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『クロサギ』夏原武さんに聞く 不動産トラブルのなぜ

日経マネー

2018/8/2

「不動産を買う際は納得いかない限り、決断しないこと」とアドバイスする夏原武さん
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女性専用シェアハウス「かぼちゃの馬車」への投資をめぐる問題、アパート建設後にオーナーから一括で借り上げて転貸するサブリース(転貸借)がらみの訴訟など、不動産に関わる事件が世間を騒がせている。そこで、詐欺師を標的とする詐欺師が主人公の漫画『クロサギ』の原案者、ヤミ金融の世界を取り上げた漫画『闇金ウシジマくん』の取材協力者として知られ、現在、不動産業界の裏側を描く『正直不動産』の原案を手掛ける夏原武さんに不動産トラブルについてお聞きした。

◇  ◇  ◇

──夏原さんは何年も不動産の取材をされていますが、なぜこういった事件が続くのでしょうか。

理由は幾つかあります。一つは不動産業界には黒(違法)と白(合法)の間にグレーな部分が多く存在すること。例えば不動産の営業マンは告知義務違反になることを除けば、言うと不利になることは言いません。「聞かれなかったから」で通す癖がある。それは違法ではないけれど、正直なビジネスとも言えない。またこの電子化時代にいまだに紙の業界ですから、一部の情報を隠してコピーしたものを客に渡すなんてことも茶飯事です。

──漫画『正直不動産』にも「この業界は千三つ」と書かれていました。

千のうち真実は三つしかない、という意味ですが、その箇所にはクレームは来ませんでしたね。良心的な業者さんと会っても「確かに!」なんて言われて(笑)。

■「両手」は業界の基本

夏原武さんが原案を手掛ける『正直不動産』(小学館「ビッグコミック」) 千三つといわれる海千山千の不動産業界で、嘘がうまくつけない永瀬は正直営業で善戦するが、成績は低下する一方で……。

そして、一つの案件でなるべく多くの手数料を取った営業マンが評価されます。この業界では囲い込みによる「両手」が基本です。安く買いたい人と高く売りたい人の両方を1社が手掛けることで、通常3%の仲介手数料が倍の6%取れる。これは明らかに利益相反になりますから弁護士なら双方代理で違法行為ですが、不動産の世界では「基本」なんです。

──他にも店子に嫌がらせをして追い出すストーカー大家など、様々な問題行為が出てきます。

ほとんどが取材の中で見聞きした実例ですが、もっとひどい話もありますよ。不動産は取材するほどに問題の根が深く、大変だと感じます。もちろん正直な良い業者もいっぱいいるんですが、全体としては数が少ないですね。監督官庁のグリップも効いていない。

──そんな業界の中で、主人公の永瀬はある石碑を壊した祟(たた)りで嘘がうまくつけなくなっているので……。

営業成績は下がり、クビ寸前で、もう大変(笑)。祟りというのはこの漫画唯一の遊びの部分です。ただ、客に嘘をつかない正直なやり方でも営業はできるし、必ず利益は出るはずなんです。若い世代を中心に、そういったまっとうな不動産業者も増えてきています。なので連載開始以降、業界からは「よく書いてくれた」という声が多く、取材を申し込んでも断られることはほとんどありません。

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