同情のつもりが嫌味に that's too badは言い方注意
デイビッド・セイン「間違えやすい英語」(30)bad
言葉の使い方を間違えて相手に誤解されてしまった。そんな体験はどなたにもあると思います。日本人向けの英語教育で豊富な経験を持つデイビッド・セインさんが、日本人が間違えやすい英語の使い方を解説します。今回は、badの使い方。「残念だったね」と言うときにも使いますが、使い方次第で相手は怒り出してしまいます。
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勉強するときはいつも完全を目指す。しかし会話をするときは通じることを目指す。これが英会話には必要なポイントです。相手を前にして英語を話すときは、完璧な英語でなくても構いません。間違いがあってもいいのです。フレンドリーに笑顔で話せば、不完全さは補われます。間違いを恐れず英語を話しましょう。そして勉強するときは完全を目指しましょう。
相手に「残念だったね」と言うとき、日本語でも同じだと思いますが、同じ字面でも心からの同情であったり、「だから言わんこっちゃない」という冷たい響きがあったり、実はなかなかむずかしい表現なのです。「今日はついていない」と嘆くナンシーにヒロシは決して口先だけではない同情の気持ちを表したつもりでしたが……。
それはこんな会話でした。
Hiroshi: What happened?
Nancy: My proposal got rejected.
Hiroshi: Well, that's too bad for you.
Nancy: What?! How can you be so cold!
ヒロシは期せずしてこのように言ったことになります。
ヒロシ:何かありましたか?
ナンシー:私の企画書が却下されたの。
ヒロシ:そりゃあ仕方ないでしょうね。
ナンシー:何ですって? なぜそんなひどいことを言えるの?
「それは残念ですね/残念でしたね」と言いたいときにまず思い浮かぶのが That's too bad. でしょう。that はこの場合であれば、前に言われたナンシーの言葉「私の企画書が却下された」ことを受けています。このヒロシの発言の問題点は2つ。まずはfor you です。文章によってはfor you をつけることでこちらの真意をより深めることができますが、残念なことに、この場合は「あなたにとってはね、でも他の人にとっては too bad な話じゃないからね」という含みがあります。どうやれば使い分けられるのか、それは数多くの英文に接していくほかはありません。また Well … の使い方も不適切です。場面によっては性急なイメージを避け、ひと呼吸おくためのフレーズですが、「残念ですね」と相手に同情する場面でのひと呼吸は逆に嫌味ととられる可能性もあり、気持ちを疑われることになります。
では、どう言えばよかったのでしょう?