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西川ヘレンさん 壮絶な「多重介護」でも笑顔を忘れず

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NIKKEI STYLE

日経Gooday(グッデイ)

親や配偶者など、複数の人を同時に介護する「多重介護」。お笑いタレント・西川きよしさんの妻、西川ヘレンさんはきよしさんの両親、実母と40年以上にわたって同居し、家事や仕事をしながら自宅で多重介護を経験した。2018年6月に日本精神神経学会学術総会の市民公開講座で、介護に携わった暮らしぶりを披露。介護者の思いやりある対応は、介護を受ける人の心を穏やかにすると話した。

役割を持ってもらうと積極的になる

西川家は多い時は4世代が同居し、弟子も暮らす大所帯だった。ヘレンさんはきよしさんと結婚して2017年に50年を迎えたが、結婚後10年もたたないうちに、義父が胃潰瘍で入退院を繰り返すようになった。

「新聞を隅々まで読み、テレビのニュースを見ては意見を言う義父でしたが、少しずつ異変を感じるようになりました。テレビを見ず、新聞も読まない。達筆だったのにミミズがはうような字を書き、『眠れない』と訴えるように。病院に行ってもうつと言われるだけ。家の外にも、部屋の外にも出ることを拒否するようになりました」とヘレンさんは語る。

だんだんと食が進まないようになり、体力が衰えていく義父。ヘレンさんは何とか外に連れ出そうと、満開の桜を見て花見に誘うことを思いつく。

ヘレン:「お父さん、満開の桜を見に行きませんか」

義父:「桜はテレビでなんぼでも見られるから行かへん」

ヘレン:「お父さんに一緒に付いてきてもらったら、頼りになるんです」

義父:「こんなワシでも頼りになるんか!」

こんなやりとりをする中で、「付き添うために出かける」という役割を持った義父は、重い腰を上げた。

「ものは言いようだと思いました。私のエスコートだから、と背広を着られ、義母と実母も一緒に4人で車に乗り、桜の名所に出かけました。義父はしばらくぶりにいい笑顔を見せてくれて。桜の美しさをとても喜んでくれました」(ヘレンさん)

トイレでの介助は思いやりのある声かけを

花見を楽しんだ4人は、お茶を飲むためにホテルへ。家ではヘレンさんお手製の介護食を、うまくのみ込めずに詰まらせることがあった義父だが、注文した大好物のミックスジュースは一気に飲み干した。「おいしかった!」と大満足。しかし、その後、すぐに尿意をもよおした。

ヘレンさんは義父の側にいるときは、トイレに同行していた。このときに欠かさなかったのが、思いやりのある声かけだ。

「『お手伝いしてよろしい?』とまず聞きます。そしてベルトを外すとき、ズボンのチャックを下ろすときも、一つひとつ声をかけます。勢いよく飲まれたジュースがそのまま出たのか、オムツはヌクヌクのボトボト。『たくさん出ていますわ。早く替えましょうね』と言って、常に持ち歩いているウェットティッシュを出し、きれいになるようにと心を込めてヒップを拭かせてもらっていました」(ヘレンさん)

ソフトな接し方に義父は、「優しくしてくれてありがとう」と言ってくれたそうだ。

付き添うのはトイレだけではなかった。自宅では浴室に一緒に入り、入浴の世話もした。ヘレンさんは水着で入り、義父の背中や頭を洗うのだ。入浴後は同居している子どもたちが血圧を測ったり、必要な水分を飲ませたりして家族みんなで支え合った。

大腿骨の骨折を機に実母が寝たきりに

西川家でともに暮らした義父、義母、実母にはそれぞれに持病があった。朝のあいさつが終わるやいなや「頭が痛い」「膝に水がたまった」などの訴えが始まる。ヘレンさんは「たとえ忙しくても、その訴えに耳を傾けるようにしました。話を聞くことで、症状は半分以上、治まると思えたんです」と語る。

ある日のこと、実母が夜中にトイレで転倒し、大腿骨を骨折。それを機に寝たきりになってしまった。

「もともと母は、森光子さんが取り組まれていたように、転倒予防のためスクワットをしていたんです。けれども、年を重ねると畳の縁にでもこけてしまいます。床にはモノを置かないように、と家族には言っていました。ところが朝、なかなか起きてこないので部屋に行くと、母から夜中に転倒したことを聞かされて。すぐに病院に行きました」(ヘレンさん)

実母は自力でトイレに行けなくなり、オムツが必要になった。その後のある夜、自分の力でベッドから降りようとしたのか転げ落ちてしまう。

「『今までこけないように気を付けてきたのに、何でこんなことに…』と泣いていました。その頃から、母はだんだんと私の知る母ではない人になっていきました」とヘレンさん。突然大声を出したり、自分の周りにあるものをたたいたりし始めたのだ。そして、お茶缶と箸を要求し、缶の中にその箸を入れ、カンカンと音を立てるなどの行動をとるようになった。

「きっと家族に何か言いたいのだろう」、とそのたびに「大丈夫?」と声をかけて見守り続けた。

粗相をしてもにっこり笑顔で

ヘレンさんが実母の世話に追われている間、義父は「自分のことで声をかけてはいけない」と思っていたようだ。手すりを伝い、一人でトイレへ。ところが、ズボンを下ろしたとたん、間に合わず、軟らかな便を床に落としてしまった。

「義父はどうしていいのか分からず、パニックになったようでした。便で汚れたその手を洗い、『お父さん、すみません』とニコッと笑いかけました。私に叱られるのではないか、と心配そうでしたから。『大丈夫。便が出てよかったです』と伝えると、笑顔が戻りました」(ヘレンさん)

その後、3人の高齢の親の体はだんだん悪くなり、15年ほど前に実母と義父が、2年前には義母が他界した。介護をしながら仕事、家事もこなしてきたヘレンさん。寝る時間が取れず、更年期障害に悩まされたり、心療内科にかかったりしたこともあったが、いつも愛情を込めて世話をしてきた。

「自宅で介護をしている人は、大勢いらっしゃると思います。今まで笑わなくても、ニコッと笑ったり、『あなた誰?』と言っていたのに、自分を理解してくれたりする日もあります。どんなときも相手を一人の人間として、温かく見守ることが大事だと思うのです」とヘレンさん。

誰もがヘレンさんのようにできるわけではないだろうが、介護者の気の持ちようや接し方が、ケアされる人の心に影響することを心にとどめておきたい。

(ライター 福島恵美、カメラマン 水野浩志)

西川ヘレンさん
 1946年京都市生まれ。お笑いタレント・西川きよしさんの妻。二男一女の母として家族を支え、実母・義父母と40年以上同居し多重介護を経験。テレビ番組の出演や更年期障害を抱えながら、介護に奮闘した。家族や介護をテーマに講演活動も行っている。主な著書に『西川ヘレンのこれ食べてみて』(毎日新聞出版)、『西川ヘレン&かの子のおいしい和風レシピ』(主婦と生活社)、『泣いて笑ってみおくって 大家族・西川家の多重介護』(小学館文庫)などがある。

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