検索朝刊・夕刊LIVEMyニュース日経会社情報人事ウオッチ
NIKKEI Prime

朝夕刊や電子版ではお伝えしきれない情報をお届けします。今後も様々な切り口でサービスを開始予定です。

検索朝刊・夕刊LIVEMyニュース日経会社情報人事ウオッチ
NIKKEI Prime

朝夕刊や電子版ではお伝えしきれない情報をお届けします。今後も様々な切り口でサービスを開始予定です。

検索朝刊・夕刊LIVEMyニュース日経会社情報人事ウオッチ
NIKKEI Prime

朝夕刊や電子版ではお伝えしきれない情報をお届けします。今後も様々な切り口でサービスを開始予定です。

NIKKEI Primeについて

朝夕刊や電子版ではお伝えしきれない情報をお届けします。今後も様々な切り口でサービスを開始予定です。

/

進駐軍のサンドイッチで米国に憧れ 尾藤イサオさん

食の履歴書

詳しくはこちら

NIKKEI STYLE

両親を早くに亡くし、小学5年で曲芸師の道へ。初めて「食の豊かさ」に触れたのは進駐軍の基地だった。分厚いサンドイッチ。爽快なコーラ。やがて少年は海を渡るチャンスを得る。アメリカンフードは、ショービジネスに誘(いざな)うパスポートだった。

東京・御徒町で5人兄弟の末っ子として生まれた。父は百面相の名跡、3代目・松柳亭鶴枝。「ゆであがるタコを手拭い1本で演じる『タコのはっつあん』が得意。湯気が見えるようだったと聞いています」。その父は3歳の時に死去。母親は父の跡を継いだ長兄と舞台に立ち、たびたび地方巡業した。家族の面倒をみたのは一番上の姉だ。

麦飯代わりにおからの弁当

ほどなく終戦を迎え、大黒柱のいない家族は困窮する。「麦飯の弁当ならいいほう。うちは、おからでした」。給食が始まっても給食費が払えない。ただ、貧しいなかでも姉は工夫し、育ち盛りの弟たちの空腹を満たした。

ごちそうは大根の葉入りのすいとん。夜には枕元にかりんとうを置き、遊びに出る時は乾パンをひもで結び首にかけてくれた。氷砂糖と重曹を火鉢にかけ、カルメ焼きを膨らませてみせた。たとえ質素でも、家族のつながりを再確認できるしるし。それが少年期の食の記憶だ。

小4の時には母が他界。奉公に出るのを嫌がった次男の代わりに曲芸師、鏡味小鉄の内弟子に入った。皿やナイフの投げ物。積み上げた茶わんを棒に乗せてバランスをとるたて物。わずか3カ月で基本技を身につけ、小6の7月に初舞台を踏んだ。会場は東京駅のそば、進駐軍の将校が集うオフィサーズクラブ。スポットライトがまぶしく、投げた皿を次々落とした。拾い集めては懸命に投げる少年に観客は拍手喝采した。

アメリカの食の豊かさに衝撃

その日、西洋の軽食やコーラがふるまわれた。初めて目にする食の光景、力強い異国の味に心を奪われた。圧巻がサンドイッチ。「チーズやハムがはさまって、ドカーンと。見たこともないふかふかのパン。横にはおっきなフライドポテト。アメリカの豊かさの象徴でした」。夢中で食べた。師匠の妻に持ち帰ると、大いに喜ばれた。

一座は東京の府中や横田などの米軍キャンプを回った。胸躍らせて新宿からトラックやバスに乗る。基地の中ではドクターペッパーを飲み、観客からハーシーのチョコレートやリグレーのチューインガムがもらえた。食べ物で刷り込まれたアメリカの文化への憧れが日々募った。

ある日、そば屋のラジオから流れる音楽を耳にして、思わず身震いした。なんとすてきな歌声。「これは一体何だ?」。エルビス・プレスリーが歌う「ハートブレイク・ホテル」だった。たちまち熱烈なファンに。級友の家でレコードを貪り聴き、ほうきの「エアギター」で本人になりきった。日本にロカビリー・ブームが押し寄せ始めた、まさにその時だった。

以来、衣装は紋付きはかまでなく細いマンボズボン。プレスリーの「監獄ロック」をかけながら演じるロカビリー曲芸を考案し、一躍、人気者に。「学校に行くより、仕事がどれだけ楽しかったか」。奉公6年目、一座は1年間の米国巡業に招かれた。

皿回しのように、生地を回しながら上へ放るピザ作りの姿に驚き、ステーキやハンバーガーを堪能した。目にするもの全てがエンターテインメント。1日1ドルの出演料をためて、姉に送金する一方、映画やライブを見て回った。

やがて見たサミー・デイビス・ジュニアの舞台。歌ありタップあり拳銃アクションあり。「僕がやりたいのはこれだ」。進路が決まった。帰国して独立の許しを得たその日に「曲芸をやめます。プレスリーになりたい」と宣言し師匠を驚かせた。歌やタップを勉強して歌手デビュー。1965年「悲しき願い」が大ヒットし、66年のビートルズ日本公演の舞台にも上がった。

成功し家族で食べた出前の寿司

成功し、憧れの洋食を存分に楽しめる身分にはなった。ところが米国から帰国後は、すっかり和食派になってしまった。歌手として初めてもらった給料では寿司の出前を取り、家族で食べた。「毎月、こんな風に食べられたらいいなあ、と思った」

横文字の印象が強く、ファンからもナイフとフォークの食事を期待される。「好きなのは焼き鳥と日本酒というと、がっかりするみたい」。食の嗜好の根っこは別のところにある。貧しくとも絆を実感できた日々。「日本のプレスリー」の原点は「やっぱり、おからなんですよ」。

ぱりっ アユの一夜干し

東京・杉並の浜田山にある、いろは鮨(ずし)(電話03・3313・6770、要予約)に40年通う。「包丁の入れ方が絶妙なマグロや江戸前の煮はまぐり。握りも凝ったつまみもおいしい」。年中作る自家製干物はこの時期、アユの一夜干し(864円)が登場。肝を溶いた漬け汁に漬けて風干しし、ぱりっと焼き上げる。香ばしく上品な人気料理だ。

店主の内島昌義さんとはよく飲み、語る「兄弟みたいな仲」。昌義さんの妻、新子さんの手料理の大ファンでもあり「賄いに入り、カツ丼やおかずを食べさせてもらう」。内島さん夫妻は毎年、尾藤さんのライブに行くのが楽しみ。「『商売は堅実でいきなよ』と言ってくれたおかげで今がある。いつもダジャレで笑わせてくれるけど、実はまじめ。苦労しても決して泣き言を言わない人」(昌義さん)

最後の晩餐

ソース焼きそばとご飯。レンジでチンするものでもいいけど、僕はスーパーの冷凍焼きそば派。具なんてなくていい。味が付いているところにさらに、とんかつソースかウスターソースで味を濃くして白いご飯と食べる。炭水化物同士だけど、おいしいのよ。

(編集委員 松本和佳)

春割ですべての記事が読み放題
有料会員が2カ月無料

有料会員限定
キーワード登録であなたの
重要なニュースを
ハイライト
登録したキーワードに該当する記事が紙面ビューアー上で赤い線に囲まれて表示されている画面例
日経電子版 紙面ビューアー
詳しくはこちら

ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。

セレクション

トレンドウオッチ

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
春割で無料体験するログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
春割で無料体験するログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
春割で無料体験するログイン
図表を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した図表はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
春割で無料体験するログイン

権限不足のため、フォローできません

ニュースレターを登録すると続きが読めます(無料)

ご登録いただいたメールアドレス宛てにニュースレターの配信と日経電子版のキャンペーン情報などをお送りします(登録後の配信解除も可能です)。これらメール配信の目的に限りメールアドレスを利用します。日経IDなどその他のサービスに自動で登録されることはありません。

ご登録ありがとうございました。

入力いただいたメールアドレスにメールを送付しました。メールのリンクをクリックすると記事全文をお読みいただけます。

登録できませんでした。

エラーが発生し、登録できませんでした。

登録できませんでした。

ニュースレターの登録に失敗しました。ご覧頂いている記事は、対象外になっています。

登録済みです。

入力いただきましたメールアドレスは既に登録済みとなっております。ニュースレターの配信をお待ち下さい。

_

_

_