英国が「省エネルック」の元祖? 夏のスーツ改革秘話「NIKKEI STYLE メンズファッションサロン」から(下)

2018/8/12
英国の「クールスタイル」運動をスライドで説明する中野氏(6月、東京都千代田区)
英国の「クールスタイル」運動をスライドで説明する中野氏(6月、東京都千代田区)

異常な暑さの今夏、スーツの「母国」である英国でも最高気温30度を超す日が相次いだ。例年なら夏が涼しい英国が育んだスーツは、何よりも暑さが弱点。服飾史家の中野香織氏は、暑さ克服のため「日本人も英国人も試行錯誤してきた」と話す。だが夏のスーツ改革の道は険しかった……。都内で開いた「NIKKEI STYLE メンズファッションサロン」での中野氏の講演から、クールスタイルの変遷をたどる。

前回掲載「ネイビー、襟つき 大人のカジュアルは体形を意識せよ」もお読みください。




■1930年代、英国に翻った反旗

立っているだけで額に汗がにじむ日本の盛夏。得意先回りなどでスーツが脱げない場面はまさに苦行だ。

省エネルックで、スーツの袖は切ってもネクタイは外さなかった大平元首相

2005年に「クールビズ」が始まる以前、暑くても上着やネクタイを省略する発想はなかった。1979年の第2次オイルショックを機に大平正芳元首相らが率先した「省エネルック」にそれはよく表れている。フルセットスーツを半袖にしたもので、「当時は大まじめだった」(中野氏)。少しでも涼しくしたいが、上着がないと落ち着かない時代だった。

欧米で長い時を経て長袖と長ズボンの「完成形」になったスーツ。涼しさを求めて伝統のスタイルに反旗を翻したのは日本人だけでない。今から約80年前「スーツを生んだ英国でも試行錯誤があった」(中野氏)。1930年代、「メンズ・ドレス・リフォーム・パーティー」と呼ぶ団体が半ズボンのスーツを提唱した。

だが、この運動は長続きしなかった。英国紳士に「顔と手以外の素肌を見せてはいけない」という意識が根強かったのだ。運動に参加した男性たちも「往生際の悪さと言うべきか、半ズボンにハイソックスを合わせ、肌の露出を抑えた」(中野氏)。

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