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予備校の教師時代にあったこわーい話

立川談笑

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NIKKEI STYLE

もう30年近く前の話をします。私は予備校勤めの先生で、目の前には教え子の生徒たちが20人ほど。受験シーズンが終わった「打ち上げ」的な食事会でのことでした。

「みんなゴメン。聞いてくれるかな。先生な、今月限りで、予備校の仕事を辞めることにしたんだ」

「うっそ!辞めちゃうの?先生これからどうするの?」

「うん、落語家になるんだ」

「ラクゴカ……?」

振り返って思うに、その頃は「落語」という娯楽の認知度が地をはう状態だったのでしょう。耳慣れない「ラクゴカ」という言葉に、全員がキョトンとして理解できません。しばし沈黙があって、国語が一番得意な松井さんが恐る恐る口を開きました。

「それって、ひょっとして……『おわらい』?」

「……んん、なんというか。そう!そんなもんだな。あはは」

体育会系のバイタリティー

若年層にとって落語の認知度がそれほど低かった。そんな時代です。それはともかく、その予備校はおもしろかった。ちょっと珍しい体育系専門の予備校でした。通ってくる高校生たちは運動が得意だけど、スポーツ推薦で進学するほどではない。きっと今も同質の予備校はあるはずです。一般の予備校と違って、教室での座学のほかに実技もある。たとえば、長距離走を終えて着替えもそこそこに、汗をぬぐいつつ生徒たちは国語の授業に臨む、みたいな。

私は国語の担当でしたが、クラスの雰囲気として、運動部らしい独特のあっけらかんとした粗暴さがありました。授業中、指された誰かが問題を間違えると、すぐに教室の全員がその子に向かって「バーカ!バーカ!バーカ!」って。わはは。おまえたち、なんなんだ、と。

そんな彼らが目指す学部の受験問題では、国語なら当時は小説や論説文といった「長文読解」以外に、「漢字」「故事・ことわざ」「文学史」が必ずあって、そこが重要な得点源でした。ですから読解なんかはそっちのけで、来る日も来る日も漢字の書き取り・故事成語・四字熟語・文学史……。みんな毎日頑張ってました。でも、やっぱり元気なんです。

ある時の校内模擬試験での問題が、こちら。

「芥川龍之介は、○○○派である」

ここは「新思潮」派と解答してほしいところです。

ある生徒の答え、「旧田中」派だって。わはははは。分かってボケてんだろう!いやあ、あれこれとずいぶん笑わせてもらいました。

親御さんを交えた三者面談も、当然体育系対応です。

「うーむ。現状の志望校から考えると、彼の場合は国語の漢字書き取りで3点上乗せするか、反復横跳びを2回増やすか、ですね……」っていう。独特の世界で面白いですよね。

 「お化けフォーク」で有名な福岡ソフトバンクホークスの千賀滉大投手は、リーグ戦のみならず日本代表のピッチャーとしても大活躍する逸材です。そんな彼はドラフト1位どころか育成枠から見事にはい上がった選手なのです。彼の姿を見ると、かつてのスポーツ予備校での彼らの顔が重なります。一人残らずバイタリティーがすさまじくあったから、今ごろは立派な社会人としてバリバリ活躍してるんだろうなあ。

突然かかってきた一本の電話

うって変わって、今度は別の予備校での話です。こちらは、元・医歯薬系専門の予備校でした。

何といっても驚いたのは、突然かかってきた一本の電話でした。当時、私は教務主任。予備校の教務主任だった落語家なんて私より他にいませんよ。予備校全体を預かる立場として、電話を取りました。

相手が語ったのは「よろしいですか。A大学医学部、B大学医学部、C大学医学部、D大学歯学部、E大学薬学部。これらのいずれかを来年受験する生徒さんがもしもいらっしゃったら、その親御さんの連絡先をぜひ私に教えてください。教えていただくだけで、あなたに報酬として100万円をお支払いします」と。

なんじゃこりゃあー!!!受験ブローカーじゃないかー!しかも、裏口あっせんの――! そりゃもちろん100万円は欲しいし、わざと2校とか3校とか受けさせたり、なんなら100校とか受けさせたりしたいかもしれないけど……。なーんて書いてはいますがね。本当のところ、「うわっ、噂には聞いたけど現実に存在したのか!」と背筋がゾッとしてその電話の上で即座にお断りしました。

ただし、電話のやりとりは事実ですが、先方が主張していた話の真偽は不明です。誤解のなきよう。

繰り返しますが、これらはすべて30年前の昔話です。話を続けます。

そんな立場ですから、その当時はそんな裏口入学にまつわる話がまことしやかにいくらでも耳に入ってきました。

「教員側でなく事務方にツテがあって、いくらかならばどうにかげたをはかせることはできます」とか。

「正規の合格者は実はほんのちょっぴりで、補欠がたっぷり。たくさんいる補欠合格者の中の合否の順位は学部への寄付金で左右されるんですって」だとか。

「とは言っても裏金を使ったのを知ってるのは親だけで、合格した本人は何にも知らないままなのよぉ」だとか。

果ては「成績不振の医学部生を相手にした医師国家試験専門の予備校があって、なぜかしらかなり確度の高い予想問題を用意できて……」。

あくまでも「噂は噂」と思いたくはあるのですが、今回の汚職がらみの事件を知って「やっぱり、出たかあ」と。ううむ。なんとも苦い思いで見上げる夏の空であります。

立川談笑
 1965年、東京都江東区で生まれる。高校時代は柔道で体を鍛え、早大法学部時代は六法全書で知識を蓄える。93年に立川談志に入門。立川談生を名乗る。96年に二ツ目昇進、2003年に談笑に改名、05年に真打ち昇進。近年は談志門下の四天王の一人に数えられる。古典落語をもとにブラックジョークを交えた改作に定評があり、十八番は「居酒屋」を改作した「イラサリマケー」など。

これまでの記事は、立川談笑、らくご「虎の穴」からご覧下さい。

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