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グルメクラブ
Food Selection

2018/7/29

Food Selection

ペペロンチーノにオリーブオイルは必須と思いきや……=PIXTA

実はいちばん驚いたのは、このピュア・オリーブオイルの味である。黄色い色にだまされてエクストラ・ヴァージン・オリーブオイルに近い味がするのだろうと思い込んでいた。実際にそれをなめてみると、オリーブオイルを味わっている感じがまったくない。むしろサラダ油にずっと近い味だ。

そこで本当にこの2つしか選択肢がないのか検証するため、サラダ油も比較対象に入れることにした。ごく一般的なサラダ油の一つである大手メーカーのヒマワリ油と、オレイン酸をオリーブオイルと同じくらい含む「ハイオレイック」のヒマワリ油だ。オレイン酸はオリーブオイルの7~8割を占める脂肪酸で、ヒマワリ油の主成分であるリノール酸に比べて加熱しても酸化しにくく、ベタつきも生じにくいという。

同じように180度まで加熱したが、やはり普通のヒマワリ油が一番ベタつき、味もまずい。古い油のような深いな味や臭いを感じる。ハイオレイックのヒマワリ油は、それよりは少しザラザラしているものの、不快な味は同様だ。予想通り、ピュア・オリーブオイルと味も香りもさして変わりない。

では、この4種のどれが一番おいしかったか。率直に言えば、どれもそのまま飲みたくはない。それ以前の問題として、この「加熱油のテイスティング」を何度か続けた後、私は本当に気分が悪くなってしまった。油だけなめる経験をしてはじめて気づいたことだが、ペペロンチーノを食べるとき、あるいはいため物や揚げ物を食べるとき、我々はこんなまずいものを体内に入れているのである。私は思わずその場で考え込んでしまった。

それでも、結論めいたものは、いくつかあった。まず、ハイオレイックのヒマワリ油と変わらないのだから、ピュア・オリーブオイルを使うことに意味は見いだせないということだ。ピュア・オリーブオイルの選択肢は消えた。

じゃあ、エクストラ・ヴァージン・オリーブオイルのほうがいいのかというと、こちらも苦くて辛くてベタついて、正直おいしくない。とはいえ、ピュア・オリーブオイル派の言い分である「エクストラ・ヴァージン・オリーブオイルを加熱すると苦みが増す」は間違いだと分かった。

生のエクストラ・ヴァージン・オリーブオイルを口に含むと、まずフルーツのような複雑な香りと甘みを感じ、トロトロとまろやかな口当たりがある。おいしい。ところが、一呼吸置いて苦みを感じる。さらに喉の奥からせき込むような辛味が襲ってくる。

生ではあんなにおいしかったエクストラ・ヴァージン・オリーブオイルが加熱でこんなにまずくなってしまうなんて。では、いったい何度まで油の温度が上がれば、あのすばらしい香りや味が失われてしまうのだろう。

悩んでばかりいても仕方ないので、いっそのこと40度の油でペペロンチーノを作ってしまうことにした。うん、おいしい……。しばし無言で食べた後、徐々に怒りに似た感情がわいてくるのを感じた。星一徹がちゃぶ台をひっくり返す勢いで、心の奥底から、こんな声がわきあがった。

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