ローカルベンチャーの可能性 実践の軌跡、仕掛人語る青山ブックセンター本店

ビジネス書棚のエンドにある平台に面陳列で展示する(青山ブックセンター本店)
ビジネス書棚のエンドにある平台に面陳列で展示する(青山ブックセンター本店)

ビジネス街の書店をめぐりながら、その時々のその街の売れ筋本をウオッチしていくシリーズ。今回は2~3カ月に一度訪問する準定点観測書店の青山ブックセンター本店だ。5月末以来の訪問になる。一部の本は入れ替わっているものの、新しい働き方や生き方を考える、若手ビジネスパーソン向けの書籍が相変わらず強く、ベストセラー上位に並んでいる。そんな中、書店員が注目したのは、地域でのベンチャービジネスを実践する仕掛人が自らの試行錯誤の軌跡を振り返った一冊だった。

岡山の山村の試みを活写

その本は牧大介『ローカルベンチャー』(木楽舎)。著者の牧氏は人口1500人足らずの山村、岡山県西粟倉村でローカルベンチャーを立ち上げ、木材の加工流通事業を皮切りに多彩な事業に取り組み、年間5億8千万円の売り上げに成長させた。この10年ほどの間に、同村では30社のローカルベンチャーが生まれ、年間売り上げの合計は15億円に。結果、村の人口も2017年、増加に転じたという。「地域にはビジネスの可能性があふれている」。そう実感した著者が好循環が生まれていく過程を自ら生き生きと振り返ったのが本書だ。

物語は08年から始まる。隣接市との合併をせず、自立した村として歩む決断をした西粟倉村は「百年の森林(もり)構想」を打ち出す。自力での管理をあきらめた森林所有者に代わって村がその森を管理し、50年後の子孫に持続可能な形で森林資源を残そうというプランだ。この構想を核にして陸続とローカルベンチャーが立ち上がっていく。間伐材で保育家具・遊具をつくる会社ができ、森林・林業支援の事業ファンドもでき、こうした動きに刺激されて牧氏も木材の流通・加工を担う会社を立ち上げる。さらに15年にはもうひとつの会社、エーゼロを興し、ウナギの養殖を始めるなど、林業、漁業、農業などと縦割りになっている自然資本に関わる事業を横に結びつけるとともに、ローカルベンチャーラボなど人づくりの事業も始めた。

人を巻き込む柔らかなVB経営

本から浮かび上がってくるのは、人が人を巻き込んでいくおもしろさだ。何もないように思える山村にもビジネスの種はあり、様々な人がつながることで村の経済が回るようになっていく。「ちゃんと稼ごう」と考え、いつも胸ポケットに「ロマンとそろばん」を抱きつつ、ビジネスモデルを設計しすぎない柔軟な経営姿勢を貫く。そんなやわらかさが牧氏が語るローカルベンチャーの魅力だろう。

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