって、乳化は味にも違いを生むのだ、ということを痛感した。とんこつラーメンの汁が濁っているのは脂と水分が乳化しているからだが、汁を飲むと強いコクを感じるはずだ。乳化した汁はコクをもたらすのである。

ゆで汁には小麦のうま味成分も流出している。ゆで汁と油が乳化したソースを味わうとき、うま味と油のコクが相まって、まずますおいしく感じることだろう。一方、水を使ったほうは、油がザックリと混ざった塩水にすぎない。この差は非常に大きい。

やはり水を使ったソースはダメか?だとすれば、ゆで汁はどこから調達するのか?まず思いついたのは、ゆで汁を薄めて使う方法だ。しかしここまでこだわって「勝負ペペロン」を作ってきたのだから、凡庸な妥協案では満足したくない。

では、どうするか。いろいろ頭をめぐらせる。10~15パーセント程度の濃度のゆで汁を製氷皿に入れて冷凍庫で凍らせ、常備しておいたらどうだろう。いやいや、別鍋に普通の塩分濃度でパスタをゆでて、そのゆで汁をソースに入れたらどうだ?じゃあ、そっちの鍋でゆでたパスタはどうなる?うーん、こっそりあとで食べるとか?そんなのコンロの火口が足りないし、作業がバタバタして美しくない。洗い物もガス代も増えるじゃないか……。自問自答を繰り返した。

水のソースでもペペロンチーノにしてしまえば十分においしいんだし、それでもいいんじゃないか。そうあきらめかけていたのだが、ギリギリのところでまことに簡単な方法を思いついた。ニンニクと唐辛子を油でいためてオイルソースをつくる際、小麦粉を加え全体をよく混ぜ合わせるのだ。早速試すと、オイルソースに心地よいとろみがついてパスタにからみ、すばらしくいい感じ。ここにようやく最高のペペロンチーノのレシピが完成したのである。

では、「勝負ペペロン」のレシピを紹介する。すべての材料は、1人分で、2口のコンロで作るをこと想定している。

【パスタをゆでる材料】

パスタ:ディ・マルテイーノ(カンパニア州ナポリ県グラニャーノ産)のヴェルミチェッリNo.5(直径2.1ミリ)100グラム / 水:水道水1.5リットル / 塩:にがり成分入りの海塩(粟国の塩)45グラム / パスタを洗う水:水道水1リットル

【オイルソースの材料】

油:太白ゴマ油(九鬼産業・純正太白胡麻油)20ミリリットル / ニンニク:スペイン産8グラム / 唐辛子:カラブリア産の小粒のもの1個 / 小麦粉:できればデュラム・セモリナ1グラム / 香りづけ油:エクストラ・ヴァージン・オリーブオイル(ラヴィダ)13ミリリットル

【作り方】

(1)ニンニクは皮をむき、根の硬い部分を切り落とす。串で芽を取り除き、断面がツルツルになるよう、包丁をゆっくり前後に動かしながら5ミリ幅に切る。

(2)パスタをゆでる準備をする。鍋に水と塩を入れ、蓋をして強火にかける。

(3)もう一つのコンロにフライパンを置き、太白ゴマ油と(1)のニンニクを入れ、弱い中火にかける。油が泡立ったら、ときどき菜箸でひっくり返す。ニンニクの箸が色づいてきたら火を止め、コンロからおろす。火からおろした後も、余熱で一部だけが焦げたりしないよう、何度か裏返す。

(4)ニンニクから出てくる泡が小さくなってきたら唐辛子を入れ、菜箸で何度か裏返し、全体がまんべんなく油にからむようにする。ここに小麦粉を入れて、全体をよく混ぜ合わせる。

(5)パスタを洗う水を入れた鍋をコンロに置き、強火にかける。パスタがゆであがるタイミングで必ず沸騰しているようにしたい。早めにわいてしまったら、弱火にするなどして時間調整する。

(6)(5)が沸騰したら、お湯を50ミリリットルすくい取り、(4)のフライパンに入れて軽く混ぜておく。

(7)(2)の鍋が沸騰したらパスタを入れ、10分ゆでる。再沸騰したら火を弱め、パスタ全体がゆで汁につかったら蓋をする。吹きこぼれそうなら、さらに火を弱める。

(8)ニンニクに塩味をつけるため、(7)のゆで汁小さじ1を、フライパンのニンニクの上にふりかける。これでソースの準備は完了。

(9)ボウルなどの深い器に(5)のお湯を入れ、温めておく。

(10)10分たったら、(7)のパスタをトングで(5)の鍋に移し、10秒ほどふり洗いする。

(11)コンロから(7)の鍋をどけて(8)のフライパンをのせ、強火にかけ、(10)の鍋からトングでパスタを移す。30秒ほどフライパンをあおりながらソースをパスタにからめる。

(12)火を止めてから、エクストラ・ヴァージン・オリーブオイルをかけて混ぜる。

(13)(9)のボウルのお湯を捨て、(12)のパスタを盛って完成。

(この項おわり)

土屋 敦 著 『男のパスタ道』(日本経済新聞出版社、2014年)第7章「フライパンは揺するな」から
土屋 敦(つちや あつし)
ライター 
1969年東京都生まれ。慶応大学経済学部卒業。出版社で週刊誌編集ののち寿退社。京都での主夫生活を経て、中米各国に滞在、ホンジュラスで災害支援NGOを立ち上げる。その後佐渡島で半農生活を送りつつ、情報サイト・オールアバウトの「男の料理」ガイドを務め、雑誌等で書評の執筆を開始。現在は山梨に暮らしながら執筆活動を行うほか、小中学生の教育にも携わる。著書に『なんたって豚の角煮』『男のパスタ道』『男のハンバーグ道』『家飲みを極める』などがある

男のパスタ道 (日経プレミアシリーズ)

著者 : 土屋 敦
出版 : 日本経済新聞出版社
価格 : 918円 (税込み)

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