西村さんがリクルートキャリアに入社したのは、もともと「日本の“お父さん”の働き方を変えたい」と思っていたからだ。19歳で父親になった西村さんは人一倍、理想の父親とは何かを考え、大学時代には子育てする男性を支援するNPO法人「ファザーリング・ジャパン」の活動に参加。父親も育児と仕事を楽しく両立すべきだという思いが根っこにある。

まだ課題の多い副業

本業と副業を掛け合わせる「スパイラルキャリア(複業)」を提唱

副業はブームになりつつあり、西村さんのもとには企業や個人からの相談がひっきりなしだ。しかし、副業のやり方について西村さんはいくつか警鐘を鳴らしている。

まず、いきなりもうけ主義に走るのはご法度だ。「サラリーマンしかやっていなかった人は自分を商品化するという経験がない。その段階から月10万円稼げるわけではない。もうけ主義に走ると、昔のネズミ講みたいに友達をなくしたり、悪徳商法にだまされたりして後悔する。残念ながら実際にそういう例はたくさんあります」。まずは信用を蓄積していくことが大事で、自分の市場価値が上がるまで地道に努力していくしかない。

また、副業禁止の会社ではなくても、会社や同僚に黙って副業をしている人が多いのだという。「社会人向け大学院に通っていることでさえ、半数の人が会社には言っていないそうです。副業はもっと低いでしょう」。むしろ、副業していることを明かす方がメリットは大きいと指摘する。「周囲に相談すると意外に応援してくれる人は多く、副業の成功確率が上がりやすくなります。黙っているとその機会を失うことになるし、こそこそしていると会社や同僚からの信頼まで失いかねません」

一方、企業サイドの本音はどうか。経済産業省の研究会にも参加する西村氏は「副業解禁に実は法律が追いついていないんです。二重雇用の問題をどうするか、残業代はどっちが払うのかなど、まだ明確になっていません。こういったリスクを気にする企業が多いのが実情です」と語る。

しかも昨今の長時間労働是正の動きが、企業の副業解禁のネックになっている面もあるという。「副業はやりたい人がやればいいもので、強制するものではありません。自由意思でやめられます。一方、専業だからこそ会社に過度に依存して無理・無駄のある残業を強いられた結果、病気になったり過労死してしまったりした例が多数あるのは周知の事実です」と主張する。

「副業がうまくいったことで私は会社への依存度が精神的にも経済的にも下がりました。自分の仕事が世の中の役に立っているかという大きな目標になりますし、自分が何かしら世の中に対して通用するんだというマインドがあるおかげで会社に依存しなくなる。会社に対して、おかしいと思うことはおかしいと言えるようになります」

人は同じ環境にいると脳が飽きるため、定期的に環境を変えて働いてみるのが生産性向上につながるという。さらに社外の人脈から新しいアイデアが生まれることもある。「働き方改革でシェアオフィスや在宅勤務が普及し始めていますが、物理的な場所だけでなく、『第3の働く場所(サードプレイス)』を持つことがこれからのビジネスパーソンに求められると思います」。そう語る西村さんも、副業で社外の経営者などと出会えたことが、今の仕事につながっている。1つの会社や仕事に縛られない社会へ、自分も新しい働き方に挑戦していくつもりだ。

(安田亜紀代)

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