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アトピー新薬の効果高いが… 自己負担、年60万円も 未来を変えるアンメット・メディカル・ニーズ最前線(2)

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2018/9/7

そして使用上のポイントは「外用剤や保湿剤による十分な治療を行った上で、デュピルマブによる治療を加える」というもの。患者にとって治療上の手間は変わらないように思えるが、日本医科大学大学院医学研究科皮膚粘膜病態学分野大学院教授の佐伯秀久氏は「家庭で理想的な外用剤治療を行うには、それなりの負担が掛かります。デュピルマブが登場したことで、『塗る量を減らせる』『全身に塗っていたものが、皮疹があるところだけ塗る』『ステロイドのランクを落とせる』など外用剤を塗る負担も軽減されます」と評価する。

■根本的な治療になる可能性もある

投与方法は、通常、成人(現在は15歳以上)は初回に600mg、2回目以降は300mgを2週に1回皮下注射するというもの。注射部位は上腕部(二の腕)の外側、へそ周りを除いた腹部、太腿などだ。現段階では自己注射が認められていないので、治療を続けるためには、2週間に1度通院する必要がある。

ガイドラインによれば「治療を開始して完治に近い状態が6カ月以上続いたら休止することも検討する」とある。これについて佐伯氏は「デュピルマブを休止しても皮膚の状態がきれいに保たれることが多いことも分かってきました。私の患者でもEASIスコア(皮膚の状態を示す客観的なスケール/「アトピー性皮膚炎に10年ぶりの新薬 その実力は?」参照)がゼロにまでなった人で、長い期間休止しても再発しない例もありました」と話す。

こうした症状の安定化をもたらしているのはデュピルマブによるバリア機能の改善だ。アトピー性皮膚炎では、免疫細胞からの指令を伝達する「IL-4」や「IL-13」と呼ばれる物質(サイトカイン)によって、バリア機能に重要な役割を果たしているフィラグリンという物質の量が減る。デュピルマブの投与によりフィラグリン量が回復することで、バリア機能が上がり、湿疹も出にくくなるという「良い循環」が回り始めると考えられる。結果、注射をやめてもEASIスコアが良好な状態を維持するのだ。「患者によっては、根本的な治療になる可能性があります」(佐伯氏)という。

ただし「一方で、やめどきは難しいと指摘する声もある」と田中氏。一般的に、抗体医薬[注1]の特徴の一つとして、休止と再開を繰り返すと、薬剤の効果が減弱する可能性があるからだ。短期間で再悪化しないような状況で休止するのが望ましいということだろう。そのため、EASIスコアがどれぐらいまで下がったら中止を検討できるのかなど、これからの研究課題でもある。

■効果は高いが、自己負担額も高い。将来は自己注射も

中等度~重度のアトピー性皮膚炎患者にとって、期待の新薬となったデュピルマブだが、患者にとって治療のハードルとなるのは薬価だ。

[注1] 抗体医薬:病気の原因物質に対する「抗体」を、バイオ技術を用いて人工的に作り出し、体内に入れて病気の予防や治療を行う薬のこと(参考:日本製薬工業協会ホームページ)

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