丸井など続々…若者を投資に呼ぶ新風に期待(渋沢健)コモンズ投信会長

2018/8/6

カリスマの直言

丸井グループは若者層の顧客基盤を生かし、証券業に参入する(写真は記者会見する青井社長、5月10日、東京都千代田区)
丸井グループは若者層の顧客基盤を生かし、証券業に参入する(写真は記者会見する青井社長、5月10日、東京都千代田区)
「異業種が参入することで業界に新風を吹き込むことを期待したい」

小売業やIT(情報技術)系など異業種による証券・資産運用業への進出の動きが相次いでいる。本業で培った若者層の顧客基盤を生かし、将来に備えた運用ニーズを取り組む戦略だ。顧客が中高年層に偏っていた業界に新風を吹き込むことを期待したい。

新規参入は通信大手のKDDI、無料対話アプリのLINE、小売業の丸井グループが表明している。筆者は先日、丸井グループが東京証券取引所のフロアで開いた記者向けの説明会に出席した。

若年層の長期コツコツ投資を支援

丸井グループは9月からの事業開始をめざし、子会社として積み立て投資専門の証券会社を設立した。新会社はその名も「tsumiki証券」(予定)で、若年層による長期のコツコツ投資を支援する。

若者向けファッションの専門店というイメージが強い丸井であるが、実は割賦販売からクレジットカードに事業展開したパイオニアである。小売業から不動産事業、金融業へと進化している。

同社の強みは何といっても顧客の若さだ。丸井のクレジットカード「エポスカード」の会員は657万人(3月末時点)で、約半数が20~30歳代だ。しかも、7割が女性という。将来の日本社会を担う世代と日々向き合っている会社といえる。残念ながら、同じような顧客層を抱える証券会社は存在しない。

事業参入にあたり、収入や世代を問わず全ての人が金融サービスを享受できるようにする「ファイナンシャルインクルージョン」(金融包摂)という考え方を重視した。私の持論も投資は特殊な人の特殊な行為ではなく、普通の人の普通の行為、というものだ。

tsumiki証券のサービスがまさにそうで、顧客はエポスカードを使い、普段のお買い物と同じ感覚で積み立て型の少額投資非課税制度(つみたてNISA)の対象となる投資信託を毎月購入できる。つみたてNISAは制度発足以来、半年が経過したが、若年層や女性の利用が多いことが分かっており、追い風となろう。

ちなみにクレジット払いで投信を購入できるのは日本で初めてという。カードの使用によってポイントがたまるというのもうれしい。積立金額や継続年数に応じてポイント率をアップすることもtsumiki証券は検討している。

次のページ
普通の人が足を運べる空間づくり