黒木瞳 輝きの秘訣「人生はどの季節も素晴らしい」
恋する映画(5)『インクレディブル・ファミリー』声優インタビュー
日本より一足先に公開されたアメリカで、大旋風を巻き起こしている話題作『インクレディブル・ファミリー』。アニメーション部門で全米歴代興行収入1位の記録を樹立し、多くの観客を魅力している。そんななか、『Mr.インクレディブル』(2004年)に引き続き、本作でも日本版声優を務めているのが女優の黒木瞳さん。
前作同様、イラスティガールの名で呼ばれているヒーローであり、スーパーパワーを持つ5人家族の母親でもあるヘレンの声を演じている。黒木さんの艶っぽく強さのある声はまさにハマり役だが、本作を通じて感じた家族への思いや女性として輝き続ける秘訣について語ってもらった。
その瞬間に起きることを感じながら魂を入れていった
――今回、ふたたび声優を務めることになりましたが、同じ役を久しぶりに演じてみていかがでしたか?
黒木瞳さん(以下、黒木):最新作が出るという情報を聞いたときには、また演じられるとすごくうれしく思いました。実際に吹き替えてみると、自分のなかにイラスティガールの血が入っているのかと思うほど何の違和感もなくできたくらい。だから、何かを意識することもないまま、キャラクターに魂を入れていったという感じでしたね。彼女はこんな思いを持って戦っているんだということをその瞬間瞬間で感じながら、新鮮な気持ちで声を吹き込むことができたと思います。
――前作でのヘレンは、家で夫を支える妻でしたが、今回は夫に支えられながら外で働く妻として描かれています。本作のストーリーについてはどのように感じましたか?
黒木:この作品に限らず、前作を上回るというのは難しいことだと思うんですけど、「こう来たか!」というのが最初の印象。『Mr.インクレディブル』でも家族や夫婦の絆というのが印象に残っていましたが、今回はその部分にさらにフィーチャーしているのがおもしろいと思いましたし、家族はひとつのパワー集団なんだということを監督は描きたかったんだろうなと感じました。
黒木さんにとって家族の存在とは?
――家庭を持ちながら働く母親の姿というのは、まさに現代の母親像を代表するようなキャラクターで、女性にとっては見どころですが、共感するところもありましたか?
黒木:イラスティガールにとって「働く」というのは、「悪を倒す」という意味なのでみなさんとは違うと思いますけど(笑)、女性が外に働きに出て、夫が子どもたちの面倒を見たり、家のことをやってくれたりする姿というのは、現代のリアリティーがちりばめられていると思いました。
黒木:実際、私の娘が赤ちゃんだったときには、夫に預けて私が撮影に出ていくというようなこともあったんです。劇中、息子のダッシュが戦いの真っただ中にいるヘレンに電話してくるシーンがありましたが、私のときも撮影中に夫が何度も電話してきて、「何でいまそんなこと言うの?」みたいなこともありましたね(笑)。なので、私もすごく真実味を持って演じることができました。
――そういう意味では、ご自身の経験がフラッシュバックするようなこともあったのですか?
黒木:昔のことだけじゃなくて、実はいまも仕事中に夫や娘がささいなことで電話してくることがあるので、あまり変わらないですね(笑)。でも、女性って覚悟を持って外で働いていても、やっぱりどこかで家族のことが頭から離れないというのは、みなさんも同じじゃないかなと思います。
――では、仕事を続けていくうえで、家族の支えがあるからこそがんばれる部分もありますか?
黒木:支えといっても、目に見えるものではなくて、気持ちの部分で支えてもらっているとは感じます。たとえば、自分が落ち込んだり、悲しいことやつらいことがあったりしたとき、家族は全部聞いてくれるんですよね。だから、きっとそれが支えであり、理解し合っているということなんだと思います。
――黒木さんは、今回は声優として演じられましたが、これまでも映画やテレビ、舞台、執筆業、監督業と幅広い創作活動に取り組まれています。その原動力となっているものは何ですか?
黒木:自分の携わる作品を通して、まずはみなさんに楽しんでいただいて、活力や希望を感じていただきたいというのが私にとっては一番の源だと思います。
それに、私がやっていることはどれもエンターテインメントの一環ですし、たとえ手段は違っていたとしても、すべてはつながっているんですよ。この作品でも同じことですが、特に今回は日本中すべての人が楽しめる映画になっているので、ぜひ愛する人とご覧いただきたいですね。
人生の素晴らしい時期であるという意識を持つ
――まったく年齢を感じさせない黒木さんのように年を重ねていきたいと憧れている女性読者は多いですが、30代~40代のうちにしておいたほうがいいことや心掛けがあれば教えてください。
黒木:例えば30代になったとき「うわー、もう30代だ」とおっしゃる方は多いですし、実際私もそういうふうに思っていました。でも、いま思うと、当たり前なんですけど、まだまだ若かったんですよね(笑)。
35歳くらいのときに、「この先仕事がなくなっちゃったらどうしよう」と不安に感じたこともありましたけど、30代なんて若いから何でもできるし、40代もおもしろいことがたくさんあるんですよ。もちろん自分のことを過信してはいけないとは思いますが、その世代は人生のなかでも素晴らしい時期なんだということをもっと意識してほしいと思います。
だから、それを自分から諦めたり、適当に放り出したりするのはもったいない。果物でいうと、「まさに買い時」という感じじゃないでしょうか(笑)。
――いくつになっても変わらない美貌はどのようにして保たれているのか、美容面で欠かさずにしていることはありますか?
黒木:保つというのはなかなか難しいですよね(笑)。私は特に何かをしているわけではないのですが、肌を乾燥させないようには気を付けています。あと、寝るときは必ずマフラーを巻くとか、朝は必ず白湯を飲むとか、そういうことは毎日続けるようにしていますが、マッサージをしたり、エステに行ったりするというのはなかなかできないですね。ほかには、好きでタップやラジオ体操も続けていますが、そのくらいかなと思います。
ストレスはただ解消するよりも何が原因かを知ることが大事
――それだけ忙しい生活のなかで、どのようにストレス解消をしていますか?
黒木:私は性格的にためられないタイプなので、その日のうちに家族にすべて話して忘れます。だから、聞いてくれる相手は大変かもしれないですね(笑)。ただ、一番大切なことは、何がストレスなのかを知ること。ストレスなんてないという人でも、ストレスはあると思うんです。
なので、まずは、自分にとってのストレスの原因は何かを突き止める。時間なのか、家族なのか、恋人なのか、仕事なのか、何かというのを知ることが重要なんです。そうすると、自分はこれに負荷がかかっていたんだということがわかり、対処することができるんですよ。
――ちなみに、今年の夏休みはどのように過ごされるご予定ですか?
黒木:少し前にハワイには行きましたが、今年の夏は仕事オンリーになりそうですね(笑)。ハワイでもほとんど毎日セリフを覚えていたりしていましたけど、それ以外はひとりでお買い物に行ったり、お料理をしたりしていたので、そういう時間もときには必要かなとは思います。
――それでは最後に、仕事と家庭の両立で悩んでいる女性に向けてアドバイスがあればお願いします。
黒木:それは、がんばらないことですね(笑)。というのも、完璧にやろうと思ったら逆にひとつのことさえできなくなってしまうこともあるので、まずはできることをやればいいんです。そして、いまできることに優先順位をつけて、何を一番にやればいいかということを考えればいいと思いますよ。
あとは、その日の朝をどういうふうに迎えるか。それで一日が決まりますし、一日の積み重ねが一年になり、30代、40代へと続いていくわけですから、一日を気持ちよく始める意識を持つというのも大切なことだと思います。
監督・脚本:ブラッド・バード
製作:ジョン・ウォーカー ニコル・パラディス・グリンドル
製作総指揮:ジョン・ラセター
オリジナルスコア:マイケル・ジアッキーノ
キャスト:クレイグ・T・ネルソン/三浦友和(ボブ)、ホリー・ハンター/黒木瞳(ヘレン)、サラ・ヴォーウェル/綾瀬はるか(ヴァイオレット)、ハック・ミルナー(ダッシュ)、サミュエル・L・ジャクソン(フロゾン)ほか
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
8月1日(水)より全国公開
(C)2018 Disney/Pixar. All Rights Reserved.
【ストーリー】
彼らは、どこにでもいるフツーの家族……ではない! パパもママも3人の子供も、それぞれ異なるスーパーパワーを持ったヒーロー家族なのだ! 超人的なパワーをもつパパ、ボブ、伸縮自在なゴム人間のママ、ヘレン、超高速移動できる長男ダッシュと、鉄壁バリアで防御できる長女ヴァイのオレット。さらに、スーパーパワーに目覚めたばかりの赤ちゃんジャック・ジャック。その潜在能力は、未知数。家事も育児も世界の危機も、驚異のスキルと家族の絆で乗り越える、この夏最高の一家団結アドベンチャーが誕生した!
(ライター 志村昌美、写真 厚地健太郎)
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