2018/8/2

記事

──先ほどの不動産仲介手数料の3%、あれはただの上限にすぎないと漫画で知って驚きました。

意外に知られていませんが、あれはこれ以上取ると違法だという法定上限値です。なので合意さえあれば2%でもいい。逆に業者は何とか3%の外で手数料を取ろうと、調査費やコンサルタント費といった名目を考え出す。先日会ったある社長は「いっそ上限を撤廃すればいい」と話していました。そうすれば安い方がいい人、10%払っても優秀な業者がいい人が出てきて、価格競争が始まり、正常化につながる。とにかく業界が今のままだと、例えば将来「アマゾン不動産」が上陸してきた時に、みんな食われてしまうでしょう。そうなってからでは遅いんです。

──我々個人が不動産を買う際の注意点としては。

住宅購入は普通の人が何千万円もの借金を一瞬で背負う大変なこと。なので少しでも安く、得にと考えてしまいがちですが、そこに落とし穴ができる。まずは損得でなくしっかりと勉強してから不動産屋に行くことです。業者は、勉強してきた客には「面倒臭いな」と思いつつもちゃんと対応しますから、痛い目には遭わない。不動産業界のことを書いた薄い本1冊でもいいので読んでから行くこと。もちろんこの漫画でもいい(笑)。

納得できなければ決めない

また「瑕疵担保(かしたんぽ)責任」「専属専任媒介契約」など専門用語も難解ですが、分からなければ、その場でとことん聞く。客は素人なんですから、ちゃんと説明してくれない業者から買う必要はありません。業者は嘘電話などあの手この手で契約を急がせますが、納得いかない限り決断はしないこと。コピーをもらって帰って司法書士など専門家に相談するとか、ネットを活用して自分でも調べることです。ローンの頭金は最大限用意し、返済も、当初はつらいでしょうが元金均等の方が安全だと思います。

──不動産投資はどう考えれば?

ワンルームマンション投資やサブリース契約については、業者は「誰でも簡単に儲かる」と言うんですが、僕は一歩引いて考えるべきだと思ってます。不動産は第一に人がそこに住んで生活していく場であり、お金を生む場ではない。また30年間も家賃を保証するというけれど、契約書をよくよく読めばそれが絶対確実でないのは分かるはず。長生き時代だというので老後の安心のためについそういう言葉に目が行くんでしょうが、「そんなに儲かるのなら業者が自分で運営すればいい」と考えれば、冷静になれるはず。最近は空き家問題で「負動産」ともいうように、不動産はいずれ子供たちの負担になっていくことも考えたいですね。

──夏原さんの“ご専門”の詐欺師の世界は最近どうですか?

相変わらず振り込め詐欺など特殊詐欺が多いですね。ただ詐欺は社会事象に合わせて起きるので、最近は民泊関連の事件が増えています。今後は東京五輪関連で入場券詐欺、記念硬貨の偽造などが出てきそうなので要注意です。

夏原武さん
 1959年、千葉県生まれ。大学中退後、ビデオ専門雑誌編集者を経て、裏社会や詐欺などについて取材をするフリーのルポライターに。小学館漫画賞を受賞しテレビドラマ化・映画化された代表作『クロサギ』の他、『伝説の頭 翔』『逃亡弁護士 成田誠』などの原案も手掛ける。著書に『バブル』『現代詐欺師シノギの手口』など。

(日経マネー 大口克人)

[日経マネー2018年9月号の記事を再構成]

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日経マネー 2018年 9 月号

著者 : 日経マネー編集部
出版 : 日経BP社
価格 : 730円 (税込み)