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猛暑のもてなしに訪日客ビックリ 休憩所探し体調不良

2018/8/2 日本経済新聞 夕刊

逃げ水やかげろうが立つ道路を歩く外国人観光客(7月23日、大阪市中央区)

 各地で記録的な猛暑が続く中、訪日外国人が体調不良を訴えるケースが相次いでいる。日本より暑い国から来る人も多いが、時差ぼけなどで熱中症になるリスクは高まっており、日本気象協会などが対策に乗り出した。日本の市街地は海外に比べ休憩できる場所が少ないとの指摘もあり、関係者は「つらい思い出が残らないよう暑さ対策の重要性を伝えたい」としている。

 連日37~38度台の猛暑日となっている京都市。祇園祭で知られる八坂神社(東山区)の境内で7月25日、台湾からツアーで訪れたカク・シュウギさん(37)が座り込んだ。日本への旅行は3回目。「今まで経験した日本の夏とは全然違う。何度も休憩せざるを得ず、思うように観光できない」と汗をぬぐいながら話す。

 先週、日本に到着し、大阪、奈良、京都の順に回ってきたが、台湾の暑さに慣れているため、帽子などは持参しなかった。「無防備だった」と反省の弁を口にし、「今日は観光を少し早めに引き揚げて、帰りの空港に向かいたい」と話した。

 京都市消防局によると、2018年に熱中症で搬送された人は7月24日時点(速報値)で879人と、前年同日比の約2.4倍。外国人の搬送者数は把握していないとしているが、帝京大の三宅康史教授(救急医学)は「搬送されなくても、軽度の熱中症は相当数いるはずだ」と指摘する。

 世界遺産・清水寺(京都市東山区)では7月24日、20代の韓国人女性がめまいなどを訴え、寺の職員が119番して病院に救急搬送した。担当者は「暑さに慣れない海外客が体調不良を訴えるケースが増えている」と話す。

 外国人にとって、高温多湿な日本の夏は厳しい。日本気象協会が16年に在住外国人200人に実施した調査では、約7割が「日本で熱中症の症状を経験した」と回答。東南アジアなど熱帯地域の出身者でも約8割が「母国より湿度が高い」と感じていた。

 欧米などから来日した観光客の多くは時差ぼけで昼夜が逆転した生活になりやすい。早稲田大の永島計教授(体温・体液生理学)によると、体内時計が夜の状態では体温調整能力が落ちるので「汗を上手にかけず熱中症に陥りやすい」という。

 予防には水分補給や涼しい場所での休憩が欠かせないが、大阪府立大の橋爪紳也教授(観光学)は「欧米の都市と比べ、日本は木陰のある広場や公園が少ない」と指摘する。座って休憩するスペースが少ないとされ、カナダから観光で京都を訪れた30代の男性は「暑くて何度もカフェに入って休憩した」と明かす。

日本気象協会は、熱中症予防を英語で呼びかけるリーフレットを観光案内所で配布している

 熱中症になるのを防ごうと、日本気象協会は熱中症の応急処置の方法などを英語で記したリーフレットを作成し、5月から国内の観光案内所で配布を始めた。利用者の6割が外国人という京都市のレンタル自転車店「風音」では、貸し出し時に凍らせた水の入ったペットボトルを配っている。

 総務省消防庁は20年の東京五輪・パラリンピックで熱中症などによる外国人の救急搬送が増える事態を想定し、17年に音声翻訳アプリを開発した。15言語でやり取りでき、全国の約4割の消防本部が導入している。担当者は「症状を的確に把握し、重症化しないよう対応したい」としている。

[日本経済新聞夕刊2018年7月25日付]

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