日銀が7月30~31日に開いた金融政策決定会合で政策運用の柔軟化を打ち出しました。「きわめて低い長期金利の水準を維持する」としつつも緩和の副作用に配慮し、長期国債は「弾力的に買い入れる」と長期金利の一時的な上振れも容認する考えを示したのです。
正常化への道のりは遠い
しかしながら、短期金利と長期金利の誘導目標はそれぞれ「マイナス0.1%」「0%程度」で据え置くなど、当面の間は現状の金融緩和が続くことに変わりありません。そのため、家計部門が苦しむ「預金のほぼゼロ金利」が短期間で修正されるのは難しいでしょう。「永遠のゼロ」とまで揶揄(やゆ)された超低金利を正常化する道のりはまだ遠いといわざるを得ません。
現在、国内では低金利が長期化しているため、投資マネーは有利な運用機会を求めて様々な金融商品に流れているといわれています。預金に資金を置いておくことはいけないことであるかのように語られることもあります。
しかし、歴史的に見れば、何も考えずに余裕資金を定期預金として金融機関に預けていれば、有利な資金運用が可能だった時期が長かったのです。このことを確認するために、預金者の目線で長期のデータを見てみましょう。
過去数年間の定期預金金利(1年物)の推移は、金融機関などのホームページを見ると、簡単に確認することができますが、長期にわたるデータを得るのは非常に骨が折れます。しかし、国立国会図書館(東京・千代田)に行くと、入手が難しい日銀「経済統計年報」を閲覧でき、図に示した通り1950年代以降の金利水準を確認できます。
実質的に貯蓄資産は増加
1950年から2017年までの68年間を確認すると、興味深いことに70年ごろまでは規制金利の影響で、ほぼ5%程度で推移していたことが分かります。50年代も60年代も定期預金金利は、消費者物価指数の前年比伸び率(インフレ率)を上回っていたため、多くの預金者は高い金利を得ることが可能でした。
インフレ率との兼ね合いで金利を考えることを「実質金利」といいますが、「インフレ率<定期預金金利」なら実質的に貯蓄資産は増加したわけです。
オイルショックが相次いだ70年代はインフレ率が急伸して「インフレ率>定期預金金利」と一時的に逆転しました。が、80年代後半から再び「インフレ率<定期預金金利」となり、この傾向は基本的には2000年代初めまで続きました。