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フライパンは揺するな! ペペロンチーノ勝負レシピ 男のパスタ道(4)

2018/8/5

ペペロンチーノの最重要課題は「乳化」だ=PIXTA

 日本経済新聞出版社の新書、日経プレミアシリーズ『男のパスタ道』からの最終回。ペペロンチーノのオイルソースを作るうえで重要だと言われるのが「乳化」だ。ソースにパスタのゆで汁を少し加え、フライパンを激しく揺すって混ぜて、濁った液体にする。すると油のベタつきがおさえられ、ツルツルしたパスタが楽しめるというのである。レシピ完成まであと少し。最後の検討課題「乳化」を考える。

 乳化とは、油と水が溶けあっているように見える現象のことだ。ペペロンチーノのオイルソースの場合、揺すられることで油が小さな粒となり、そのまわりに「乳化剤」が付着することでゆで汁の中で安定性を保っている状態、と表現できる。

 乳化剤とは、分子の中に水となじみやすい部分(親水基)と油になじみやすい部分(疎水基)を持つ物質のこと。外側に親水基があるので水の中に安定的に存在できるのだが、内側に疎水基があるので油の粒を取り込むことができる。このおかげで水と油に分かれることなく、濁った状態が続く。パスタのゆで汁には、水溶性のタンパク質のアルブミンやリン脂質のリゾレシチンなどがパスタから溶け出しているが、いずれも乳化剤として働く。

 日本では「ゆで汁をフライパンに入れて、激しく揺する」という乳化の工程がおいしいペペロンチーノ作りの必須条件のように言われている。実際のところ、どうなのだろう?プロの料理人は皆、その作業をしているのだろうか?

 イタリア人シェフのレシピでゆで汁を入れないものがあったので、試してみた。これはこれでおいしいとはいえ、やはりベタつきを感じる。しかし、日本で活躍する有名シェフのレシピを調べてみた結果、ゆで汁を加えて激しく揺する工程があるのものは意外と少なく、16人中3人だけだった。

 多くのシェフがゆで汁を加えていたが、フライパンを揺すりはせず、パスタを入れてあおるだけだ。また、ニンニクや唐辛子が焦げないよう油の温度を下げるのが目的で、ゆで汁を入れているシェフも多かった。

 しかし、彼らがソースを乳化させていないかというと、そうではないだろう。沸騰によってソース内の水分から気泡がわき、グツグツするなかで乳化はすすむ。またパスタと合わせてフライパンをあおる工程でも、ソースは乳化すると思われる。

 実際に自分でも、パスタを混ぜるところまでやってみた。揺すって乳化させたソースと、揺する工程を省いたソースを比べてみたが、目視で区別がつかず、味の違いも見いだせなかった。すなわち、フライパンを激しく揺する必要はないのである。

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