預金復活なお遠く 運用金利で見る歴史(平山賢一)東京海上アセットマネジメント執行役員運用本部長

もっとも、1990年代後半から2000年代初めまでの「インフレ率<定期預金金利」はそれまでとは少し中身が違います。従来、インフレ率はプラス圏での推移でしたが、90年代後半からはマイナス圏となりました。金融機関の破綻などによる景気悪化で、物価に下落圧力がかかったからです。日銀が金融緩和を加速させ、定期預金金利はほぼゼロになったものの、インフレ率がマイナス(いわゆるデフレ)なので、結果として実質的な貯蓄資産は増加しました。銀行に預金せずとも、タンス預金にしておけば低下する物価のおかげで、お金の価値は高まったわけです。

異次元緩和以降、傾向に変化

いずれにせよ、歴史的には実に68年間のうち実に42年間が「インフレ率<定期預金金利」であり、この差は平均すると0.7%の乖離(かいり)幅となっています。

図に示した乖離幅は定期預金金利からインフレ率を差し引いたものであり、棒グラフが上方なら定期預金が物価との見合いで有利、逆に下方にいけば不利であったことを示しています。長期的に定期預金は、自動的に資産が増える「最強の投資手法」の一つであったといえるでしょう。

しかしながら、この傾向は最近変化しています。2013年から17年までは5年連続の「インフレ率>定期預金金利」が続いているからです。高インフレだった70年代でさえ、5年連続ということはなかったわけですから、非常に大きな出来事といってもよいでしょう。

背景はいうまでもなく13年から始まった日銀による異次元緩和です。ただでさえ低い金利を一段と下げるとともに、2%のインフレ率目標を掲げ、物価が下落するデフレ状態からの脱却には成功しました。目標はまだ達成できていませんが、物価は17年まで5年間の平均で0.6%まで上昇し、定期預金金利を上回ってしまいました。

金利の上昇にはなお時間

今後も日銀の金融政策動向からは目が離せません。わが国の金融政策は利上げを続ける米国の後じんを拝し、超金融緩和政策からの離脱を図る欧州にも遅れていたわけですが、いずれ一歩を踏み出すときは訪れるでしょう。

世界で金融緩和を進める最後の砦(とりで)が崩れるなら、金融市場のボラティリティー(変動率)が高まる可能性があります。このような環境下では、金融緩和の副作用を是正しても当面、預金金利が上昇する状況に到達することは難しいでしょう。預金金利の「復活」までは時間がかかることになりそうです。

プロのポートフォリオは運用に精通したプロが独自の視点で個人投資家に語りかけるコラムで、原則火曜日掲載です。
平山賢一
東京海上アセットマネジメント執行役員運用本部長。1966年生まれ。横浜市立大学商学部卒業、埼玉大学大学院人文社会科学研究科博士後期課程修了、博士(経済学)。89年大和証券投資信託委託入社、97年東京海上火災保険(現東京海上日動火災保険)入社、2001年に東京海上アセットマネジメント投信(現在の会社)に転籍。29年にわたり内外株式や債券を運用する。
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