日経トレンディ

保険適用の条件は?

ICTの発達とともにさまざまな可能性が見込めるオンライン診療だが、今回のガイドラインではあくまで対面診療の補完という位置づけだ。「かかりつけ医」推進の流れもあり、健康保険を適用するには、それ以前にも6カ月間治療を受けていること、3カ月に1回は対面診療を組み合わせることなどの条件が付いた。

オンライン診療が安易に利用されるリスクを避けるためだが、一方で「今回の患者要件はなかなか厳しいという声もある。月1回の通院を6カ月継続していることなどが条件となっているが、1回でも担当医師が変わったり、月末の通院が翌月に1日でもずれると認められない」(多田氏)。運用ルールは必要だが、もう少し柔軟に運用できる余地がないと、せっかくの技術も活用されにくい。

診療報酬が新設され、医療者が安心して取り組める素地ができた半面、診療範囲も限定された。「アレルギー性鼻炎や皮膚炎などが保険適用外となったため、残念がる医師や患者の話を聞く」(阿部氏)。

他にもうつ病や更年期症状といったオンライン診療の恩恵が見込まれた疾患も対象から外れている。「今回の改定は現場の実態があまり反映されていない印象だ。これから多くの医療機関でさらに事例を積み上げていくことが必要。患者と医療者の双方から、どういう状態ならオンライン診療の適応があるかという情報を発信していけば、もっと使いやすい制度になっていくだろう」(黒木氏)。

厚生労働省の調査によると、遠隔診療が進んだ米国では遠隔医療を提供するネットワークが200ほどあり、3500カ所の施設を通して遠隔診療サービスが提供されている(17年12月)。運用についても学会を中心にさまざまな実務ガイドラインや倫理規範が作成されている。日本でも今年4月には保険診療でオンライン診療を活用している医師が発起人となり、オンライン診療研究会が発足した。まずは2年後、20年の診療報酬改定を見据えて、エビデンスを積み重ねていくことが期待される。

(ライター 竹下順子、カメラマン 高山透)

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