アトピー性皮膚炎に10年ぶりの新薬 その実力は?未来を変えるアンメット・メディカル・ニーズ最前線(1)

日経Gooday

臨床試験でデュピルマブを併用した群では、皮膚の炎症やかゆみなどが大幅に改善しました。中等度から重度の患者は、炎症によるかゆみで皮膚をかくことが皮膚のバリア機能を低下させ、そのことで炎症が悪化するという「悪循環」が起きています。デュピルマブはこの悪循環を断ち切り、良い循環に変えたといえます。強いしこり(痒疹結節)や、かきむしってごわごわになった部分(苔癬化)のあった皮膚がつるつるになり、注射をやめたあとも、良い状態のまま維持できている人もいます。

EASI 75%改善が達成されると、写真のように皮膚の状態は大幅に改善する。(写真提供:地方独立行政法人大阪府立病院機構 大阪はびきの医療センター皮膚科 片岡葉子医師) ※写真は特定の治療による効果を示すものではなく、EASI-75の皮膚改善の所見例です

アトピー性皮膚炎に関わる部分をピンポイントにブロック

――抗体医薬であるデュピルマブと他の治療薬との違いはどこにありますか?

ステロイド(副腎皮質ホルモン)外用剤(商品名:ロコイド軟膏、リンデロンV軟膏、アンテベート軟膏ほか多数)、タクロリムス軟膏(商品名:プロトピック軟膏ほか)、シクロスポリン(商品名:ネオーラルほか)など、これまでアトピー性皮膚炎の治療に使われてきた薬剤は、体の免疫システムを広く抑制します。ステロイドやタクロリムスが、基本的に皮膚のみに作用させる外用薬で治療をするのはそのためです。一方、デュピルマブは、免疫システムのうちアトピー性皮膚炎の発症・増悪に関わる部分だけをピンポイントに抑制する医薬品です。このメカニズムにより、有効性と安全性に優れた全身療法を可能にしました。

――具体的には、免疫反応のどこを抑え込むのですか。

アトピー性皮膚炎では、免疫システムのうち、アレルギー性疾患に関係する「2型炎症反応」が過剰に働いています。この炎症反応で中心的な役割を果たしている免疫細胞がTh2細胞(2型ヘルパーT細胞)と呼ばれる細胞です。Th2細胞からはIL(インターロイキン)-4、IL-13という司令を伝達する物質(サイトカイン)が放出され、それによってアトピー性皮膚炎の発症に関わる皮膚バリアの機能低下、炎症の促進、かゆみ誘発などがもたらされることが分かっています。

デュピルマブは、IL-4、IL-13に対する抗体医薬です。これら二つのサイトカインの受容体分子に結合して、その後の司令伝達をピンポイントで阻害することで、炎症やかゆみを抑えます。さらに皮膚のバリア機能を正常化させ、アトピー性皮膚炎の「悪循環」から抜け出すのを助ける働きがあります。

――これまでも、最重症例・難治例への全身療法としてシクロスポリン(商品名:ネオーラルほか)の内服療法がありましたが。

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